ケニー・オメガがAEWの副社長就任!新日本プロレス再上陸で大切なこと

日本時間2019年2月8日、ケニー・オメガ選手がAEWの「AEW's Double or Nothing Ticket Announcement Party」に姿を現した。

新日本プロレスの祭典イッテヨン『レッスルキングダム13』で一番最後に入場を果たして以降、久しぶりの表舞台ということで世界中のファンが彼に熱視線を送った。

そこで飛び出した言葉はCody選手やマット・ジャクソン選手、ニック・ジャクソン選手と同様に「副社長へ就任したこと」、「『AEW』とフルタイム契約を結んだ」など、CHANGE the WORLDに向けた彼の決意を感じさせるものとなった。

会見には2018年のイッテンヨンで『IWGP USヘビー級選手権試合』を戦ったクリス・ジェリコ選手も乱入。再び戦いの火蓋が切って落とされた。

AEWという新しい居場所に向かったベストバウトマシン。今回は彼についての思い出を振り返りつつ、新日本プロレス再上陸で大切なことについて考えてみたい。

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後藤洋央紀とのベストバウト

ケニー・オメガ選手はヘビー級転向後、いきなり人気が爆発したわけではない。

2016年の『G1クライマックス』。ここが「ザ・クリーナー」にとってのターニングポイントだった。

内藤哲也選手との試合を制したにも関わらず、歓声は薄かった。決勝戦の相手はオカダ・カズチカ選手と棚橋弘至選手の引き分けにより、後藤洋央紀選手が進出。この大会の優勝は後藤洋央紀選手だという雰囲気も流れていたのに思う。

過去、“ガイジン”レスラーが『G1』クライマックスを制したことは一度もなかったためだ。

そんなジンクスをぶち破り、ケニー・オメガ選手は後藤洋央紀を下し、初出場初優勝という記録を残した。“ガイジン”レスラーとして新日本プロレスの歴史に風穴を開けた瞬間だったとも言えるだろう。

この試合は徹底的にケニー・オメガ選手の攻撃を後藤洋央紀選手が受けた。

その攻撃も凄まじかった。飯伏幸太選手のフェニックス・スプラッシュ、プリンス・デヴィッド選手のブラディサンデー、AJスタイルズ選手のスタイルズクラッシュ。

袂を分かった恋人、『バレットクラブ』歴代リーダーの必殺技。全てを繰り出し、片翼の天使で勝利をもぎ取った。

ストロング・スタイルとは異なる意味での物語を感じさせるプロレスは、ファンの度肝を抜いた。

ただし、まだ優勝した時点では支持が高かったとは言えなかった。問題はこの後だ。

 

日本語解禁

『バレットクラブ』加入以降封印していた日本語を完全解禁。残虐な「ザ・クリーナー」から一転、流暢な日本語でケニー・オメガ選手はこう言い放った。

「新日本は俺のホーム。あっちには行かない」と。

2016年、数多くのレスラーがあっちの団体に移籍していた。だが、新日本プロレスの新しい歴史を切り開いた“ガイジンレスラー”はそのキャリアを日本武道館で真っ向から否定したのだ。

ベストバウトを連発し、日本語も巧みに使いこなすケニー・オメガ選手は急速に支持率を高めていった。

そして、2017年のイッテンヨン『レッスルキングダム』だ。オカダ・カズチカ選手を相手行った『IWGPヘビー級選手権試合』は45分を超える神勝負。

新日本プロレスにケニー・オメガ選手ありというレベルにまでファンの期待を高めていった。

ザ・クリーナーの時代

着実に新日本プロレスでの存在価値を高めていったケニー・オメガ選手。この時期から石井智宏選手との因縁も始まり、後のベストバウトマシンVS名勝負製造機の一戦へとつながっていった。

ケニー・オメガ選手の大技を連発するスリリングなプロレスは多くのファンを魅了した。

新日本プロレスが大切にしている起承転結とは全く異なるアプローチではあるが、これが今の時代にバチっとハマった印象が僕にはあった。

これは棚橋弘至選手たちがV字回復を実現させ、新しいファンを獲得することで起こったファン層の変化に背景がある。

読み合いが軸にある玄人受けのプロレスから、はじめての人が見ても分かりやすいプロレスへの変化。

ジャイアント馬場さん時代の全日本が不完全決着を止め、完全決着へと移り変わり人気が再燃したように、誰が見てもスッキリできて分かりやすいプロレスはファンの受けがいいのである。

