IWGPの権威とストロングスタイルについて

昨今の新日本プロレスで問われ続けるIWGPの権威という言葉。

IWGP。正式名称は『International Wrestling Grand Prix』。

新日本プロレスの歴史はIWGPの歴史。創立46周年を迎え、歴史と伝統のあるIWGPが今、揺れている。

IWGPが持つ権威とは何か。これからどのように変化していくのか。

歴史と伝統。そして、未来。これからのIWGPについて考えてみたい。

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IWGP構想

プロレス界における“最強“の男を決める。この考えの下、アントニオ猪木氏が提唱したのがIWGPである。

各地域や団体をまたぐ。日本だけでなく世界各国を巻き込んだ構想は余りにも壮大だった。だが、賛同する者の声は少なく、結果的には1993年5月の蔵前国技館にて第一回IWGPリーグ戦が開催された。

ハルク・ホーガンのアックスボンバーによるアントニオ猪木のベロを出したKOシーンが有名な試合である。

現在のIWGP

  • IWGPヘビー級王座
  • IWGPインターコンチネンタル王座
  • IWGP USヘビー級王座
  • IWGPタッグ王座
  • IWGPジュニアヘビー級王座
  • IWGPジュニアタッグ王座

上記6つが現在、IWGPの冠が付いたベルトである。

最初の問題

グローバルを意識し誕生したIWGPインターコンチネンタルベルト。これに続き、IWGP USヘビー級ベルトが2017年に新設された。

これに噛み付いたのが当時のIWGPインターコンチネンタル王者・『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』の内藤哲也選手だ。

内藤哲也選手は自身が保有するIWGPインターコンチネンタルベルトの価値について、2つの問題定義を行った。

次の挑戦者に決まったのは棚橋弘至選手。だが、シリーズを欠場するなど、挑戦者として相応しい実績があったかと聞かれれば疑問視する声もあった。

そして、新設されたIWGP USヘビー級ベルトについて。似た理念のベルトが誕生するのであれば、このベルトはもう必要ないのだはないか?と。

そして、内藤哲也選手は今でも言い伝えられるベルト破壊行為を行動に移した。

余りにも目に余るこの行為は、絶対的支持を受けていた内藤哲也選手に否定的な意見を集めることにつながった。一方で、内藤哲也が正しいという意見も数多く挙がった。

賛否両論が巻き起こる中、新設されるIWGP USヘビー級ベルトよりも、内藤哲也選手に注目が集まった事態となった。

IWGPの権威

そして、2018年。改めてIWGPの権威について様々な声が飛び交っている。

まずはこの動画を見て欲しい。タイガーマスク選手がIWGPジュニアタッグ王座に敗れ去った後、その胸中を語った。

www.youtube.com

今のIWGPのヘビーもそうだし、タイトルマッチって、こんなに反則していいのこれ!

 

ヘビーで机使ってみたり。やりたい放題、外人が。

よくこれで会社がOKしてるよ、タイトルマッチですって。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=_5de9LAuVcI

100を超えるコメントが集まる中、その多くがタイガーマスク選手を支持している。

 現在、IWGPと冠が付くシングルベルトは全て“ガイジン”レスラーが保有している。そして、ジュニアのタッグも反則技を駆使する金丸義信選手とエル・デスペラード選手が保持している。

凶器や反則攻撃が横行するタイトルマッチに苦言を呈するタイガーマスク選手の主張は胸を打つものがある。僕自身この動画を見て、胸を打たれた。

 

波紋を呼んだ3WAYマッチ

そして、棚橋弘至選手もケニー・オメガ選手、飯伏幸太選手、Cody選手の3人が行ったIWGPヘビー級王座3WAYマッチについて苦言を呈した。

www.youtube.com

記者会見の模様はこちらから。

WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム 2018年10月9日 記者会見 

様々な声が飛び交う中、僕が考えるIWGPの権威について踏み込んでいきたい。

ストロングスタイルという概念

かって棚橋弘至選手が中邑真輔選手に対し、呪いだと語った「ストロング・スタイル」。これがIWGPの権威とニアリーイコールだと僕は思っている。

前述したとおり、IWGPはプロレス界における“最強“の男を決めるために生まれたベルト群である。

“最強”という現代のプロレスとは離れたところにある概念が、IWGPには染みについている。

では、ストロングスタイルとは何なのか。「闘魂プロレス」とも別称される概念は、アントニオ猪木氏が提唱したものである。

アントニオ猪木は自著である「アントニオ猪木自伝」の中でカール・ゴッチ流のレスリング技術の攻防を見せるスタイルと力道山流のケンカに近いプロレスの凄みを見せるスタイルを融合させたものがアントニオ猪木流の「ストロングスタイル」であると述べている。

出典:ストロングスタイル - Wikipedia

ストロングスタイルは総合格闘技が世の中で浸透する以前に生まれた。言ってしまえば、総合格闘技の元祖とも言えるような思想でもある。事実、総合格闘技の生みの親・佐山聡氏(初代・タイガーマスク)は新日本プロレスから飛び出した選手だ。

