“レインメーカー”とは何か?
“レインメーカー”とは何か?(個人の感想文です)。
2012年。V11を達成した棚橋弘至選手の前に現れた元ヤングライオン。
金髪の男は自らを“レインメーカー”と名乗り、新日本プロレスに金の雨を降らせると豪語した。
「これからは逸材に変わって、このレインメーカーが新日本プロレス引っ張っていきますんで。お疲れ様でした」
あの日からそろそろ10年が経とうとしている。
“レインメーカー”が不在になったのはいつからだったのだろうか。
そこにいたのは、等身大のオカダ・カズチカ選手。
新日本プロレスを背負い、「IWGPヘビー級ベルト」のV12を達成。
時代の中心に立つ完全無欠のチャンピオン。
そんな周囲の期待は、いつしかオカダ・カズチカ選手の中で見えない枷になっていたのかもしれない。
その結果、オカダ・カズチカ選手は自由を求めた。
2018年。ケニー・オメガ選手に敗れ、720日振りにベルトを落とすと、オカダ・カズチカ選手は変化を求めた。
まるで、校則の厳しい学校に通う学生が夏休みに入ったかのよう。
髪を赤く染めて、バルーンを持っての入場。
今思えば、この時から“彼はレインメーカー”と距離を置きたがっていたように思う。
最後は「カネの雨が降るぞ!」
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2021年9月19日
残り時間24秒! オカダが“思い出の地”で棚橋を撃破して『G1』好発進!
“レインメーカー”完全復活を宣言!!
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二冠戦とオカダ・カズチカ
世間のイメージと本来の自分に少しずつズレが生じてきた。
オカダ・カズチカ選手が“レインメーカー”から離れたがっていたのは、そのズレを俯瞰して見つめるためであり、自分の中で改めて“レインメーカー”を受け入れるための準備期間だったように思う。
少し時計の針を戻そう。
2019年。アメリカでジェイ・ホワイト選手から「IWGPヘビー級ベルト」を奪還。
ここから新日本プロレスは内藤哲也選手がぶち上げた「二冠王」を巡る物語が動き始める。
内藤哲也選手は前人未到の大記録を残したい。
飯伏幸太選手は最強と最高の両方を手に入れたい。
ジェイ・ホワイト選手は...自分こそダブルチャンピオンに相応しいと発言。
新日本プロレスでのキャリアとして「IWGPヘビー級」にこだわり続けてきたオカダ・カズチカ選手は、「二冠王」には興味なしと姿勢を崩さなかった。
ただ、ファンが望むのであればと「禁断の果実」であるファン投票を自ら提案。
ファンに決定権が委ねられる形で、二冠戦が決定した。
オカダ・カズチカ選手は分かっていたのだと思う。
二冠戦を行うことで、「IWGPヘビー級」の価値も「IWGPインターコンチネンタル」の価値も下がってしまうことに。
正確には「IWGPインターコンチネンタル」の存在意義が失われることとなった。
時代が証明しているが、「二冠戦だから」という盛り上がりが生まれることはなかった。
おそらくオカダ・カズチカ選手はファンの手で止めて欲しかったのだと思う。
オカダ 二冠っていうのは新日本の“黒歴史”なんじゃないかって、ボクは思うんですよね。だって、「二冠王座を巡る戦いで、何がみなさんの印象に残ってるのかな?」って。個人的に二冠のイメージといえば、内藤(哲也)さんが(EVILに)神宮で勝って花火をバックにポーズしてる場面くらいしか思い浮かばないですし、「二冠戦といえばこの試合だよね」っていうのがないというか。
オカダ でも、二冠は新日本プロレスの49年の歴史の中で一番やってはいけないこと、いや、二番目かな……。二番目にやってはいけないことを、やってしまったんではないかなと思いますね。
二冠から世界ヘビーへ
二冠の先には何もなかった。いや、そうではない。二冠の先には「統一」があった。
オカダ・カズチカ選手は新日本プロレスの歴史で一番やってはいけなかったこととして、「IWGP世界ヘビー級ベルト」の誕生日であると指摘している。
――新日本プロレスは3月1日に二本のベルトの歴史を継承したIWGP世界ヘビーの新設を発表。その後、飯伏選手が初代IWGP世界ヘビー級王者に認定されました。あのときの思いというのは?
