『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』をスタートアップ企業に例えてみる【#1 内藤哲也 カリスマの条件】
『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(Los Ingobernables de Japón)』。
2015年に誕生した内藤哲也選手が率いる、今最も新日本プロレスで注目を集めるユニットだ。
新日本プロレスの大会に参加してみると、会場全体が『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』のTシャツやキャップに包まれている。
中邑真輔選手、AJスタイルズ選手の離脱以降、グッズ面の売上面でも新日本プロレスを支えたのは紛れもない事実である。
『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』は結成以降、急速な速度で支持を集めた。
だが、急速に話題を振りまき続けた反動か2018年はこれまでの年と比較して話題が少ないようにも思う。その理由とは何か。
『ロス・ベルナブレス・デ・ハポン』をスタートアップ企業に置き換えてみると少しだけ合点がいったので、連載形式でまとめてみたいと思う。
まずは初回【#1 内藤哲也 カリスマの条件】をお届けする。
カリスマの条件
スティーブ・ジョブズ(Apple 創設者)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック CEO)、イーロン・マスク(テスラ、スペースX CEO)。
彼らもはじめはゼロからのスタートだった。※イーロン・マスクはPayPalでの実績があるが。
彼らには類稀なるビジョンと周囲を惹きつけてやまないカリスマ性があった。その結果、賛同者が集まり多くの功績を残している。つまり、組織には優秀なリーダーが必要不可欠ということだ。
では、“制御不能のカリスマ”という二つ名を持つ、内藤哲也選手はどうだろう。いくつかの文献によると、以下の4点がカリスマと呼ばれる人物が秀でている能力だという。
- 共感能力
- 傾聴力
- コンフィデンス(自信)
- 自身が描く未来を物語として伝える力
連載の初回となる#1では、内藤哲也選手のカリスマ性にフォーカスを当てていきたい。
相手に共感する力、共感される力
相手の発言や行動に対して、どれだけ共感性を持てるか。ある意味で、内藤哲也選手に周囲の人間が思わず共感してしまうポイントだと考えてもいいかもしれない。
内藤哲也選手は才能に富んだエリートに見えつつ、逆境や苦悩も多い。
膝の怪我にも悩まされ続けている。新日本プロレスの入団テスト受験が1年以上伸びた。また、2012年には長期欠場も経験した。現在も両膝にはガチガチのテーピングが巻かれている。
さらには前述したようにベビー・フェイスであるにも関わらず、ブーイングも浴びた。この経験が全て内藤哲也選手の個性になり、共感性を生む糧となっている。
5人の絆、つながり。欠場中の仲間がいれば、待っていると声明を出す。
「俺たちはここ(ハート)でつながっているから」。これは仲間からの共感とお客様からの羨望の目、両方を実現するアクションだ。
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対戦相手への傾聴力
内藤哲也選手はもともと持っていたプロレスの上手さに加えて、言葉で今の地位を手に入れた。
その言葉を聴いていると、対戦相手にも言葉を求めていることに気付かされる。
石井智宏選手や同じ『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』のSANADA選手にも発信することへの重要性を問い続けた。
内藤哲也選手は、相手の話を聴いた上で自分のアクションを決める柔軟性を持ち合わせている。鈴木みのる選手と行われた『DESTRUCTION』シリーズのスペシャルシングルマッチでも、メッセージを求め続けた。その物言いはタイチ選手、後藤洋央紀選手にまで波及した。
好き勝手に相手のことを言うのもプロレスとしてはあり。ただ、内藤哲也選手はそこに相手の言葉を求める。相手の話に耳を傾ける。この姿勢をリング内外で実践している。
完全な自信を取り戻したG1クライマックス27
内藤哲也選手は2017年のG1クライマックス27で4年ぶり2度目の優勝を飾った。
「あのときは、背伸びをしていて、正直なことを言えませんでした。ただし!今の俺なら、自身を持って、言える。この新日本プロレスの主役は...俺だ」
スターダスト・ジーニアスと呼ばれていた当時、内藤哲也選手の前には棚橋弘至選手の背中があった。
「棚橋弘至を(エースの座から)引きずり下ろす」
これが武藤敬司選手に憧れ、棚橋弘至選手の試合を見て、“新日本プロレスのレスラー”になることを決めた内藤哲也選手のモチベーションだった。
- 新日本プロレスのレスラーになる
- 20代でIWGPヘビー級チャンピオンになる
- 東京ドームのメインイベントに立つ
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1つ目の夢はアニマル浜口道場を経て、叶えることができた。
ただ、その他の夢はオカダ・カズチカ選手に先を越されてしまった。組織で例えたら、新卒時代に面倒を見ていた後輩にあっという間に先を越されたようなものだ。
次期エースと呼ばれ続け、“次期”がいつまでも付き纏う自分。棚橋弘至選手からIWGPベルトを奪い取り、G1クライマックスでは初出場・初優勝を成し遂げ、スターダムの階段を登り続けるオカダ・カズチカ選手。そこにはジェラシーを超えたものがあったに違いない。
内藤哲也選手はこうした逆境を乗り越え、自分の居場所・相棒(パレハ)たちを見つけた。その結果、G1クライマックスで「新日本の主役」と宣言した。
自分が主役と言わなくなった内藤哲也に、ファンは主役になってくれと思い続けてきた。
本当の意味での主役になった瞬間に彼の自信は完全回復したのだと思う。
