高橋裕二郎の「G1クライマックス31」について
高橋裕二郎の「G1クライマックス31」について書いてきたい。
2020年の「G1クライマックス30」よりも明らかにコンディションがよく、内容でも名勝負を連発していたそんなシリーズになったと思う。
プロレスは単に強さだけを争う競技ではない。
フィジカル、テクニック、トーク、ストーリーテリング、そしてヒューマニズム。
プロレスは格闘ゲームじゃねぇんだよと誰かが言ったが、単純な能力を超えた先にある隠しのステータスがレスラーの人気に紐づくケースが多い。
高橋裕二郎選手は怪我の影響で一番の個性(圧倒的なフィジカル)を失ってしまった。
だが、そこで腐ることなくテクニック(インサイドワーク)を磨き続けた。
トップレスラーが絶対やりたくないような汚れ仕事を率先して担う。そんな生き様が彼のストーリーに深みを持たせていったのだ。
例えば、真剣な眼差しや勝ってくれ!!!とファンが思わず願いたくなる表情。
僕がずーっと彼を応援しているのは、苦い過去と向き合って、それでも前を向いて戦い続ける男の背中だ。
漢・高橋裕二郎。
「G1クライマックス31」のリーグ戦成績は2勝(不戦勝1)6敗1引き分け。ベストバウトは石井智宏選手戦(勝手に僕が選んだ)。
去年の1勝8敗と比較すると悪くない結果だと思う。
勝ち点を採ったのが今の新日本プロレスを牽引する昭和57年組であることは偶然なのかザック・セイバーJr.選手と同じ57年キラーとしての宿命なのか。
【10.18横浜大会・第3試合】
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2021年10月18日
『G1 CLIMAX』Aブロック最終公式戦!
鷹木信悟vs高橋裕二郎!
激しい場外戦を展開するも……最後はまさかの両者リングアウト!
★試合の詳細は新日本プロレス・スマホサイトで速報中!https://t.co/FVsXU1ZVTZ#njpw #G131 pic.twitter.com/a0g75JdFYz
新技・ビッグジュース
あれは日本、いや全世界を震撼させた一撃だと言っても過言ではないはず。
2021年9月18日の大阪・大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)大会。「G1クライマックス31」の開幕戦でサプライズは起きた。
前回、前々回の覇者である飯伏幸太選手が初戦で迎える相手は“バレットクラブ”高橋裕二郎選手。
棚橋弘至選手との「IWGP USヘビー級選手権試合」を見る限り、まだコンディション的には厳しい状態であるこは間違いない。
ただ、ここ数年のシングルでの活躍を見ると、飯伏幸太選手が高橋裕二郎選手に負けるとは誰も想像していなかったはずだ。
だが、波乱は起きた。
高橋裕二郎選手は今回の「G1クライマックス」用に引っ提げてきた新兵器“ビッグジュース”を初披露。飯伏幸太選手から完璧なフォール勝ちを奪ったのだ。
“ビッグジュース”は恐らくは内藤哲也選手を倒すために編み出した新技だ。
“ピンプジュース”を使いはじめて5年。
そろそろこの技だけでは、トップランカーたちには勝ちきれない。そんな考えから、“ピンプジュース”をアップデートさせた“ビッグジュース”は誕生したのだと推測する。
この試合で敗れた飯伏幸太選手がAブロックの代表として「G1クライマックス31」の優勝決定戦へ挑む。
リーグ戦で彼に土を付けたのは高橋裕二郎選手とザック・セイバーJr.選手のみである。つまりは...そういうことだろう。権利証マッチの可能性。あると思います。
IWGP世界ヘビー級王者と引き分け
続いて最終戦。
鷹木信悟選手がリングに上がる直前。手を合わせて集中力を高めている隙を突いてトペを見舞う。
その後、すぐに場外カウントを数えるようにレフリーへ指示。この時点でこの試合の目的は一つしか無いことが分かる。
「両者リングアウト」
鷹木信悟選手に勝ち点2を献上しなければ、KENTA選手がAブロックを勝ち抜くチャンスがある。
