高橋ヒロムが抱くジュニアとヘビーの違い問題
高橋ヒロムが抱くジュニアとヘビーの違い問題に対する僕の考えを書いていきたい。
以前、DOUKI選手との復帰戦を戦った高橋ヒロム選手はバックステージでこう語っていた。
「ジュニアとヘビー、違いが分かんねぇな。よくか悪くか、 違いが分かんねぇな」と。
新日本プロレスが設けている基準は100キロ以上がヘビーで100キロ以下がジュニアである。
ただし、一部100キロ未満でヘビー級戦線で活躍している選手がいるのも事実だ。
まずは、以前から進んできたレスラーの小型化について。
新日本プロレスを見てもいわゆるスーパーヘビー級(2メートルクラスの露骨にデカいタイプ)の層がかなり薄くなっている。
バッドラック・ファレ選手はしばらく日本のリングに上がっていないし、ランス・アーチャー選手やデイビーボーイ・スミス・ジュニア選手なども退団。スーパーヘビーからライトヘビー(ジュニアヘビーとするとややこしいので)へとトレンドがシフトしたのが今の新日本プロレスなのだ。
少し整理してみる。
新日本プロレスの象徴である「IWGP世界ヘビー級王座」を戴冠した3人のレスラーは、いずれもジュニアからヘビーへと戦場を移してきたキャリアを持っている。
飯伏幸太選手、ウィル・オスプレイ選手、鷹木信悟選手。彼ら3人が現代のライトヘビー級プロレスのトレンドを体現した者たちだ。
高い身体能力、圧倒的な機動力。それでいてパワーも持ち合わせているハイブリッド型。
身長というフィジカルではなく、アスリートとしての鍛錬と節制がものを言う世界。これが今のヘビー級のトップ戦線なのだ。
彼らをここでは便宜上、ライトヘビー級だと捉える。※実は僕自身カテゴライズするのはあまり好きではないのだが、一度整理するためにここは通らなければならない。
では、そもそもヘビーとライトヘビーを分けた場合に、どんな分布図になるのか。まずはこちらをご覧いただきたい。見た目で分けたので人によっても違った結果になるとは思う。※さらに元々新日本プロレスジュニアでも一定期間戦っていたレスラーはEXジュニアと書く。
ライトヘビー級
- 飯伏幸太選手(EXジュニア)
- 石井智宏選手
- ウィル・オスプレイ選手(EXジュニア)
- KENTA選手
- ザック・セイバーJr.選手
- ジェイ・ホワイト選手
- 鷹木信悟選手(EXジュニア)
- 高橋裕二郎選手(EXジュニア)
- チェーズ・オーエンズ選手(EXジュニア)
- デビッド・フィンレー選手
- 内藤哲也選手(EXジュニア)
ヘビー級
- アーロン・ヘナーレ選手
- “キング・オブ・ダークネス”EVIL選手
- オカダ・カズチカ選手
- グレート-O-カーン選手
- 小島聡選手
- 後藤洋央紀選手
- SANADA選手
- ジュース・ロビンソン選手
- 鈴木みのる選手
- タイチ選手(EXジュニア)
- 棚橋弘至選手
- タマ・トンガ選手
- タンガ・ロア選手
- 天山広吉選手
- 永田裕志選手
- 真壁刀義選手
- 矢野通選手
- YOSHI-HASHI選手
棚橋弘至選手をヘビーのラインとした(この場合、タイチ選手や鈴木みのる選手がどちらかになるのかが難しい...。棚橋弘至選手をライトヘビーに移行すると、さらにライトヘビーに偏るのが現実問題としてある)。
が、こうやってヘビー級の中でもさらに細分化すると見えてくるものがある。
高橋ヒロム選手がジュニアとヘビーの違いが分からないと言ったが、それもそのはず。今のヘビー級で戦うトップレスラーの大半がライトヘビー級に当たるためだ。
正確にはジュニアとライトヘビーの違いとは何か。この違いは分からなくても当然なのだ。
彼らはジュニアのファイトスタイルを主軸にヘビー級戦線で戦っているのだから。
ジュニアとヘビーの違いを知るためにはまず、ジュニア、EX-ジュニア(飯伏幸太選手ら元ジュニア)、ライトヘビー、ヘビー、スーパーヘビーという基準を明確にする必要があったのだ。
