新日本プロレスは“雑”になったのか?『ワールドタッグリーグ2018』に見る3つの疑問

2018年11月8日、新日本プロレスが『ワールドタッグリーグ2018』の出場選手を発表した。

参戦タッグは14チーム。出場選手は以下の通りだ。

  • 真壁刀義選手&トーア・ヘナーレ
  • 天山広吉選手&小島聡選手
  • 永田裕志選手&中西学選手
  • ジュース・ロビンソン選手&デビッド・フィンレー選手
  • マイケル・エルガン選手&ジェフ・コブ選手
  • 海野翔太選手&吉田綾斗選手
  • 石井智宏選手&矢野通選手
  • バレッタ選手&チャッキー・T選手
  • ハングマン・ペイジ&高橋裕二郎
  • タマ・トンガ選手&タンガ・ロア選手
  • 鈴木みのる選手&飯塚高史選手
  • タイチ選手&ザック・セイバーJr.選手
  • ランス・アーチャー選手&デイビーボーイ・スミスJr.選手
  • EVIL選手&SANADA選手

サプライズ参戦となるのは海野翔太選手、吉田綾斗選手の2名。新日本プロレスのヤングライオンとKAIENTAI DOJOのホープが歴史と伝統あるタッグリーグに殴り込む形となる。また、この2人はライバルという関係性もあり、相手に負けたくないというハイテンションや誤爆など見どころのある試合を展開してくれる予感がある。

期待は十分。1リーグ制となったことにより、試合数も従来の倍以上となるため、優勝争いも熾烈な争いとなるだろう。

ただし、僕の頭には3つの疑問が浮かんだ。 果たして新日本プロレスは新日本プロレスは“雑”になったのか?その根幹について考えてみたい。

 

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【1】イッテンヨン出場決定者のエントリーはなし

2016年、2017年。内藤哲也選手は『ワールドタッグリーグ』に対して、苦言を呈していた。それは、東京ドームの出場権利が決定した選手が出場しない点にある。

今回も例に漏れず東京ドームへの出場が決定したケニー・オメガ選手、棚橋弘至選手、内藤哲也選手、オカダ・カズチカ選手、ジェイ・ホワイト選手が出場していない。

また、バットラック・ファレ選手、飯伏幸太選手の出場もなし。バットラック・ファレ選手はXとの参戦も予想されていただけに、ファンからすると残念な結果とも言える。

そして、飯伏幸太選手についてもチェーズ・オーウェンズ選手とのタッグも様になっていただけに、『ワールドタッグリーグ2018』での化学反応を期待していたが、こちらも選考漏れとなった。

イッテンヨンに参加できる選手。すなわち、新日本プロレスのトップ選手がいないタッグリーグ。前回大会はEVIL選手&SANADA選手の躍動により大きな盛り上がりを見せたが、今回はどんな結果になるのだろうか。

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【2】シングルベルト保持者のリーグ参加もなし

ケニー・オメガ選手、クリス・ジェリコ選手、Cody選手の参戦はなし。唯一の日本人シングルベルト保持者である後藤洋央紀選手も参戦していない今回の『ワールドタッグリーグ2018』。

後藤洋央紀選手のみシリーズに参戦はしているものの、未だ東京ドームでの挑戦者が決定していない状況である。

また、一点気になることがある。イッテンヨンに出場が決まっていない。ベルトも持っていない飯伏幸太戦が新しいキービジュアルに姿を現していることである。

タッグリーグの盛り上がり

シングルで結果を残しているレスラーはタッグマッチの祭典に参戦しないというのは、タッグ戦線の盛り上がりにブレーキを掛けることになってしまう可能性もある。

シングルとタッグ。双方が盛り上がることで新日本プロレスの価値が更に向上する。世界に打って出るためには、タッグ側の盛り上がりも必須とも言える状況で、『ゴールデン☆ラヴァーズ』は不参加。棚橋弘至選手&オカダ・カズチカ選手も不参加という大会となった。また、内藤哲也選手も参戦していない。ベルトを巻いていない現状でも日本人トップ3が参戦しない大会だ。