リング上でにじみ出る殺気。ほとばしる緊張感。その空気がストロングスタイルであり、IWGPの権威だと僕は考察する。

キング・オブ・ストロングスタイル

では、神の子からキング・オブ・ストロングスタイルへと進化を遂げた中邑真輔選手はどうだったのか。総合格闘技の世界でも勝利を掴み取り、プロレスラーは“強い”という威厳を守り抜いた中邑真輔選手。彼はストロングスタイルについてこう解釈している。

ボクシングやレスリングのプロも本物だと思う技術に、猪木の提唱する怒りや生の感情を落とし込むスタイルが加わったものだと説明している

出典:ストロングスタイル - Wikipedia 

中邑真輔選手は、ストロングスタイル(IWGPの権威)を倒すことで、団体を変えようとした。

棚橋弘至選手は、ストロングスタイルは幻だと断言し、新日本プロレスを変えようとした。

2011年の棚橋弘至と中邑真輔

2011年の棚橋弘至と中邑真輔

 

7年前に巻き起こったストロングスタイル論争。それが姿形を変え、2018年に蘇ってきたのが、現在問わているIWGPの権威問題なのかもしれない。

棚橋弘至選手の主張

棚橋弘至選手は前述した記者会見でこう語った。「変わること、全てが正しい方向に向かっているわけではない」と。

新日本プロレスにチャラさを持ち込んだと自負し、新日本プロレスのファン層を一変させ、新日本プロレスに革命を起こした逸材としては、後ろ向きにも聞こえるコメントである。

だが、この言葉に続き「変わってはいけない本質がある」とも語った。

表面は変化しても普遍的な本質が新日本プロレス、IWGPには存在する。これが、棚橋弘至選手が主張するIWGPの権威なのだろう。

棚橋弘至選手はストロングスタイルを否定した。道場からもアントニオ猪木氏のパネルを外した。だが、ストロングスタイルと近いところにある、IWGPの権威を否定したわけではなかったのだ。

表面的にもっとお客様に分かりやすいプロレスを。ただし、真剣勝負の空気が漂う世界観はできるだけそのままにする。これが棚橋弘至選手のストロングスタイルなのかもしれない。

かつて自身が否定したストロングスタイルこそが、IWGPの権威だったということは残酷な事実だろう。

ただ、あの時とは状況が違う。ストロングスタイルの本質を守るのが今回、棚橋弘至選手に課せられた命題となった。

だからこそ、ベビー・フェイスとヒールという構造にもこだわるし、3WAYであり、相手を気遣うようなプロレスには怒りを隠せなかったのだ。 

njpwfun.hatenablog.com

新日本プロレスの未来

現在、新日本プロレスは2018年に就任したハロルド・ジョージ・メイ社長のもと、海外戦略を推進している。YouTubeのグローバルチャンネルには数多くの動画が投稿され、外国人選手の活躍も目立つようになった。

njpwfun.hatenablog.com

団体としての利益や今後という観点で捉えると、海外戦略は全力を注ぐべきことだ。ただし、あくまでも新日本プロレスは新日本プロレスという見方もある。

これは企業が発展する上で直面する壁にも似ている。既存ユーザーと新規ユーザーが求めるサービスへの違い。同じものを見ているはずなのに、受け止め方が全く異なる状況を企業としてどう受け止め、改善していくのかという見方だ。

新日本プロレスで言えば、海外向けにシフトし過ぎた新日本プロレスは新日本プロレスなのかという点である。日本人から支持されない「NEW JAPAN PRO-WRESTLING」に意味はあるのだろうか。

アントニオ猪木氏に憧れた棚橋弘至選手。佐山聡選手が創設したスーパータイガージム出身のタイガーマスク選手。この2人がIWGPの権威について鐘を鳴らしているのは、決して偶然の出来事ではないようにも思う。

会社を長く支えてきた人材の苦言と言ってしまえば簡単だが、先が見えないビジネスの世界において経験から出る言葉も重要なのである。

 

IWGPの未来

ケニー・オメガ選手と棚橋弘至選手の2019年イッテンヨンはイデオロギー闘争だと言われている。だが、僕はそれ以上に棚橋弘至選手がケニー・オメガ選手にストロングスタイルを伝授する時間になるのではないかと考えている。ただし、これは本来柴田勝頼選手の役目だったのではないだろうか。

ケニー・オメガ選手と飯伏幸太選手。新日本プロレスの新時代を担う2人に、試合を通じて、正統なストロングスタイルをIWGPの権威を教え込む。そのためにG1クライマックス優勝決定戦で、柴田勝頼選手は棚橋弘至選手のセコンドに付いたのかもしれない。そして、それは2019のイッテンヨンでも再現される可能性がある。

表面は変わってもいい。ただ、先輩たちが守り抜いてきた歴史と伝統だけは、崩すことは許されない。

これは2人が生え抜きではなく、外部から新日本プロレスに来たという事実がそうせることだ。ヤングライオンとして教えられなかったことを今、この場で伝える。

大事なのは勝つことじゃない。

ストロングスタイル、IWGPの権威を2人に伝えることが、棚橋弘至選手の胸中にはあるはずだ。

新日本プロレスとNJPWは相入れるものなのか。それとも、混ざりきれないものなのか。

IWGPの権威という概念を懸けた勝負まで2ヶ月を切った。

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