ここからは動画でも高橋ヒロム選手が語っていたKENTA選手についてや改めてジュニアとヘビーの違いについて書いていきたい。
※EXジュニア、ライトヘビーと“無差別級”の明確な違いは、ジュニアでありながらヘビー級のステージで戦っている点にある。EXジュニア、ライトヘビーはジュニアを卒業していることが絶対条件である。ちなみに現在生き残っている“無差別級”はSHO選手ただ一人。ここにもうひとり追加となる可能性があると僕は睨んでいる。
10.7広島 vsKENTA 10.9大阪 vs石井智宏
— 高橋ヒロム / Hiromu Takahashi (@TIMEBOMB1105) 2021年9月25日
俺にとってはただのスペシャルシングルマッチなんかじゃない。
ジュニアとは?ヘビーとは?という問いへの、新日本プロレスからの答え…ではなく挑戦状だと勝手に思ってる。
ジュニアとしての意地を持って必ず勝つ。https://t.co/IkOHYXek3D#G131 https://t.co/BzzGWq7ODU
KENTAのキャリア
KENTA選手は以前に所属していたプロレスリング・ノアでジュニアヘビー級の選手同士で初となる“GHCヘビー級選手権試合”を成し遂げた実績を持っている。
身長174センチ。体重は80キロ代。高橋ヒロム選手とほぼ体格は変わらない。身体の厚みで言えば高橋ヒロム選手の方が上回っているようにも見えるくらいだ。
KENTA選手は団体のため、自分の可能性を信じてヘビー級戦線にも名乗りを挙げていた。実際、完全に転向したのは2012年以降。それまではジュニアヘビー級に身を置きながら、対ヘビー級としてのキャリアも積み重ねてきた(2006年のGHCヘビー級選手権試合 丸藤正道選手vs.KENTA選手はプロレス大賞で最優秀試合を獲得している。当時は二人ともジュニア戦士である)。
ライトヘビー級のKENTA選手とジュニアの高橋ヒロム選手に違いはない。ただ、該当する例えがあまりないので言葉で表現しにくいのも事実としてある。
この言葉にできない何かを知るために、高橋ヒロム選手はKENTA選手との戦いに挑むのだろう。
僕が思うヘビーとジュニア
冒頭で、ジュニア、EXジュニア、ライトヘビー、ヘビー、スーパーヘビーなど「ジュニアとヘビー」を改めて細分化してみた。
ただ、僕の中でジュニアとヘビーの違いは「エリア(領域)の違い」でしかないと思っている。本当にガチガチにするのなら試合前の軽量があって然るべきだし。
ヘビー級は100キロ以上のレスラーあるいはヘビー級だと自己申告したレスラーにチャンスがある世界。
一方でジュニアは100キロ未満の選手。ここでのポイントは100キロに満たないレスラーでもヘビー級戦線で活動することはできるが、100キロ以上のレスラーはジュニアに参戦することはできないということ。
ジュニア→ヘビーはあれど、ヘビー→ジュニアはあまり例がない。※第三の選択肢として無差別級が存在する。2019年の鷹木信悟選手やウィル・オスプレイ選手など。
また、ミラノ・コレクションA.T.さんは新日本プロレスでジュニアからヘビー級に挑戦し、ジュニアに戻ってきた珍しいタイプのレスラーであるだったりする。
少し話題が逸れたが、ジュニアとヘビーはエリアの違い。
どちらのフィールドで戦い続けたいかを含めて、レスラーが選択するものだと思う。
二冠挑戦のパラドックス
ヘビーとジュニアの違いが分からない。高橋ヒロム選手の主張はごもっともだが、自身がその曖昧さに拍車をかけたことも忘れてはならない。
高橋ヒロム選手はいきなり「IWGPヘビー級&IWGPインターコンチネンタル選手権試合」に臨んだ経験があるためだ。
タイトルマッチが実現できたのは、内藤哲也選手を破った“キング・オブ・ダークネス”EVIL選手へ宣戦布告をしたから。これだけなのだ。
ジュニアでは圧倒的な実績を残していても、ヘビー級として結果を出したわけではない。
