『ゴールデン☆ラヴァーズ』と才能が弾けたウィル・オスプレイ

新日本プロレスの2018年を締めくくりとなった2018年12月15日の後楽園ホール大会。

そのメインイベントは『ゴールデン☆ラヴァーズ』ケニー・オメガ選手&飯伏幸太選手VS棚橋弘至選手&ウィル・オスプレイ選手のW前哨戦だ。

『IWGPヘビー級ベルト』と『NEVER無差別級ベルト』。この2本がここまで急接近を果たしたのは、内藤哲也選手がNEVERを巻きオカダ・カズチカ選手に挑戦した2014年のイッテンヨン『レッスルキングダム』以来なのかもしれない。

ウィル・オスプレイ選手が躍動した同試合。元々ケニーのオメガ選手と飯伏幸太選手がジュニアだったこともあり、3人が同じ土俵に立った瞬間である。

2018年間を総決算として、多くの語りどころが生まれた今回の興行。まず一本目として、メインイベントについて語りたい。

テーマは『ゴールデン☆ラヴァーズ』が破ったジンクスは、イッテヨンへどう影響を及ぼすか、だ。

運命のイッテヨンまで3週間を切った今、じっくりと考えていきたい。

 

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新日本プロレスのジンクス

新日本プロレスにはいくつかのジンクスがある。昨年大きく話題になったのが、『G1クライマックス』覇者が保有する東京ドーム挑戦権利書が動いたことがないこと。そして、もう一つが東京ドームで誰一人チャンピオンに勝利したことがないという事実だ。

新日本プロレスの年内最終戦を見てみてもここ4年はある法則があった。それは、挑戦者が勝利を掴んでいるということである。

これは2015年から2017年までの3年間も続いてる。そして、2014年の結果を見ても年内最終戦を勝利したのはチャンピオンチームだったが、イッテンヨンでは2本のベルトが動く結果となった。

また、2013年は時間切れ引き分け。2012年は直接対決が行われていない。ブシロード新体制以降の実績だけ見れば、最終戦に勝利したチームは験が悪いという見方もあるのだ。

 

空王の覚悟

2016年5月27日に開催された『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア13』。世界屈指のハイ・フライヤーであるリコシェ選手VSウィル・オスプレイ選手が対峙した時、凄まじい興奮と賛否両論が生まれる好勝負が生まれた。

試合を見ればとんでもないことは分かる。ただ、往年の名レスラーであるビックバンベイダー氏はこうツイートした「これは体操やダンスの動きで、レスリングとしては悲しく思う」と。

両選手はレジェンドからの指摘に大きく揺れたと思う。プロレスは大きく進化している渦中の中で、何を魅せるのが正しいのか、と。

あれから2年半。ウィル・オスプレイ選手が出した答えは、“空王”として儚くも美しい輝きを放つことだったように思う。

 

ドリームマッチ

2018年ラスト後楽園ホールのメインイベントはウィル・オスプレイ選手コースから始まった。解説は野上慎平さん。僕にとっても非常に嬉しい年内ラスト興行である。

ウィル・オスプレイ選手と飯伏幸太選手の戦いは前述したリコシェ選手との一戦を彷彿とさせる。

ここに試合巧者の棚橋弘至選手と飯伏幸太選手と同等の身体能力を持つケニー・オメガ選手が揃った。2018年の東京スポーツのベストバウト選考期間から外れていることが悔しいほどの試合が生まれるのだ。

