『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』をスタートアップ企業に例えてみる【#3 2人目の変化と成長】
2015年、内藤哲也選手は棚橋弘至選手との東京ドームメインイベント権利書マッチを控える中でこう宣言した。
「俺は両国にパレハ(相棒)を連れて行きますよ」。
“パレハ”というパワーワードもさることながら、“制御不能”となった内藤哲也選手は一体誰を連れて来るのか?という謎かけは、新日本プロレスファンに新しい景色を見せた。
あれから3年、『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』は大きく成長した。
その中で最も変化したのが今回の主役である EVIL選手だ。
プレミアムな男から闇の王へ。怪奇派レスラーは受けないというイメージを変え、女性ファンすら味方につけた。
連載の第3回、【#3 2人目の変化と成長】では彼の変化を追いたい。
『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』で唯一「成長、挫折、復活」という王道の道を歩む“闇の王”は、今新しい道へと歩み始めている。
クリス・ジェリコ選手との一戦そこで見せつけるのが、EVILの変化と成長だ。
スタートアップの採用市場
まずは、 EVIL選手が当時の『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』に加入するメリットとリデメリットについて考えたい。
これを我々に置き換えると就職になる。
日本国内もスタートアップ市場は盛り上がりつつあるが、有名ベンチャーではなく出来立てホヤホヤのスタートアップに身を置くことは、ハイリスク、ハイリターンだという見方もある。
ヤングライオン時代によく時間を共にした棚橋弘至選手がいる新日本本隊や中邑真輔選手、オカダ・カズチカ選手、矢野通選手などのスター選手が集まるCHAOSを選び新しい一歩を踏み出すのが定石ではないだろうか。
スタートアップ企業が1人目の社員
当時の内藤哲也選手は一匹オオカミ状態。そのキャラクターはまだ多くのファンの心を掴んでいない状況である。
内藤哲也選手から届いた1人目のパレハとしてのオファーは嬉しい。ただ、凱旋帰国は一度しかないチャンスでもある。
先行き見えないスタートアップか、それとも安定的に活躍できる大手企業や大手ベンチャーか。
渡辺高章選手の決断は、スタートアップだった。更にはプレミアムな男から怪奇派の“闇の王”へと変貌も遂げた。
EVIL選手が1番心に残っている言葉は「内藤哲也のパレハ」だという。
声が掛かった時の感動と、この人を超えなくてはならないというプロレスラーとしての使命感。
2つの感情からこの言葉を胸を胸に刻みつけているのではないだろうか。
闇の王としての成長
前回の【#2】で『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』にとって EVIL選手は必要不可欠な存在だと書いた。
その理由をここで説明したい。
EVIL選手はユニット内で唯一、失敗や挫折という“変化”をお客様に見せることができ、そこから成長のストーリーを描くことができる存在だと僕は思っている。
内藤哲也選手にとって『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』はサクセスストーリーを描く場所だ。
次世代のエースと期待されたベビー・フェイスがその不甲斐なさからブーイングを浴びた。怪我による苦難、試合に勝てない挫折を何度も経験した。
『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』は彼にとって再起の場所であり、更なる挫折を経験する場ではない。
そのため、リスクを取って一歩踏み出すことはできても、創設者として大きな失敗はできないのだ。
BUSHI選手、SANADA選手は全日本プロレス出身。外部出身者が新日本プロレスで成り上がるために『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』を選んだという見方ができる。SANADA選手についは未だ不明だが。
若くして完成していた男
髙橋ヒロム選手は凱旋帰国後、一発でIWGPジュニアベビー級チャンピオンになった。
帰国と同時に新日本Jr.の象徴となった彼だけに早期の挫折は必要ない。そして、挫折や苦難というよりも、どんな状況も前向きに楽しむのが髙橋ヒロム選手のスタイルだと思う。
負傷欠場中でも400以上の質問に答えるし、スマホ日記の更新も怠らない。彼に挫折は似合わない。常にもっと、もっと、もっと楽しいことを探している人なのだから。