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自身が描く未来を物語として伝える力
4つ目は自分のビジョンを相手(1:n)で届ける力である。覚えているだろうか。内藤哲也選手がG1クライマックス25で棚橋弘至選手を破ったときのことを。そう、デスティーノが初披露された試合だ。
今と同じマイクパフォーマンス。語尾こそ違うものの、今行えば大合唱間違いなしの瞬間。だが、会場は盛り上がらなかった。
この時の内藤哲也選手はまだ、自身が思い描くビジョンや未来を“お客様”に示せていなかったのだ。
では、いつから内藤哲也選手に対する風向きが変わったのだろうか。僕はいわゆる“2億円プロジェクト”の話からである。
中邑真輔選手、AJスタイルズ選手の穴を埋めるため、徹底的にオカダ・カズチカ選手をスターにするためのプロジェクトには、“2億円”レベルのプランが存在していたという。
内藤哲也選手は木谷オーナー“2億円”発言を拾い、拡大解釈した。そして、団体である新日本プロレスを遮断した。
俺たちがどんなに頑張っても、オカダがトップにいる。その決定に誰が納得するのか、と。全レスラー、観客がなんとなく感じていた違和感を口にした。
最終的に木谷オーナーは、内藤哲也選手からのオファーを受ける形で、両国国技館に姿を見てを現した。気づけば“2億円プロジェクト”は有耶無耶になっていた。
この当時から内藤哲也選手はこう言っている「皆さまに、見たことのない景色をお見せしますよ」と。
見たことのない景色を見せる
内藤哲也選手は『ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン』結成時、何度も「見たことのない景色を見せる」と、発言してきた。
「見たことない景色とは何なのか。その答えは、もちろん....?」と続くわけだが、“今”の新日本プロレスで最もビジョナリーな動きを見せ続けてきたことは確かだ。
まず、相棒(パレハ)が集まってくる瞬間、全てがドラマチックである。
「相棒(パレハ)」を連れてくると提言し、メキシカンを想像させるも実際に連れてきたのは、怪奇派レスラーに転身したヤングライオン・渡辺高章選手だった。
負傷欠場明けの当日ドタキャンとなったBUSHI選手が漆黒のデスマスクとして顔見せ。
内藤哲也選手が、新日本プロレスで最も権威のあるベルトであるIWGPヘビー級ベルトに挑戦した際、切り札として用意していたのが真田聖也選手、いやSANADA選手の介入行為だった。既にEVIL選手、BUSHI選手を蹴散らしたオカダ・カズチカ選手を後ろから強襲したことで、大ダメージを与えることに成功。内藤哲也選手はIWGPヘビー級ベルトを初戴冠した。
過去最長となる海外遠征から凱旋帰国を果たした髙橋ヒロム選手が「1番楽しめる場所」として選んだのが、『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』。そのユニットには、髙橋ヒロム選手にプロレスの手をほどきをした内藤哲也選手と、自身の壮行試合で対角線に立ち、試合後には涙を流した渡辺高章選手(EVIL選手)がいた。
本隊でも、CHAOSでもBULLET CLUBでもない。髙橋ヒロム選手が最も輝けるユニットは『ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン』だったはずだ。
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次に、メンバーそれぞれが新日本プロレスにこれまでなかった魅力を発揮した。さらには、5人が集まって入場する姿は戦隊ヒーローを彷彿とさせるようなプレミアム感すらあった。
広島大会で5人が勢揃いする際に、必ず会場限定の広島カープ×ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのTシャツを着て内藤哲也選手は入場する。試合が面白いのはプロレスラーとしての前提。内藤哲也選手が魅せてきた世界はユニットに物語性を持たせ、入場や退場にもドラマを感じさせる世界だった。もちろん、バックステージでのコメントにも余念がない。
見たことのない景色の正体
見たことのない景色とは、彼が発信する言葉や動きに対して、「ファンたちが勝手に妄想するという贅沢な時間を提供すること」だと僕は思っている。
また、自身のTwitterはスターダスト・ジーニアス時代ほど更新しないが、Webの東京スポーツにてファミレスに岡本祐介記者を呼び、定期的に自身の意見を発信している。話題を常に提供するこもにも余念はない。
“制御不能のカリスマ”の裏側
“制御不能のカリスマ”と呼ばれる内藤哲也選手だけに、カリスマに代表されるスキルが相対的に高いことが分かる。
“カリスマ”として開花した内藤哲也選手が率いる『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』は、結成後大きな飛躍を果たしてきた。
その背景には、メンバーをお客様を惹きつけてやまない内藤哲也選手のカリスマ性があったためだと思う。
企業、ユニットの創設者として最も必要な人を惹きつける力、引き寄せる力。自分1人ではできないことを実現するために、仲間の存在がある。そのために、1人から5人までは急速な成長を見せた。
やっと見つけた自分の居場所が成長していくのは、本人たちにとっても楽しい時間だったはずだ。ただし、2018年9月現在の内藤哲也選手は一歩踏み出す勇気について説いている。『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』をもっといい形にすると。
今後の『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』についてはこちらのランキングに入っている人気ブログでも言及されているので、ぜひチェックいただきたいところである。
何故、変化しなければならないのか。ここについては【#2 “制御不能”の進化と停滞】で語りたいと思う。
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