KENTAがオカダ・カズチカとの一戦で見せるべきものとは
KENTAがオカダ・カズチカとの一戦で見せるべきものとは何か。試合当日を迎えた朝にしっかりと書き残しておきたい。
事前の下馬評や勝敗予想などレスラーの前には意味がないのである。そう言わんばかりに破竹の4連勝で折り返しを迎えたのがこの2選手である。
「IWGPヘビー級王者」“レインメーカー”オカダ・カズチカ選手。元ヒデオ・イタミことKENTA選手である。
新日本プロレス真夏の祭典「G1クライマックス」を全勝で勝ち抜く2人の男。特にオカダ・カズチカ選手は圧倒的である。
ここまでオカダ・カズチカ選手は棚橋弘至選手、ザック・セイバーJr.選手、バッドラック・ファレ選手、ウィル・オスプレイ選手を撃破。
直近行われたウィル・オスプレイ選手との試合では師弟、兄弟の枠を超えた新時代のベストバウトとなる予感を感じさせる内容が展開されていた。
圧倒的な試合内容と実績。今のオカダ・カズチカ選手は次のレベルへと進もうとしているようにも見える。赤髪バルーンお兄さんだった昨年の夏とは大きく違う(2018年が自由過ぎたわけだが)。そんな“レインメーカー”はやっぱりいつでも注目の的なのであると。
そんな完全無欠の王者に挑むのがKENTA選手だ。
うん。賛否両論は止まらない。ただし、勝ち続けている。そして、VSオカダ・カズチカ選手に対しては何か含みがあるような気がする。
なぜ、KENTA選手はEVIL選手との試合でオカダ・カズチカ選手を意識したようなパフォーマンスを見せたのか。
その胸中に少し迫ってみたい。
ナチュラルヒール
ナチュラルヒールはある種の才能だと僕は思っている。
自分の立ち位置に関係なく、ブーイングを浴びることができる才能。
一例を挙げるのであれば、「なんか見ててブーイングをしたくなる」ということである。
レスラーがブーイングを受けるタイミングはいくつかある。
例えば、特定のレスラーの見せ場が潰された時、ヒールレスラーがダーティーファイトで応援している選手を追い詰めている時である。
また、オカダ・カズチカ選手が強すぎてブーイングが飛んだケースもあった。
ただし、ナチュラルヒールはこれらの事例と一線を画す。
声援ではなくブーイングが圧倒的に似合う。ナチュラルヒールが狙ってブーイングを受けようとすれば、更に大きなグルーヴ感が生まれていくのである。
現在、新日本プロレスでナチュラルヒールを地で行っているのはKENTA選手である。
ここまで全勝で来た彼の試合は全て注目を浴び続けている。
興味が生まれないのが最もアウトなのだ。
猪木と馬場
過去、こんな言葉があった。攻めの新日本プロレスと受けの全日本プロレス。ストロングスタイルと王道。団体のカラーが違うからこそ、プロレスファンは幅広い楽しみ方ができているのだ。
そして、選手の象徴が団体の方向性を決めていく。
現時点で新日本プロレスのトップレスラーは「IWGPヘビー級王者」であるオカダ・カズチカ選手である。
中学校を卒業後、単身メキシコへと渡ったオカダ・カズチカ選手。
「格闘技路線に舵を切っていた新日本プロレスをつまらなかった」と語るチャンピオンは「動けるジャイアント馬場になれ」と指導を受けた過去を持っているのだ。
闘龍門で生まれ、新日本プロレスで育ちオカダ・カズチカ選手は“化物以上の存在”へと覚醒した。
そして、現在では絶対王者・棚橋弘至選手を倒したか時とは大きく雰囲気も変わりヒールとしとの側面は鳴りを潜めていった。
そもそも、オカダ・カズチカ選手に対して明らかにブーイングが飛んでいたのは、東京ドームで棚橋弘至選手へ挑戦状を叩きつけた時から1シリーズほどである。
圧倒的な華と伸び代溢れるポテンシャル。棚橋弘至選手を破り、王者として内藤哲也選手を迎撃した時には、もはやブーイングが飛ぶことは無かった。
すっかり今では風車の理論を体現する名レスラーへと飛躍したオカダ・カズチカ選手とKENTA選手が対峙した時、一体どんな化学反応が起きるのだろうか。
風車の理論の理想形
競技における勝負とは無情なもので勝利と敗北の2文字しか存在しない。
ただし、プロレスでこの理論を紐解くとここに内容が含まれる。数字には現れない価値がそこには存在しているのだ。
分かりやすく言えば「NEVER無差別級王者」の石井智宏選手だろう。明らかにメインイベントの数が多いのは対戦カードを見ていれば明らかだ。
石井智宏選手は自分の試合に対して評価がとにかく厳しいため、納得したコメントを残すことはほぼない。ただし、その多くの試合がファンの琴線に触れる内容となっているため、圧倒的な支持を得ているのだ。
そして、石井智宏選手と同じ「CHAOS」のオカダ・カズチカ選手も風車の理論の体現者であるように思う。
相手の力量を引き出した上で勝利を掴む。KENTA選手がオカダ・カズチカ選手と相対することでどんな動きを魅せるのか非常に楽しみである。
レインメーカーポーズの謎
最後に。
なぜ、KENTA選手はEVIL選手との一戦でレインメーカーポーズを何度も取っていたのだろうか。
その瞬間に降り注いだのは恵みの雨ではなく、怒号のようなブーイングだった。
棚橋弘至選手をもってして「最高のベビーフェイス」と言わしめた柴田勝頼選手に導かれたKENTA選手はオカダ・カズチカ選手でどんな試合を魅せるのか。
棚橋弘至選手との試合に続いて、この日も柴田勝頼選手が解説席に入るという希望を持ちつつ、全勝同士の試合を待ちたい。