エル・デスペラードの矜持と優勝へのデスロード

エル・デスペラードの矜持と優勝へのデスロード。

2017年。僕がプロレスにハマった時期の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」で目立っていたのは、高橋ヒロム選手、KUSHIDA選手、ウィル・オスプレイ選手、リコシェ選手、田口隆祐選手、そしてタイチ選手だった。

凱旋帰国を果たしたはがりの高橋ヒロム選手だったが、既に現在と同じように対角線に立つレスラーを光らせていた。

タイチ選手との黒パンツ騒動(記者会見での割れない風船事件)。

今思えば、獣神サンダー・ライガーさんが「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」勇退した年でもあり、ジュニアの中心軸が大きく動いた時だったのかもしれない。

当日、僕はエル・デスペラード選手に対して、あまり印象がない。

確か「IWGPジュニアタッグ王者」はタイチ選手と金丸義信選手。エル・デスペラード選手は飯塚高史さんの暴走を止める役割だったり、各試合で動く構成員のイメージが強かった。

いや、イメージが強いというよりもあまり正直、印象が薄かった。

そんな僕に“ならず者”というブランドを見せ付けた瞬間が訪れる。

2018年の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」だ。タイチ選手のヘビー級に転向、高橋ヒロム選手との因縁が本格化。

様々なストーリーが重なり、エル・デスペラード選手へ僕たちの気持ちが向きはじめた。そして、彼が持つニヒルな魅力が“時限爆弾”により誘爆した。

 

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俺の正体知ってんだろ?

2018年、エル・デスペラード選手は金丸義信選手と共に「IWGPジュニアタッグ」を戴冠。

ここから一気に風向きが変わりはじめた。

高橋ヒロム選手とエル・デスペラード選手の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」は少々毛色の異なる雰囲気が漂っていた。

高橋ヒロム選手はエル・デスペラード選手の正体を知っている、と発言。この試合を通じて、マスクマンの正体が明らかになるのではないか?と様々な憶測が飛び交った。

この試合が物凄かった。エル・デスペラード選手ってシングルでもこんなに強かったのか?そう思わせるほどのファイト。

相手が高橋ヒロム選手だがらこそ出せる“何か”がリングの上にあった。

身長、体重不明(不明だが100キロ未満であることは間違いない)。出身地はメキシコ。

僕の記憶に残っている彼の1番のセリフはこれだ。

「ハハハ…。オイ、ヒロム。あんなに待ってたのに、『大嫌い』なんてさみしいこと言うなよ(※場内笑&大拍手)。答え合わせしてやってもいいぞ(※場内驚き)。お前、(俺の正体が)『わかる』っつっただろ!? じゃあもう隠したってもう意味ねぇもんな(※場内騒然)。あ~あ~あ~あ~、んなワケねぇだろ、バカどもが!(※場内笑&大拍手) いつもいつも自分たちのハッピーエンドになると思うなよ。これが現実だ。俺のほうが、ヒロムより…強かった(※大歓声&大拍手)」

出典:新日本プロレス

叫ぶわけでもなく、語気を荒げるわけでもない。

ただ、呟くように。それがさも当たり前のことのように言い放った。

この日から光と闇がクッキリし、闇にも大きな注目が集まるようになったのだと思う。

 

「優勝」が見えてくる

エル・デスペラード選手が高橋ヒロム選手から後楽園ホールのメインイベントで勝利を奪ったあの日。

彼は“優勝”の2文字をハッキリと口にした。これまで、そういった目標とは縁遠い存在だったはず。

皆さん頑張って。俺は俺でお前たちが潰しあってる隙を見て美味しい思いをするからさ。

そんなタイプなはずだった。

ただ、この日以降、エル・デスペラード選手のテーマは優勝なのだと僕は理解していくことになる。

まずは、高橋ヒロム選手との熱戦を制した直後のマイク。

「どうだよ、アッ? 3カウントってさ、やられたほうって覚えてねえけどさ、ギブアップって、自分で言ったろ? オマエ、自分でギブアップって言ったんだよ。ハハハハハハ! ハア、ハア……、どうだ? オマエ、オレのこと『べつに』って言ってたじゃん。大嫌いだって昔。俺は大好きだって言ってんのにさあ。それが終わったと思ったら『べつに』かあ? どうだ? 『べつに』っていうのはよ、好きでも嫌いでも興味がねえってことなんだよ。これで、また俺に興味持ってくれた? その足でオマエは『SUPER Jr.』優勝できるもんならしてみろ。このあと、続いてんのは、田口とか……、なんだよ、ワトとか大したことねえヤツしか続いてねえじゃんかよ。残念、残念。もう一回できるんだったら、立てなくしてやんのによ。オレは『SUPER Jr.』優勝するぜ(場内拍手)。オマエはどうする?」

出典:新日本プロレス 

続いては、マスター・ワト選手の敗戦後。

丸め込みで敗れたことに対しての非難に続き飛び出したのは、石森太二選手への挑戦表明だった。

今、俺は忙しいんだ。テメエが今、邪魔してくれた『(BEST OF THE)SUPER Jr.』、俺、優勝しなきゃいけないんだ。わかるか、テメエみたいに何となく思い出作りに出てるヤツとは違うんだよ。俺は『SUPER Jr.』優勝する。その先にいるのはチャンピオン様、石森様。俺はシングルのベルトも欲しいんだ。ああ、『SUPER Jr.』優勝して、シングルのチャンピオンになってから、テメーらとベルト懸けるの、考えてやってもいい……」

出典:新日本プロレス

 

そして、SHO選手に勝利した後。再び優勝を宣言。

オイオイオイオイ、帰んな、帰んな。勝ったチャンピオンさまが、まあ、タッグだけどな、褒めてやろうって言ってんのによ。そんなさっさと帰っちゃう、そんなバカな話あるか。オマエは、弱くないよ。弱くないんだ。『強さ比べようぜ』って言ったこの試合、最後の最後まで攻めてたのはオマエだ。だけどな……、いいか? そんなアマチュアみたいな強さがなんたらかんたらって言ったってな、勝ったほうがつえーんだよ。俺が勝ったからチャンピオンなんだ。わかるか、オイ? 最後の最後! 最後の一手! 決めきれないオマエが、強さのどうたらこうたら言うんじゃねえよ。アア? オレは! この『SUPER Jr.』、優勝するぜ? オマエは! その痛む足引きずって、こっから連戦連敗、予選落ちだ! 残念でした!(場内拍手)」

出典:新日本プロレス

 

プロレスラーとしての矜持

バックステージでも改めて、「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア27」優勝を宣言。

今大会でトップを狙っている理解が明かされた。

「『SUPER Jr.』優勝する人間が、弱いわけねえじゃん。なあ? ノブさん(金丸)がいなくったって、(IWGPジュニア)タッグのベルト持ってきてる。このタッグチャンピオンのプライドっつうのはよ、イコールそのまんま、プロレスラーとしての俺の矜恃だぜ」

出典:新日本プロレス

「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア27」でエル・デスペラード選手は自身と金丸義信選手のベルトを持って入場していた。

タッグチャンピオンとしてのプライド。負傷欠場という結果になった金丸義信選手への想い。

全てがエル・デスペラード選手の矜持なのだ。

このままの勢いで優勝を掻っ攫うのか。過去、一度も手にしたことのないシングルベルトという光へ手を伸ばすことは成功するのか。

2020年残り1ヶ月。鬼門は12月2日の大阪。現「IWGPジュニアヘビー級王者」石森太二選手との一戦。

エル・デスペラード選手の戦いはこれからだ。

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