飯伏幸太という特異点

飯伏幸太選手のプロレスを見て、ケニー・オメガ選手はカナダから日本を目指し、ウィル・オスプレイ選手はアメリカでの試合後にずっと再試合を心待ちにしていたという。

キーマンは飯伏幸太選手。では、飯伏幸太選手の何がそんなに凄いのだろうか。

僕はキックボクシングが下地にあるハイ・フライヤーとしてのスタイルを確立している点にある。

先日、アントニオ猪木さんは「プロレスラーの強さ」について説いた。

強さとは何なのか。この永遠の説いについての答えは僕の中にはない。

ただ、中邑真輔選手は「プロレスが一番『すごい』」と言い放った。

『すごさ』とは強さと“何か”がかけ合わさった先にあるのものだと思う。

飯伏幸太選手は強さと華やかさと独特なキャラクターが入り混じったプロレス界でも特異点となり得る存在である。

だからこそ、棚橋弘至選手はスカウト行為を続け、中邑真輔選手はジョーカーとして認め、内藤哲也選手は目の上のたんこぶだと思い続けきた。

先ほど書いた通り、ケニー・オメガ選手、ウィル・オスプレイ選手もそう。

ジェイ・ホワイト選手が2018年の新日本プロレスを暗躍したフィクサーであるのならば、飯伏幸太選手はリングの上で魅せる試合だけで、多くの人物を魅了し続けてきた存在である。

まさに『ゴールデン☆スター』だ。

 

ドリームマッチへの前哨戦

試合中盤以降、ウィル・オスプレイ選手の才能が弾けた。

雪崩式でケニー・オメガ選手と飯伏幸太選手へ投げつける。

フルネルソンを着地。Vトリガーにスパニッシュフライでカウンター。

雪崩式フランケンシュタイナーを前方宙返りで着地。そして、ゴールデン☆シャワーに対して、まとめてのスパニッシュフライ。

ミラノコレクションA.Tさんの独特な笑いが止まらない。

そして、ここからウィル・オスプレイ選手と飯伏幸太選手はキックを見舞い合う展開となった。

これが、2016年になかったもののように思う。ウィル・オスプレイ選手と飯伏幸太選手が魅せたのは、現代と古き良き時代のハイブリッドプロレスだ。

「どんな脚本でも書けない闘いがここにはあります!」

「CGじゃない!」

ハイフライフローとシューティングスタープレスの共演。新日本本隊のエースとCHAOSの空王が混じり合った景色はこんなにも美しい。

ラストはPKこころからゴールデン☆トリガーで『ゴールデン☆ラヴァーズ』で試合の幕は閉じた。

2018年の札幌から始まった恋人たちの関係が2018年ラストマッチを締めくくった。

雪の中の恋人たち

昨年は“制御不能”な男たちへ降り注いた雪が、2018年は再会を果たした恋人たちへ降り注いだ。

ケニー・オメガ選手はマイクでこう語った。

最近、気づいてるよ。私、思ってたほど、人気じゃなかったんですね(※場内爆笑&大『ケニー』コール)。だからさ、俺の考え方は正しいかと思ったんですけど、ま、もちろんタナの考え方も正しくはないと思ってるんですけど、もしかしたらさ、2人とも間違っているかもしれない。ホントの一番いいスタイルは、今日みたいな試合(※大拍手)、すべてを懸けて、全力で、魂で、試合をやる…のが! 正しいんじゃないですかね?(※大拍手) だけどさ、棚橋さん。ハハハ…。お前のこと、まだ別に好きじゃないです。

出典:新日本プロレス

全てを懸けて、魂で試合をする。この姿に僕たちは心を奪われるのだ。だからこそ、プロレスが大好きなのだ。

だが、一点だけ気になることがある。

この言葉は本来であれば棚橋弘至選手にイッテンヨン『レッスルキングダム13』で勝利を掴んだ後に発するべき言葉だ。

ある意味でケニー・オメガ選手はこの抗争に対するアンサーを出してしまった。

その理由は東京ドームで「悪いことしちゃうかもね」という言葉にあるのかもしれない。

2018年の新日本プロレスはケニー・オメガ選手の美声で幕を閉じた。2019年の幕開けは『NEVER』ではじまり『IWGPヘビー級』で締まる。

2018年、今振り返ると『ゴールデン☆ラヴァーズ』の1年になったのかもしれない。

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