だが、この状況だからこそのチャンスがある。ヘビーのタッグは面白い。この価値を見せるける選手たちが現れることで、更に新日本プロレスの価値を高めることができるのだ。

 

【3】なぜ、2リーグから1リーグ制へ変更となったのか

 今回から『ワールドタッグリーグ2018』は、従来の2リーグ制から1リーグ制へと変更となった。なぜ、変更しなければいけなかったのか。その理由について考えてみると、G1クライマックス28が思いついた。

2018年8月10〜12日に行われた日本武道館3連戦。その観衆数を並べてみたい。

  • 6180人(8月10日)
  • 12023人(8月11日)
  • 12112人(8月12日)

確かに10日は金曜日であり、休日ではないというハンデがあった。だが、大会自体の盛り上がりもAブロック、Bブロックで温度差があったことも事実だろう。

石井智宏選手、ケニー・オメガ選手、飯伏幸太選手、SANADA選手、矢野通選手を中心に好試合、目の離せないを連発するBブロックはG1クライマックス28を大きく盛り上げた。

この結果を受けて、1リーグ制とすることで、ここまで動員数に差が生まれることはなくなる。この判断が今回の1リーグ制につながったように思う。

高まり続けるファンからの期待

ここからは、新日本プロレスは雑になってしまったのか?という点について語りたい。新日本プロレスひいてはプロレスラーの立ち位置は大きく変わった。ブシロード買収後、新日本プロレスは所属レスラー一人一人のブランド化を推奨した。個人によるSNSや個人ブログの運用はその代表的な例だろう。

従来はリングやバックステージ、雑誌、交流会でのみだったプロレスラーのメッセージが、いつでもどこでも閲覧できるようになった。

プロレスラーとファンの距離が縮まる。これは素晴らしいことだと思う。

ただし、その距離感を上手く作ることは非常に難しいのだ。

テキストは対面以上に、伝えたいはずの内容がわん曲して伝達されてしまう。

「そんなつもりで言ってない」が、通用しないのがSNSの難しさである。

勿論、SNSを上手く活用している選手も大勢いる。そして、SNSでの発信を最低限に留め、会いに行けるという機会を作ることで、ブランド価値を上げている矢野通選手のような選手もいる。 

自己PRの枠が広がることで、これまでにはなかった支持を得ることができる。

ただし、プロレスラーはリングの上が全てなのだ。

“雑”なのか、“雑に”感じてしまうか

内藤哲也選手は記者会見にてこう語った。

まず、なぜこの場にクリス・ジェリコがいないのか。今日、東京ドーム大会に関する記者会見が行なわれることは、事前に決まってたわけでしょ? 新日本プロレスの選手には11月5日のスケジュールは空けといてくださいと事前に言われましたよ? しかも全選手にね。なら、同じように、クリス・ジェリコの11月5日のスケジュールも押さえるべきでしょう。大阪大会でクリス・ジェリコが勝ったとしても負けたとしても、一応今日のスケジュールを押さえるべきじゃなかったんですか?

なんか、最近の新日本プロレスは、そのへんすっごく雑ですよね。たとえば、先シリーズのシリーズ名、覚えてますか? 覚えてますか? 『Road to POWER STRUGGLE』。その『POWER STRUGGLE』のセミファイナルに出場する二人の選手、メインイベントに出場する二人の選手が、シリーズ全戦不参加。いったいそれなのに、どこが『Road to POWER STRUGGLE』だったのか? どこが『Road to POWER STRUGGLE』だったんですか? しかも大会ポスターに載っている選手の名前が、当日の対戦カードに入ってないことが多々あったんですよ。そのへん、最近の新日本プロレスはどうなってるんですかね? 新日本プロレスが世界に目を向けている、それはすばらしいことですよ。でも、もっと身近なことや小さなことを丁寧に伝えることも、俺は大事なんじゃないかなって思いますよ……。

