新日本プロレスCEO・ハロルド・ジョージ・メイ氏の動向から目が離せない
2018年5月23日、ハロルド・ジョージ・メイ氏(以下、メイ社長)が株式会社新日本プロレスのCEOに就任した。
ニューヨーク大学大学院を修了後、ハイネケンジャパン、日本リーバを経て、日本コカ・コーラに副社長兼マーケティング本部長として入社。2014年以降はタカラトミーのCEOとして、経営の手腕を発揮し、V字回復に貢献した。
そんなキレキレのビジネスパーソンが、新日本に“入門”すると報じられたのは、2018年5月13日のことだった。
メイ社長の新日本プロレスCEO就任にあたり、煽り動画が作成され、6月9日にはセルリアン・ブルーのマット上で流暢な日本語を披露した。
DOMINION 6.9 in OSAKA-JO HALL 2018年6月9日 大阪・大阪城ホール ハロルド・ジョージ・メイ新社長 就任の挨拶
https://njpwworld.com/p/s_series_00485_1_sp
メイ社長について
社長の仕事とは会社を経営すること。経営するという仕事は現場仕事と全く異なるものである。
日頃、「社長は何をやっているのか?」と、現場社員は語ることは多いが、それはしょうがないことでもある。社長の仕事は経営。つまり、事業を営むことであり、その運営のための仕組みを作ることだ。
当然、メイ社長の仕事は表に出ないものがメインとなる(失敬)。
だが、メイ社長は新日本プロレスという会社の社長が“ガイジン”になったことを深く受け止めつつ、どうすればこの会社が既存のファンや新規ファン、これからのファンに愛されるのかについて、表立った行動を取っている印象がある。
大きくは2つある。
まずは、【1】ブログ。次に【2】会場に足を運び、ファンと触れ合っている点だ。
【1】メイ社長のブログについて
メイ社長はCEO就任後からブログを執筆している。とても心をこめて書いている。
https://www.njpw.co.jp/freediaryprofile/harold-george-meij
就任のご挨拶から時事ネタ。自分がもしもプロレスラーならばどのユニットに所属してする可能性があったのか?など、真摯的かつユーモアに富んだ彼の言葉で情報を発信している。
ここで重要なのが、SNSではなく敢えてブログという体裁を取っていることだと思う。
この点は後述する。
【2】メイ社長とファンの触れ合い
僕はこの短期間でメイ社長と2回もお会いしている。1つは福岡大会、次に日本武道館だ。
日本武道館は新日本プロレスがオフィスを構える目黒からも近い。重要な試合でもあるので、CEOが足を運ぶのは分かる。ただし、福岡大会にもメイ社長は足を運んでいた。
これはそう簡単なことではない。CEOというポジションは、意思決定と人と会う回数が半端じゃないのだ。
そういった状況下でも、日本各地に足を運び、ファンと交流するメイ社長はとても穏やかで、紳士的、知性を感じさせつつもユーモアを忘れないナイスミドルだった。
2度目にお会いした日本武道館で「福岡でもお会いしたんです!」と、鼻息荒くお伝えすれば「また、お会いできて嬉しい」と返ってきた。
数えきれない人と顔を合わせ写真を撮っている。僕のことを覚えていないのは当たり前だ。
だが、覚えていないことを謝罪するのではなく、今の気持ちだけをシンプルに伝える姿勢に思わず、心が震えた。
あぁ、こういった経営者の元で学ぶチャンスがあればいいなと思うほどに。
彼はこうやって地方のファンと触れ合う時間を作ることで、今の新日本プロレスの立ち位置やリアルなファン層。つまり、現場を理解しようとしているのだと思う。
メイ社長にとってプロレス団体の経営はBtoCとは言え、異業種にあたる。優秀な経営者は業界に関係なく手腕を発揮するものだ。
そのために必要な知見として、現場を知る(ユーザーの顔を見る)こと。そして、“ガイジン”社長である自分が従来のファンから違和感を感じさせない存在になるように動いているように感じる。
メイ社長はクレバーだ。だからこそ、物事について大切なことを理解している。
それはある事実ことからも感じ取ることができる。
メイ社長が自ら会場に足を運んでいること、撮影会が行われていることは新日本プロレスのオフィシャルとして発信していないのだ。
勿論、会場でもメイ社長と写真を撮るという企画自体は存在していない。
あくまでもメイ社長がそこにいて、自然発生的にファンが集まり、写真を依頼している。アナウンスは勿論なしだ。
メイ社長 が各会場に足を運んでいることを発信しているのはファンたち。実際に顔を合わせコミュニケーションを取ったファンだけが、彼と対面した喜びをSNSなどで発信している。
メイ社長はマーケティングを得意としている。だからこそ、自分はCEOという役職ではあるが、主役ではない。このことを深く自覚されているのだと思う。
だからアナウンスもしない。だが、自分が会場に足を運んだ場合、ファンはコミュニーケーションを取りたいと思うかもしれない。そこで、自分と関わってくれた人たちのために自身が公認したことを現すステッカーを作った。
ここで書いていいのか不明だか、このステッカーは第2弾を検討しているらしい。エンターテインメント精神が滾っているCEOである。
メイ社長は自分が前に出るメリットがどこにあるのか?ファンが楽しみにしているのは何なのか。この点をとても意識して行動しているように思える。元々プロレスファンなだけに、ツボを心得ている印象がある。
だからこそ、ここで賛否両論が巻き起こったのだ。
“あっち”のような携わり方はしない
2018年のG1CLIMAXはBULLET CLUB OGによる介入が目立つ大会となった。実際、実力者であるバットラック・ファレ選手やタマ・トンガが勝ち星から逆に見放されてしまったのも介入による反則前負けという点が大きい。
バックステージ騒然!
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) August 11, 2018
またもや暴走のタマ、ファレ、タンガをメイ社長、若手レスラー、新日本スタッフらが会場から強制排除!
会場入口のバンに押し込んで、武道館から追い出す!
☆新日本プロレスのスマホサイトで独占詳報中!https://t.co/LkUwyXLGog#njpw #g128 pic.twitter.com/kHd8mfhicN
「 “あっち”の団体みたいになっちゃうんじゃないの?」
僕も少しそんな気になった。ただ、変わることはマイナスではないという見方もある。そんな中、メイ社長は先手を打ってきた。
2018年8月14日に公開されたブログは非常に興味深いものになっていたのだ。
ファンの疑問に真っ向から否定。自分は“あっち”の団体のようなCEOではなく、あくまでも経営者という枠から出ない声明を出した。
ファンの心を掴むのは選手。そのためのサポートに徹底する。変な煙が立てばすぐに消す。
そこには新日本プロレスを愛する一人のプロレスファンの姿があった。
そう、メイ社長は半端じゃなく仕事(経営)ができるプロレスファンなのだ。
未来への期待と一緒に夢を追う仲間として
メイ社長の就任により、友人に新日本プロレスを薦める際の話題が一つ増えた。「こんな凄腕のビジネスマンがCEOに就いた。これから数年後にはとんでもないことになっているよ?完全なブームが巻き起こるよ?」という具合に。
ストロング・スタイルの進化。団体としての進化に僕は期待し続けたい。
メイ社長の動向から目が離せない。
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