おそらくKENTA選手からの依頼というよりも、高橋裕二郎選手が進言してこの試合内容が生まれたのではないかと僕は推測する。
“ハウス・オブ・トーチャー”としてではなく、高橋裕二郎として動いた。
直近でリーダーのEVIL選手が3人介入させて高橋裕二郎選手には負けていた。
汚いことをしても勝てないかもしれない。だが、引き分けになら持ち込める。
その仕事する。チームのためにシングルマッチでバイプレイヤーに徹するのだ。
両者リングアウトを狙うのであれば、油断させる必要がある。
どんな完璧なレスラーでも付け入る隙がゼロなわけじゃない。
攻めさせた後に場外でケインを打ち込む。
これで2度の伏線を張った。この試合、俺はリングアウトを狙っている、と。
こいつ、リングアウト勝ちを狙っているなと頭に焼き付けた。
次は約5分以上リングで試合を続ける。鷹木信悟選手に対して五分と五分でぶつかり合う。何を食らっても立ち上がる。
全てはこの試合は真っ向勝負なのだと錯覚させるために。もう一度、場外に鷹木信悟選手を落とした瞬間
「レフリーカウント取れ!!!!」
鷹木信悟選手はここで思い出した。こいつリングアウト勝ちを狙っているんだと。
やべぇとばかりにすぐにリングへ戻ろうとするも高橋裕二郎選手が阻止。一度は戻ることに成功するももう一度、場外へ引きずり落とされた。
ここでピンプジュースを炸裂させる。さらにリングへ戻る!!ではなく、リングへ戻る振りを見せた。
あいつをリングに戻さなきゃいい。
勝てないかもしれないけど絶対に負けない。俺は絶対にこいつに負けない。
カッコよさなどかなぐり捨てて結果にこだわる。鷹木信悟選手の足にしがみついて引き分けをもぎとった。
エル・デスペラード選手が「別に裕二郎のこと好きじゃねぇけど、こういうの見ると応援したくなる」と語ったように、彼の魅力が爆発した試合だった。
これが俺たちの愛する高橋裕二郎の試合なのだ。
2021年8月10日の横浜武道館でシングルを戦った時も鷹木信悟選手は高橋裕二郎選手から3カウントを奪うことができなかった。
2人の物語はまだまだはじまったばかりだ。
仕事を終え安堵した表情で花道を歩く。高橋裕二郎選手の爽やかな表情が心に焼き付いて離れなかった。
内藤チャン...
改めてになるが、今回の「G1クライマックス31」で2人の対決が見れなかったことはとても残念だ。
高橋裕二郎と内藤哲也。
「元パートナーが7年振りに激突する」
正直、「G1クライマックス31」のエントリー選手が発表された時に最も話題になったのが、この2人の直接対決だろう。
内藤哲也選手が“制御不能”になって以降の初対決。
新日本プロレスの主役になった男と新日本プロレスの代表する名バイプレイヤーになった男。
そんな二人の対決は聖地・後楽園ホールで組まれていた。
集客に苦戦する社会状況の中でチケットは即完売。
この組み合わせにどれだけの意味があり、ファンが楽しみにしていたかはこの結果が証明していた。
だが、内藤哲也選手の負傷でこの対決は持ち越しになってしまった。
この持ち越しに今後、どんな意味が生まれるのか。どんな新しい運命を紡ぐのか。
ここがプロレスの醍醐味ではないだろうか。
高橋裕二郎選手はボロクソに言う権利がある。
「内藤チャン、昔のお前なら欠場しなかったよな。ま、俺に負けるのが怖かったんだろ?飯伏に勝ち、鷹木と引き分けたこの俺様によ!」
「まぐれで勝って何いってんだよ?でもやってやるよ。裕二郎、相手してやるよ」
2人の物語が“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”VS“ハウス・オブ・オーチャー”につながっていく。
何の因果なのか。SANADA選手の最終戦の相手は“キング・オブ・ダークネス”EVIL選手だ。
ここに高橋ヒロム選手はSHO選手が初めて「IWGPジュニアヘビー級王座」に挑戦したときのチャンピオンである。
内藤哲也選手の復帰が新しい戦いの幕開けにつながる。そんな匂いがプーンと漂っている気がしてならない。
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