飯伏幸太の“最凶”が目覚めた一夜と握手への疑問

飯伏幸太の“最凶”が目覚めた一夜だったように思う。

新日本プロレス真夏の祭典「G1クライマックス29」も折り返しを迎え、徐々に優勝決定戦へ駒を進められる選手がしぼられてきた。

Aブロックに焦点を絞ってみると、本日時点でトップを走るオカダ・カズチカ選手、一敗のKENTA選手に棚橋弘至選手、飯伏幸太選手、EVIL選手が続く形となっている。

正直、ここに飯伏幸太選手の名前がある時点で驚きを隠せない。

いや、そもそもは優勝候補の最右翼としてかんがえていたが、KENTA選手との初戦を終え、あれだけのアクシデントが起こった中で超回復を見せるとは流石に想像できなかったのだ。

まさに、飯伏幸太選手恐るべしと言ったところだろう。

ただし、覚醒したランス・アーチャー選手を前にすれば、コンディションですらスケールの小さい話になってしまうから不思議だ。

圧倒的なパワーの前では万全でもそうじゃなくとも勝利を掴むことは難しい。

であれば、こう見るのは自然な流れなのかもしれない。

どうすれば飯伏幸太選手はランス・アーチャー選手から勝利することができるか。

この一点で試合を観ているとあることが分かった。

中邑真輔選手を極限まで追い詰めたゴールデン・スターは狂ってこそ真価を発揮するということである。

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カミゴェを耐えた男

ランス・アーチャー選手がこの日も大暴れしていた。

言葉を選ばずに言えばあの飯伏幸太選手をもってして内容でほぼ圧倒していたように思う。

また、思わず目を見張るシーンもいくつかあった。

まずはカミゴェにカウンターを合わしたところである。カミゴェを狙う飯伏幸太選手に対して、超高速で膝を見舞ったのだ。

カミゴェはオカダ・カズチカ選手のレインメーカーと同様に自らが相手を引き込み威力を増す技である。

これまでも内藤哲也選手など多くのレスラーが対策を講じてきたが、今回のランス・アーチャー選手は自身のリーチを活かしつつ、一気に相手を倒すという新しいカミゴェ破りを実現していたのである。

そして、ランス・アーチャー選手は試合終盤でカミゴェを耐えた。

あれはランス・アーチャー選手の意地がそうさせたに違いない。

そんな勝利に飢えている男に対して、無慈悲な一撃を見舞う飯伏幸太選手。

この瞬間、飯伏幸太選手の中で何か変化が生まれていたのだ。

 

「(※脚を引きずりながら引き揚げて来て、コメントスペースにたどり着くなりフロアに座り込む)いやあ、すごすぎる……すごすぎる。あんな、でっかいヤツ、闘ったことないし、正直全部、9:1、攻められた(なんていうのは)初めて。初めて……そのカミ(ゴェ)が効かなかった。1発で、仕留められなかったのは、倒れなかったのは、彼が初めてかなと。内容としては負けましたね、完全に。ただ、勝ちは勝ちだし、正直、何回でもやりたいです。また、新しい標的が見つかりましたね。最強ですよ、最強。僕の“最狂”の部分、ランス・アーチャーに目覚めさせてもらいました。これからまた、強くなります。進化します。(残り)全部勝ちます。体も大丈夫だから

逸材と天才

この日はセミファイナルについても触れておく必要があるだろう。

プロレスラーには華か毒が必要だというが、眩いばかりの華を持っているのが今回の主役である、新日本プロレスのエース棚橋弘至選手と「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」SANADA選手だろう。

太陽のように相手レスラーを照らすような試合が印象的な棚橋弘至選手に対して、水の心を持ちどんなレスラーと対峙したとしても、高次元の試合を実現するSANADA選手。

この2人が「G1クライマックス29」の舞台で激突するのだから、こんなに楽しみなことはないだろう。

まずは2人を1人のレスラーで紐解いてみたい。

永田裕志選手が保有していた「IWGPヘビー級ベルト」の連続防衛記録を打ち破った棚橋弘至選手は凱旋帰国を果たしたオカダ・カズチカ選手の手によって記録をストップされ、記録を破られた。そして、今では“友だち”となった。

そんなオカダ・カズチカ選手が認めたライバルがSANADA選手である。

そんな2人の対決は胸いっぱいに膨らんだ期待通りの内容となった。

フィニッシュはハイフライフロー。この2人の決着に最も相応しい技をだったのかもしれない。

ただし、SANADA選手はこれで1勝4敗と非常に苦しい状況となってしまった。

ここから巻き返すのは現実的厳しいと言えるレベルである。

この状況でSANADA選手が狙うのは一つ。オカダ・カズチカ選手からのシングル初勝利なのかもしれない。

 

握手の理由

新日本プロレスマットで注目を浴びているレスラーの1人であるKENTA選手。

この日の相手は現「IWGPヘビー級王者」オカダ・カズチカ選手ということで再びのメインイベントを飾ることになった。

試合時間は25分を超える長期戦へ。徹底的にオカダ・カズチカ選手を攻めるKENTA選手に対して、とことん技を受けドロップキックとツームストンパイルドライバー、そしてレインメーカーで勝負を決めたオカダ・カズチカ選手。

試合後には握手を差し出した手を取るという展開へ。僕は正直このシーンを見て、KENTA選手の先行きが不安になってしまった。

 

KENTAどこへ行く

KENTA選手に関して、初戦の飯伏幸太選手の後、賛否両論が常に飛び交っていた。

蹴りまくるだけ、受けないから面白くない。

外敵らしい動き、KENTAのプロレスが分からないと嘆く声。

かなり対極の意見と言ってもいい状況である。なぜ、こんなにもKENTA選手の評価は分かれるのだろうか。

僕は、過去を知っているか否か。この点が大きいと感じている。

つまり、昔のKENTA選手は凄かった。だから、これは正しいのだという力学が働いているのだろう。

一方で、昔のKENTA選手を知らないファンからすれば、何かこれまでの新日本プロレスマットに上がっていたレスラーと毛色が違う。

蹴って殴ってばっかりで、相手の技を受けない。技を受けることで、生まれる心の揺らぎが伝わりにくいためなんだか見ていて感情移入ができないとなるのだ。

アントニオ猪木のストロングスタイルとは感情を見せること。

これと言ったライバル関係もなく、外敵にしては握手を求めてくる。

人間関係こそが人の興味を惹くものだとすれば、今のKENTA選手はあまりにその点が乏しい状況だと言える。

本隊なのか、それとも「CHAOS」なのか。ウルトラCで「鈴木軍」に加入することを僕は祈っている。

そのために何かの縁があり金丸義信選手がこの日の解説席に座っていたのかもしれない。

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