この“分かりやすいプロレス”という意味で、ケニー・オメガ選手はマッチしたのだ。

スピーディーで破壊力がある技の数々。起承転結も御構い無しに、バシバシ技を繰り出していく。

ロックアップからのフェイスロックなどの伝統的なプロレスは、昭和のプロレスファンには受けても、“分かりやすいプロレス”で育ったファンには地味に映りがちである。

そう、例え「プロレスの本質」を考えた時に伝統的なスタイルに軍配が上がるとしても、だ。

新日本プロレスが抱えるファン層の変化。女性ファン急増による魅力の変化。

この変化に最もハマったのがケニー・オメガ選手だった。

“恋人”との再会

2018年「何かが起きる雪の札幌」で、ケニー・オメガ選手はジェイ・ホワイト選手に敗れた。

Cody選手に反旗を翻されたリーダーを救出したのは、かつての恋人だった。

札幌の大地で抱擁を交わす2人。この瞬間、ケニーのオメガ選手は新日本プロレスのトップへ行くことが確定したように思う。

シングルでもタッグでもベストバウトを生み出せる男の誕生は、新日本プロレスを大いに沸かせた。

また、ヒールの「ザ・クリーナー」からダークヒーロー(ヒール2.0)の「ベストバウトマシン」へ変貌を遂げるなど、ここでも“分かりやすさ”を追求していたのだ。

片翼の天使が両翼揃った時

ここ段落は気分を害する可能性があるので、先に断っておく。あくまで僕の主観であり、誰かを否定しているわけではない。

『ゴールデン☆ラヴァーズ』の復活以降、ケニー・オメガ選手は「ケニたん」と呼ばれるようになった。また、「可愛い」とも呼ばれる機会が圧倒的に増えた。

言葉を選ばずに言えば、腐女子受けが抜群なのである。

これまでの飯伏幸太選手と積み上げてきたストーリーはBL漫画として書籍化されても全然売れ筋のラインであり、おそらくヒットするだろう。

一目惚れした男性と試合をするために来日し、タッグを組むようになった。

一方で、嫉妬と野心もあった。飯伏ケニーではなく、ケニー飯伏と呼ばれるようになりたい、と。

そして、彼の横に立つ男として相応しくなるために、悪の道に進んだ。

最大のピンチを助けてくれたのが、かつて愛し、今でも忘れていない男だった。

そう。ケニー・オメガ選手のこれまでには全て過去の伏線があり、物語として非常に魅力的だった。

では、オカダ・カズチカ選手から『IWGPヘビー級ベルト』を奪取してからはどうだろう。

全てのカードを切り登った頂きでケニー・オメガ選手の支持率は緩やかに下がっていったようにも思う。勿論、「可愛い」という言葉を彼に使うファンを除いてだ。

改めて書くが、ケニー・オメガ選手や飯伏幸太選手について可愛いという言葉を使う方を否定しているわけではない。

プロレスには100通りの楽しみ方があるためだ。

また、ケニー・オメガ選手のアスリートプロレスの方が初心者を惹き付ける側面もある。

ウィル・オスプレイ選手の動画が世界的に拡散されたことでもこれは分かりやすいと思う。

 

IWGPヘビー級王者として

ケニー・オメガ選手の『IWGPヘビー級選手権試合』は3試合に留まった。

Cody選手、飯伏幸太選手との3Wayマッチ、石井智宏選手、棚橋弘至選手である。

来日以降紡いできた物語は終わり、チャンピオンとしての新しい道が始まる。その道は自分が試合以外でもクリエイトしなければならない茨の道である。

ただ、ケニー・オメガ選手は新日本プロレスから距離を置く選択を取った。

僕はこう思った。このまま新日本プロレスのリングに上がり続けたケニー・オメガ選手は、これまで以上の人気を博すことはできたのだろうか、と。

海外戦略の担い手以上に、既存選手の格上げを立場的に求められた。自身が走り抜けた道を今度は壁側として歩むことになる。

オカダ・カズチカ選手がV12時代を築いた時は連勝街道を歩みつつもライバルたちの格上げに成功した。ただし、こう感じてもおかしくないはずだ。

「これで世界は変えられるのか」

アイドル(時代の象徴)は絶頂期にいなくなるからこそ、価値が最大化される。

ケニー・オメガ選手自身がそれを感じていたからこそ、新日本プロレスから距離を取ったのではないだろうか。これが僕の見解だ。

 

タイミングが命

新日本プロレスの公式スマホサイトのプロフィール欄からケニー・オメガ選手の名前が消えていないことから、おそらくクリス・ジェリコ選手と同様に、他団体のマットにも上がれる契約になっているのだろう。

ここで大切なのは、次に新日本プロレスへと現れるタイミングである。

ハマれば爆発的にのめり込むが、飽きれば見向きもしないのが日本人の特徴でもある。

故にブームにならないような戦略を組むアーティストやサービスも多い。

瞬間風速では継続性に欠けるためだ。

今、新日本プロレスのファンはケニー・オメガ選手に飢えている。

ただ、タイミングを外してしまうと反応は鈍いと思う。これは必ずだ。

ケニー・オメガ選手はブームのバブルが弾ける前に日本ファンの前から姿を消した。

クレバーな彼のことである。来るべき時に備えて、準備をしていると思う。

そして、その瞬間はきっと遠くない未来のはすだ。

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