引用:新日本プロレス公式

論点は2つ。全選手へ通達したにも関わらず、“スーパースター”クリス・ジェリコ選手のスケジュールを抑えることに失敗あるいはそもそも抑えていなかったこと。

次にシリーズのRoad toという巡業が大阪へとつながっていなかった点だ。

以前、タイチ選手が実況席で語っていた通り、『九州三国志 presents POWERSTRUGGLE ~SUPER Jr. TAG LEAGUE2018~』にはヘビー級のシングルベルト保持者が1名も参加していなかった。

『スーパージュニア・タッグリーグ2018』の盛り上がり、オカダ・カズチカ選手とジェイ・ホワイト選手の抗争により、目線が逸れていたが、現在の新日本プロレスを象徴する選手が誰一人参戦していなかったのだ。

選手層が厚い。チャンピオンなしでも盛り上がる。こう言ってしまうと、嬉しい事象でもある。だが、スポット参戦の選手に新日本プロレスの至宝が渡っている現実は、他のプロレスラーにとっては面白くないことだろう。

そろそろ本題に入ろう。新日本プロレスは“雑”になってしまっているのか?ということだ。

雑に見えてしまう現実

前述したように、現在の新日本プロレスはプロレスラー自身でのブランド化が成功し、それぞれが固定ファンを付けた。

そして、新日本プロレスとしては“にわか”ファンを推奨している。

“にわか”ファンの定義付けについて、ここでは新規のファンを指すものだとここでは考えたい。

新規ファンは非常に重要な存在だ。彼らの存在がなければ、全てのコンテンツは広がっていかない。新規ファンが定着することで、固定ファンとなる。

新規ファンから固定ファンへ。この流れをどう作るのか。これが団体、プロレスラーが一丸となって考える点である。

その目線で見てみると、クリス・ジェリコ選手が記者会見に参加しなかったこと。大阪大会に出場した多くの選手が巡業に参戦していなかったことは確かに“雑”という見方もできる。

一方で、新日本プロレスには新日本プロレスの考えもある。

 

最善のカードを組んでいる

『ワールドタッグリーグ2018』にシングルベルト保持者が参戦しない。イッテンヨン出場者も出場しない。これは紛れもない事実だ。

ただし、新日本プロレスはお客様を盛り上げるだけのカードを切ってきた。オカダ・カズチカ選手&棚橋弘至選手、つまりCHAOSと本隊の連合チーム編成だ。

新日本プロレスに早くも“天気雨”が降る。こんなにも早くこのタッグチームを見ることができると思わなかった。

また、CHAOSと本隊が連合チームを編成することで、ある考えも浮かんだ。

Y・T・R V・T・Rに革命か?

CHAOSの実質的権力者である矢野通選手がいくら1対1という話でもオカダ・カズチカ選手が本隊の選手とタッグを組むことをそうやすやすと了承するだろうか。

以前、桜庭和志選手が鈴木みのる選手と抗争を続けている際、矢野通選手は力を貸す代償として、DVD出演のオファーを行った。今回も棚橋弘至選手にDVD出演のオファーが飛ぶのではないだろうか。

CHAOSVS新日本本隊。次回のDVDからも目が離せない展開となった。

新日本プロレスは雑になっていない

現在、新日本プロレスの公式HPに掲載されているプロレスラーの人数は81人も及ぶ。前述した通り、ファンはそれぞれに推しの選手を持っている。推しの選手が出場しなければ「納得がいかない」という声が上がっても不思議ではないし、当然だと思う。

ただし、会社としては選手を休ませなくてもならない。人気レスラーはメキシコ、アメリカ、イギリスなど世界各国のリングに上がる機会も多い。怪我をしてしまっては元も子もない。その点を踏まえてカードを決めているのだ。

僕の結論としては、新日本プロレスは雑になっていないと思う。ただし、雑に見えても仕方がないという状況に足を踏み入れているとも考えられるのだ。

 

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