BULLET CLUB VS THE ELITE。タマ・トンガ選手の主張に対する違和感と期待
2018年9月30日(日本時間 10月1日)に開催される新日本プロレスのアメリカ興行『FIGHTING SPIRIT UNLEASHED』。
この日のタイトルマッチは2つ。
- IWGPタッグ選手権試合
- IWGP USヘビー級選手権試合
第7試合のIWGPタッグ選手権試合ではヤングバックス(マット・ジャクソン選手、ニック・ジャクソン選手)がGOD(タマ・トンガ選手、タンガ・ロア選手)を迎え撃つ。
続く第8試合ではジュース・ロビンソン選手がCody選手に勝負を挑む。
第6試合以降のリングにはすべて『BULLET CLUB ELITE』の選手が上がる。まさに『BULLET CLUB』のための大会という見方もある中で、分裂後抗争を続ける『BULLET CLUB OG』のタマ・トンガ選手は声明を出した。
だが、僕は以前からタマ・トンガ選手が語る『BULLET CLUB』に違和感を感じていた。
彼の主張が僕のイマイチ心に刺さってこないのは何故なのか。その理由を探るために、新日本プロレスに生まれた“ガイジン”レスラーユニット『BULLET CLUB』と『THE ELITE』について改めて考えてみたい。
バレットクラブとは何か
元々『BULLET CLUB』は天空の貴公子の名を持ち、新日本プロレスのジュニアヘビー級で活躍したプリンス・デヴィット(現フィン・ベイラー)選手と海外遠征から戻ってきたバッドラック・ファレ選手によって生まれたユニットだ。
そこにカール・アンダーソン選手、タマ・トンガ選手が加わり、正式にバレットクラブはスタートした。
彼の胸中には「“ガイジン”レスラーが正当に評価されない」というフラストレーションがあった。その鬱憤を晴らすかのように、正統派のレスラーがラフファイトに転じていったのだ。
バレットクラブ結成後の『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア』でプリンス・プリンス・デヴィット選手は全勝優勝を成し遂げた。
しかし、それは全試合で介入ありという遺恨を残すものであった。
その後、プリンス・デヴィット選手は元タッグパートナーの田口隆祐選手と戦い、正義の心を取り戻すも敗北。バレットクラブからも追放されてしまう。
※この当時は真面目な田口隆祐選手である。
リーダー不在となったバレットクラブに現れたのは、アメリカのインディー団体で名を馳せるAJスタイルズ選手だった。
悪の道は続く
世界中のリングから集まったオファーの中から、新日本プロレスを選んだAJスタイルズ選手。彼が新リーダーとなったバレットクラブには、CHAOSから高橋裕二郎選手が加入した。“ガイジン”ヒールユニット初の日本人レスラー。新しい可能性を感じさせる移籍劇だった。
また、2014年にはGFWのジェフ・ジャレットが試合後の棚橋弘至選手をギターで強襲。AJスタイルズ期のバレットクラブはヒールユニットの道を継続して歩み続けた。だが、この時点から結成当初にあったものが薄れていったようにも思う。
決め手になったのが、ケニー・オメガ選手の加入だったと僕は考える。
ケニー・オメガ選手の躍進
ケニー・オメガ選手はAJスタイルズ選手を追放後、ジュニアヘビー級からヘビー級へ階級を上げた。
その夏のG1クライマックスに初出場し、優勝決定戦で、後藤洋央紀を破り初優勝を成し遂げた。記憶に新しい2017年のイッテヨンでは、オカダ・カズチカ選手と好勝負を繰り広げ、世界中にその名を轟かせるに至った。
その後も勢いは止まることなく、2017年のG1クライマックスも優勝決定戦に進出、20185年間のイッテヨンではクリス・ジェリコ選手と衝撃的な試合を魅せ、さらに日本、世界から注目を浴びる男となった。
また、2018年の2月には“恋人”飯伏幸太選手と再会を果たし、Cody選手との内紛も試合で決着を付けた。
その後に発生したのが『BULLET CLUB』の分裂劇だった。
論点の違和感
僕が違和感を感じたタマ・トンガ選手の主張は「『BULLET CLUB』らしいことをしていない」という部分だ。