闇の王という名に対して、地道な道を歩んだ
では、 EVIL選手はどうだろう。新日本プロレスの生え抜きとして入門し、海外遠征を経て凱旋帰国。
オカダ・カズチカ選手のように戻ってきて早々にIWGPヘビー級タイトルマッチが組まれた訳でもなく、髙橋ヒロム選手のようにイッテンヨンが正式な凱旋試合だったわけでもない。
はたまたロッポンギ3KのようにXとして発表され、凱旋試合でIWGPJr.ベビータッグ選手権を戦ったわけでもない。
『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』旋風の影に隠れているが、 EVIL選手は地道に階段を駆け上がる道を歩んできたのだ。
これまでの挑戦
EVIL選手の実績をまとめてみる。
- WORLD TAG LEAGUE2015 準優勝
- NEVER無差別級 第13代王者 2016年
- NEVER無差別級6人タッグ王者 3度戴冠
- G1クライマックスでオカダ・カズチカ選手を破る 2017年
- IWGPヘビー級王座 挑戦
- WORLD TAG LEAGUE2017 優勝
- IWGP 王座タッグベルト戴冠 2018年
- 後藤洋央紀選手と除霊マッチを行う
シングルベルトの戴冠はNEVER無差別級の一度のみ。タッグ戦線で頭角を現したように思えるが、シングル戦線では未だIWGPの冠が付くベルトを戴冠できずにいる。
帰国から3年と考えれば好成績とも言えるが、 EVIL選手の前に凱旋帰国したのはオカダ・カズチカ選手だということを忘れてはならない。
EVIL選手の変化
凱旋帰国後、しばらくの間EVIL選手が多くを語ることはなかった。だが、オカダ・カズチカ選手から必殺技の『EVIL』でピンフォールを奪ったあの日から、饒舌に変わりパフォーマンスにも凄みやパターンが見られるようになった。
以前公開された『新日本プロレスワールド』のインタビュー動画を覚えているだろうか。
INTERVIEW WITH LOS INGOBERNABLES DE JAPON #21
髭を触って短い単語だけを口にする。饒舌な今の姿とは全く異なる印象を受ける。人は短期間で変われるし、自身の魅力の幅を広げることができるということを EVIL選手は証明した。
1年振りの両国で待っていたもの
本稿の公開時期については非常に迷った。両国のザック・セイバーJr.選手との一戦前に公開すべきか、それとも試合後にすべきか。
僕は待つ決断をした。ザック・セイバーJr.選手との結果を待って記事を公開しよう、と。
結果的はご存知の通り、EVIL選手にとって過去最大の大事件が勃発した。
Y2Jの悲劇
2017年10月の両国大会でEVIL選手はオカダ・カズチカ選手の保有するIWGPヘビー級王座に挑戦した1年後、2度も直接フォールを取られたザック・セイバーJr.選手とのシングルマッチが組まれた。
だが、その試合に待ち受けていたのは、突如現れたクリス・ジェリコ選手への襲撃だった。
@IAmJericho ATTACKS @151012EVIL‼︎#NJPWWorld Watch now▶︎https://t.co/Tj7UBJ4PjP#njkopw #njpw #EvilDead pic.twitter.com/WDVnoQphaF
— njpwworld (@njpwworld) October 8, 2018
オリジナル インタビュー Chris Jericho Special Interview
この動画で語られていたように、クリス・ジェリコ選手はEVIL選手を意識していた。おそらく面白い素材だと直感が働いたのだろう。
世界を代表するレジェンドレスラーがIWGPインターコンチネンタルベルトの初防戦に選んだのは、完全ブレイクの瞬間を控える闇の王だった。
Xデーは11月
2018年11月3日に開催される『九州三国志 presents POWER STRUGGLE ~SUPER Jr. TAG LEAGUE 2018~』。試合順こそ公開されていないが、メインイベントを飾る可能性が高いと僕は睨んでいる。
クリス・ジェリコ選手が新日本プロレスマットに映像を残したのが、2017年11月。それから1年が経ち、EVIL選手とタイトルマッチを行うことを誰が想像しただろう。
クリス・ジェリコ選手と対峙するEVIL選手に訪れるのは瞬間的な僥倖なのか。それとも闇の王の新時代が幕を開けるのだろうか。
闇の王は深い闇に落ちれば落ちるほど、新たなる魅力を持って復活してきた。彼の一歩踏み出す勇気。変化と成長を続けてきたEVIL選手が2018年シングルマッチの掉尾を飾る日は近い。
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