それでもダブル選手権試合は組まれた。
旗揚げ記念日という特殊な状況があったエル・デスペラード選手とは違う。
ジュニアの選手がヘビーのトップにいきなり挑戦できるパラドックスを作ったのは高橋ヒロム選手だったりするのだ。
上下ではなく、エリアが違うとはそういった意味合いでもある。
高橋ヒロムのモヤモヤ
これは仮説だが、高橋ヒロム選手は100キロ未満の選手はジュニアで戦って欲しいという気持ちがあるのだと思う。
- KUSHIDA選手
- 鷹木信悟選手
- ウィル・オスプレイ選手
- リコシェ選手
- ACH選手
- タイチ選手
- 獣神サンダー・ライガーさん
退団や引退、階級変更だけでもこれだけのレスラーが新日本ジュニアから離れている。
もう少し挙げるならヤング・バックスの2人。ドラゴン・リー選手、マーティー・スカル選手、バレッタ(階級変更を含めて)選手、チャッキー・T選手もだ。
逆にここ数年で加わったのはSHO選手(無差別級転向の可能性大)、YOH選手、石森太二選手、ロビー・イーグルス選手、DOUKI選手、マスター・ワト選手。
明らかに減った人数の方が多い。
また、新日本プロレスの入門テストの条件が180センチ以上になったことも大きい。
180センチを超えるジュニア戦士といえば田口隆祐選手だが、彼を除くとエル・ファンタズモ選手くらいしか上背のあるジュニアがいない現状である。
明らかに数年後の新日本プロレスジュニアを考えるとライバル不足が課題となる。
高橋ヒロム選手が抱えているモヤモヤの正体はそこにもあるのではないかと思うのだ。
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KENTAとの戦いで見えるもの
これは万が一の可能性だ。僕の推測に過ぎない。
KENTA選手、石井智宏選手と肌を合わせることで、高橋ヒロム選手の未来が変わる可能性があると僕は考えている。
結論から言うと、今回の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」をパスする可能性がある。
2021年11月13日12月15日にかけて「WORLD TAG LEAGUE 2021 & BEST OFTHE SUPER Jr.28」が開催される。
この大会に内藤哲也選手が出場できないとなった場合、SANADA選手のエントリーすらも危うい。
「IWGPヘビー級王者」はワールド・タッグリーグにエントリーしないのが通例だ(東京ドームでのタイトルマッチが確定しているため)。
つまり、鷹木信悟選手は今回の「ワールドタッグリーグ」を見送る可能性が高いのである。
つまり、ヘビー級のレスラーとバチバチに戦えるリーグ戦にエントリーできるチャンスが高橋ヒロム選手の前に現れたということなのだ。
KENTA選手はジュニアのウエイトながら、ヘビー級を主戦場としている。そんな彼と戦うことで、高橋ヒロム選手は何を感じるのだろうか。
さらに次の相手は石井智宏選手だ。
何も感じない訳がない。タイムボムの何かが爆発する可能性がある二連戦なのだ。
さらに本当にとんでもないことを考えるのであれば、ダブルエントリーだ。
肉体的に限界を超えるかもしれないが、こんなことができるのは高橋ヒロム選手を置いて他にいない。
高橋ヒロム選手は現在31歳。まさかこんなにも長期欠場が続くことになるとは本人が一番想像していなかったはずだ。
高橋ヒロム選手の夢はジュニアのまま東京ドームでIWGPヘビー級に挑戦し、IWGPヘビー級ベルトを巻くことである。
この夢を達成するためにはヘビー級の世界を知る必要がある。
高橋ヒロム選手がKENTA選手、石井智宏選手とぶつかり合うことでどんな景色を見るのか。
単なるスペシャルシングルマッチで終わらない戦いが迫ってきている。
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