オカダ そのベルト統一というのが、“やってはいけないことの一位”だと思いますね。せっかく昔から紡がれてきた歴史がなくなってしまったわけですから。やっぱり、IWGPの初代といえばアントニオ猪木さんだと思いますし、そこから続いてきたからこそ、意味があると思うので。
――新日本の創設者である猪木さんを起点とした、由緒正しい歴史というか。
オカダ それを二つあったベルトを急に一つにして、「世界ヘビーにしました、初代王者は飯伏幸太です」っていうのは、レスラーもファンもみんな、納得できないことだったんじゃないかなと思いますね。
「二冠戦」、「IWGP世界ヘビー級ベルト」の創設。オカダ・カズチカ選手の中で納得のいかないことが続きすぎた。
勝ち続けることが日常。ただ、そこには輝かせるだけの、人生を懸けるだけの権威あるベルトがあったためだ。
自分が王者ではない期間に新日本プロレスは変わり過ぎた。
この場所で今でも自分は金の雨を降らしたいのか。
あの頃のように誰もいない頂きで孤独に戦い続ける価値はあるのか。
そんな葛藤がずっとオカダ・カズチカ選手の中にあったのではないだろうか。
簡単に言えば、もう一度“レインメーカー”になる覚悟はあるのか。
今思えば、ずっとオカダ・カズチカ選手は元気がなかった気がする。
「元気が一番、元気があれば何でもできる!」
— オカダ・カズチカ (@rainmakerXokada) 2021年2月20日
マネークリップ
ミニマリズムの時代だ。必要最低限の持ち物で生きていけばいい。
そんな価値観も今っぽくていいが、“レインメーカー”には少し似合わない。
高級スーツにフェラーリ。プロレス界の頂点はこれだと見せ付ける。
そんな華やかなカッコ良さがオカダ・カズチカ選手の魅力だ。
オカダ・カズチカ選手が“レインメーカー”を封印して以降、マネークリップが新しいフィニッシャーとなっていった。
破壊力抜群。ギブアップを取れる拷問技。
しかし、ファンの受けはイマイチだった。
新しい挑戦を支持する声とレインメーカーで豪快に決めて欲しいというメッセージが7対3くらいだった印象である。
マネークリップはお金を束ねるクリップだ。
オカダ・カズチカ選手にそんな小銭は似合わない。ブラックカードとばら撒く現金があればいい。僕はずっとそう思っていた。
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棚橋弘至「二度目のおかえり」
オカダ・カズチカ選手は東京ドームでウィル・オスプレイ選手と戦って以降、技としての“レインメーカー”を解禁していた。
だが、まだ解禁していないものが2つあった。
2021年9月19日。棚橋弘至選手の前に立ったオカダ・カズチカ選手は新しいガウンとコスチュームを披露。
ガウンには世界各国の国家があしらわれている。
まだ、ショートタイツもこれまでに見たことがないくらいカラフルなものに仕上がっていた。
試合の詳細は「新日本プロレスワールド」でチェックして欲しい。
棚橋弘至選手を踏みつけ、片腕でのレインメーカーポーズ。
さらにはリングのど真ん中でレインメーカーポーズを披露。
ここで“RainMaker will be back!”を期待してしまう。
さらには「大阪ーーー!」と会場名を叫ぶこともしない。
完全無欠の“レインメーカー”は“レインメーカー”で棚橋弘至選手を撃破した。
棚橋弘至選手は前日のメットライフドーム大会で飯伏幸太選手の復帰戦をぶち上げ、今度はオカダ・カズチカ選手の“レインメーカー”を呼び戻したのである。
逸材が育てた土地に恵みの雨が再び降り注いだ。
“レインメーカー”とは何か
有言実行。自身の夢を語らずに、ファンに夢を見せ続けてきた。
“レインメーカー”とは新日本プロレスの象徴であり、プロレス界の宝である。
ただ、その前に「一番強くて一番カッコいいレスラー」だった。
オカダ・カズチカではなく、“レインメーカー”と向き合い続け、とうとうオカダ・カズチカ選手の中で答えが出たのだ。
運命的に再誕の場所は“レインメーカー ショック”が起こった大阪。この場所からもう一度始めよう。そんな意味もあったのだと思う。
「ハアハアハア……、大阪ー!(場内拍手)。棚橋戦、公式戦の中での一試合かもしれないけど、この大阪のお客さんや、俺にとってはすごい意味のある一試合だったと思います(場内拍手)。そして、いままでのオカダ・カズチカじゃなくて、“レインメーカー”オカダ・カズチカが帰ってきたぜ!(場内拍手)。安心して。いま、なかなか元気じゃない世の中だけど、俺が、“レインメーカー”オカダ・カズチカが帰ってきたからには、新日本プロレス、すごい戦いを見せていくし、世界中、元気にしていきます!(場内拍手)。『G1』、昨日A、今日B、満足していただけましたか?(場内拍手)。こんなもんで満足してんじゃねえよ、コノヤロー! まだ始まったばかりなんだよ!(場内拍手)。まだまだ、プロレスの火か、『G1』の火か、わからないけど、灼熱の秋、灼熱のレインメーカー、見せていきますのでよろしくお願いします! 今日はありがとうございました!(場内拍手)。というわけで、『G1 CLIMAX』にカネの雨が降るぞー!!(場内拍手)」
「こんなもんで満足してんじゃねぇぞ!!」
多分、この言葉は“レインメーカー”じゃなかった時代を経たからこそ言えるメッセージだと思う。
彼はずっとファンに対しても丁寧語だった。そんな彼がファンにも本音をぶつけられるようになったのだ。
カネの雨を降らす男。“レインメーカー”とは何か。術術や起業家ではない「3つ言わせてください」の最後に入る意味とは何か。
「特にありません」とは言わない。その本当の答えはこれから分かるはずだ。
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