FIGHTING SPIRIT UNLEASHED 今週末いよいよ開幕!!第7試合は、IWGPタッグ選手権試合 The Young Bucks vs Guerrillas of Destiny!!闘いを前に @Tama_Tonga & @TangaloaNJPW よりコメント!!日本時間10月1日(月)9時から配信開始!登録&視聴▷https://t.co/Tj7UBINesh #njpw #njpwworld pic.twitter.com/ZmRRZIjuro
— njpwworld (@njpwworld) September 27, 2018
前述したように、『BULLET CLUB』は“ガイジン”レスラーが評価されないことに対してのフラストレーションや鬱憤が、ラフファイトととして表面化されたものだった。
だが、ケニー・オメガ選手を筆頭に『THE ELITE』は“ガイジン”レスラーも日本人と同等以上の評価や人気を集める状況に変わった。
この結果から『THE ELITE』の面々はラフファイトや介入を行わなくなったのだと思う。存在したはずのフラストレーションがなくなってしまったためだ。
プリンス・デヴィット選手らが志した目的は、ケニー・オメガ選手たち『THE ELITE』が成し遂げてしまったのだ。
タマ・トンガ選手の本音
僕はこう思っている。タマ・トンガ選手ら『BULLET CLUB OG』の3選手は、シンプルにケニー・オメガ選手ら『THE ELITE』現在の『BULLET CLUB ELITE』が気に入らないだけではないかと。
石森太二選手は思想としては共感していないと僕は思う。世界で活躍するためにタマ・トンガ選手にコンタクトを取ったら、こんなところにたどり着いてしまったと感じているような印象すら受けるのだ。
『BULLET CLUB』らしさとは、介入や反則行為ではなく、もっと“ガイジン”レスラーを評価してくれ!という主張だったはず。
もっとシンプルに「オレがリーダーになりたい」と言えばよかった。だが、それすらCody選手に先を越されてしまった。
薄くなっていく自身の存在感を高めるべく、『BULLET CLUB OG』は結成されたが、G1クライマックスの介入、反則行為でも支持を集めることはできなかったように思う。
そしてもう一つの違和感が、何故ケニー・オメガ選手に直接対決を挑まないのか、という点だ。
タマ・トンガ選手はNEVER無差別6人タッグのベルトを戴冠し、今度はヤングバックスの持つ、IWGPヘビータッグのベルトに挑戦する。
徐々に段階を踏んでいると言えば聞こえはいいが、何か物足りなさも感じる。
タマのトンガ選手はG1クライマックス28で最下位タイなのだ。シングルマッチで結果を残せていない中で、今回のベルト挑戦は新日本プロレスがタマ・トンガ選手にある種の期待を持っていることも意味する。
G1クライマックスに未出場だったランス・アーチャー選手、デイビーボーイ・スミス・ジュニア選手のKESではなく、GODが挑戦者として指名されているのだから。
今回開催される『FIGHTING SPIRIT UNLEASHED』についてはこちらのランキングに入っている人気ブログでも言及されているので、ぜひチェックいただきたいところだ。
タマ・トンガ選手の「BULLET CLUB VS THE ELITE」という主張は正しい。だが、結成当初の目標に達してしまった『BULLET CLUB』には新しい“何か”が必要なのだ。
『BULLET CLUB OG』は、その答えを出さなければいけないのかもしれない。
BULLET CLUB OGのこれから
今回のIWGPタッグ選手権試合は、『BULLET CLUB OG』にとって、確実に負けることができない試合となる。ここで結果を残せなければ、『BULLET CLUB ELITE』との差は広がるばかりでなく、大将のケニー・オメガ選手に挑戦する道はかなり遠のいてしまうだろう。
確実に負けられない試合で『BULLET CLUB OG』は何を魅せるのか。はたまた『BULLET CLUB ELITE』が一蹴してしまうのか。その決着は間近に迫っている。
そして、僕はタマ・トンガ選手の本気と本音に期待したい。
人の心は言葉を言うだけでは動かせない。その人の心から出た本当の音色にこそ人の心は動くのものである。
野毛道場で育った新日本プロレスの生まれの“ガイジン”レスラー・タマ・トンガ選手はまだまだこれからだ。
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