解説者ミラノコレクションA.T. の“プロレス”を3つの視点から考えてみる

新日本プロレスワールドやサムライTVの解説でお馴染みのミラノコレクションA.T. さん。

アニマル浜口道場でトレーニングを積み、FMWの練習生を経て闘龍門の門下生へ。その後は複合関節技であるジャベを強みにドラゴン・ゲートや新日本プロレスで活躍した元プロレスラーである。

ヘビー級だけではなく、ジュニアタッグ戦線でもタイチ選手とのユニット「ユニオーネ」で大きな爪痕を残した。

ミラノ劇場閉幕後は、東洋医学を学びマッサージ店をオープン。そして、多くのファンから愛されるプロレス解説者としてのイメージが強くなってきた。

ここでは、いわゆる解説の仕事という店にフォーカスしつつ、僕が思うミラノコレクションA.T. さんの口から発せられる解説の楽しさについて考えてみたい。

中邑真輔選手の壮行試合で号泣し、「Everythingか!?Everythingなのか!?」と視聴者を煽り、内藤哲也選手がはじめて『IWGPヘビー級』ベルトを戴冠した試合後のマイクが終わった瞬間に「持ってった!」と感情を炸裂させるミラノコレクションA.T. さん。

名試合の影にミラノコレクションA.T. さんあり。彼の“プロレス”に感謝の気持ちを贈りたい。

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いわゆる解説という仕事

スポーツ解説者の仕事について調べてみると、アナウンサーと共に実況席で技術・戦術・選手心理等の解説する人を指すと記載があった。

つまり、スポーツ実況の解説者とは自らの知見を糧に、目の前で起こっている事象を具体的に伝えることが主な仕事になると言える。

ただし、実況スタイルに関しては個人のスタイルによって大きく異なるとも言える。例えば、サッカー解説者の松木安太郎さんやテニス解説の松岡修造さんだ。

それぞれ日本を代表する実績するを持ちつつ、冷静に淡々と語り上げるというよりも、情熱的な意見をそれぞれのファンに届けている。では、ミラノコレクションA.T. さんはどうなのだろうか。

元プロレスラーがファン目線で語る解説の意義

ミラノコレクションA.T. さんの解説を聞いていると3つのポイントが印象的だ。【1】自身の推し選手について徹底的に語ること、【2】今の感情をそのまま表面に出すこと、【3】元プロレスラーならではの関係値を活かした取材である。

【1】については、『新日本プロレスワールド』を見ている方であれば一番分かりやすいポイントだと思う。

『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』の内藤哲也選手やEVIL選手、SANADA選手。『ジ・エリート』の高橋裕二郎選手、チェーズ・オーエンズ選手。敢えて名前を出そう。『鈴木軍』のタイチ選手。

この選手らがリングの上に上がるとミラノコレクションA.T. さんの解説スタイルは一変する。いい意味で淡々と試合の状況や選手の技、心境について語っているスタンスから逸脱し、感情を表に出し選手名を叫び続ける。

この解説を見ながら僕はいつも思うのだ。

あの「ミラノコレクションA.T. さんがここまでプッシュする選手。であれば、間違いなくいい選手に違いない」と。

 

ファン感情とシンクロする瞬間

ここで、先日の『ゴールデン☆ラヴァーズ』ケニー・オメガ選手&飯伏幸太選手VS棚橋弘至選手&ウィル・オスプレイ選手の試合を振り返ってみよう。

ウィル・オスプレイ選手の才能が弾けたこの一戦は、年内最終興行のメインイベントに相応しい好勝負となった。

この日の解説席に座っていたのもミラノコレクションA.T.さん。実況とは違う解説ならではリアクションで、ウィル・オスプレイ選手のスゴさをさらに広げた。

雪崩式フランケンシュタイナーを前方宙返りで着地した際、ミラノコレクションA.T.さんは笑った。

ただ、爆笑した。

これがとてもいいリアクションなのだ。あまりにもすごい光景を見た時、人は思わず3つの行動を取ると思う。まず、「言葉を失う」。次に「叫ぶ」。最後に「笑う」だ。

絶句してしまっては、解説者の仕事にならない。叫ぶでは他の解説者の被ってしまう。

ミラノコレクションA.T.さんは「笑い」という独特のリアクションをプロレス解説に取り入れた。

勿論、ただ笑えばいいという訳ではない。出自がイタリアの伊達男。内面から漂う「上品さ」と「笑い」というリアクションにはギャップがある。ここが肝なのだ。

常にコメントが的確で、プロレスについての学びを提供してくれる。特定の選手を贔屓するコメントをしても卑下するコメントはしない。

バランスの取れた解説者から飛び出す「笑いという揺らぎ」があるからこそ、プロレスがもっと楽しくなる。

MILANO FEVER

MILANO FEVER

 

独自取材という贅沢な時間

「笑い」のリアクションについて書いたが、ミラノコレクションA.T.さんの本流は事前の取材とコメント力にある。

例えば『ワールドタッグリーグ2018』でタイチ選手&ザック・セイバーJr.選手の試合が始まった後、ミラノコレクションA.T.さんは独自取材でのエピソードを披露する。

「会場で塩の巻き方と四股を踏み方を教えていましたね」

実はこの情報。かなりレアなのである。新日本プロレス所属のプロレスラーたちは、SNSを活用している。さまざまな情報が発信される中で、試合前の準備について語られる機会は非常に少ない、というかほぼ目にしない。

以前は控室までテレビカメラが入っている時代もあったが、現在はそこまでのことはしていない。

だがらこそ、ミラノコレクションA.T.さんの独自取材はプロレスファンとして非常に贅沢な情報なのだ。

 

解説者がプロレスをしている

若くしてプロレスラーを引退したミラノコレクションA.T.選手は現在もプロレスの解説席でプロレスをしている。

常に課題を持ち、どう表現するかを追求し続けている。

内藤哲也選手は6人目のパレハを発表する際、ミラノコレクションA.T.さんの名前に触れた。

タイチ選手は『NEVER無差別級』への挑戦者候補に含まれる発言をした。

リップサービスでもここまで、お弄りをしただか解説者は他にいないだろう。

新日本プロレスブックス オカダの部屋

新日本プロレスブックス オカダの部屋

 

名前を叫ぶ、関係が伝わる

「カズチカ!」

「シンゴ!」

普段は解説者として冷静に語っていても、長い付き合いのある後輩の試合が白熱すれば、思わずファーストネームを叫ぶ。

これが選手と解説者の関係を暗示させるのだ。

調べてみると闘龍門時代の後輩だということが分かる。

わざわざ昔話なんてしなくても、意図せずに名前を叫ぶだけで、視聴者に気付きは提供できるのだ。

ミラノコレクションA.T.さんは解説席からプロレスをしている。

たがらこそ、彼がその場にいることで、試合の面白さが100%以上になっているのだと思う。

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