なぜ、棚橋弘至は2018年度プロレス大賞MVPを受賞できたのか

新日本プロレスの棚橋弘至選手が4年振り4度目のプロレス大賞MVPを受賞した。なぜ、棚橋弘至選手は玉座に返り咲くことができたのか。その理由について考えてみたい。

2018年12月13日、早朝6時。いよいよ解禁となった東京スポーツ社が制定する2018年のプロレス大賞。

各マスコミから配信された記事を読み合わせていくと様々なことが見えてきた。

このブログでは『NJPW FUN』のタイトル通り、新日本プロレス所属の選手にフォーカスした内容でお届けする。

まず、MVPの候補はオカダ・カズチカ選手、ケニーてオメガ選手、棚橋弘至選手の3人だったこと。

次に内藤哲也選手が“技能賞”を受賞したことについてである。

最後に、平成最後のメモリアルイヤーに棚橋弘至選手が受賞した意味について考えてみたい。

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納得の3人がノミネート

個人的に2018年度のプロレス大賞MVPを予想すると、オカダ・カズチカ選手、棚橋弘至選手の2人の顔が浮かんできた。

圧倒的な試合内容、結果、リング外でのパフォーマンス、言動。そして、プロレス業界全体として、新しいファンを獲得するための動き。

それぞれの選手が高い価値を発揮した1年だったように思う。

V12を達成→バルーンお兄さんへ

オカダ・カズチカ選手は自身がストップした棚橋弘至選手が持つ『IWGPヘビー級王座』連続防衛記録を更新。

V12。防衛期間でも720日という最長記録を樹立した。

残念ながら『G1クライマックス28』を目前に控えた6月、大阪で『IWGPヘビー級ベルト』を落とす結果となったが、丸腰のレインメーカーはこれまでとは違う輝きを放ち始めた。

金髪やアッシュに染め上げていた髪は赤やオレンジへ。入場テーマ曲のアレンジも変わった。イントロからの転調が印象的な曲調。はじめて聴いた時は機器の故障か?と思うほどのリミックスは、これからのオカダ・カズチカ選手を暗示させるものとなっていた。

バルーンを3つ手にしての入場。タイトルマッチ以外はガウンを着用しない。そして、「金の雨が降るぞ!」とも言わない。

「レインメーカー2.0」のキャラクターは「完全無血の絶対王者」時代とは異なり、等身大の彼を彷彿とさせるのだ。

ヤンチャで無邪気。悪戯っぽい笑顔。ただ、相手の長所を引き出す試合巧者振りは相変わらずである。

ベルトがあっても無くても輝くことができることを証明したオカダ・カズチカ選手は惜しくもMVPを獲得することはできなかった。

だが、2014年以降、4年連続のベストバウト賞を受賞することに成功したという見方もある。

余談だが、2012年、2013年、2015年はMVPを受賞している。

今回はケニー・オメガ選手と64分に及ぶ激闘がノミネートされる形となったが、2人の対決は2年連続での受賞となるのだ。

オカダ・カズチカ選手はメディアで「殿堂入り」を要求したという声もあり、これからの活躍にも期待が集まるところだ。

 

“制御不能のカリスマ”は技能賞を受賞

2016年、2017年プロレス大賞MVPを獲得した内藤哲也選手は技能賞を受賞した。

『週刊プロレス』の誌面でも「今年は厳しい」と珍しく弱気な言葉を残していた“制御不能男”は、かつて中邑真輔選手や本間朋晃選手、ケニー・オメガ選手が選出された技能賞を獲得すした。

『ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン』 結成後、はじめてMVPを逃す結果となったが、ある意味で仕方がないことだとも言える。

内藤哲也選手が自身で作り上げてきたハードルが高すぎるのである。新日本プロレスで最も注目を浴びるという意味では変わっていない。だが、新しい景色を魅せたという意味では、インパクトに欠ける点があったことも事実としてある。

ただし、“6人目のパレハ”として鷹木信悟選手をスカウトするなど、その“技能”は折り紙付きである。

また、「プロフェッショナル 仕事の流儀」にプロレスラーとして初出演を果たすなど、プロレス界を飛び越す活躍に今後も期待したい。

例えば、ドキュメンタリー映画『2019年のロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』などは面白いかもしれない。想像するだけで、特典も楽しみである。

復活のエース

2017年のイッテンヨンで内藤哲也選手に敗れた瞬間、棚橋弘至選手の時代は終わったと思った。

だが、棚橋弘至選手は諦めなかった。『NEVER無差別級6人タッグ』を経て、『IWGPインターコンチネンタルベルト』を戴冠。内藤哲也選手にリベンジを果たすも欠場が目立つようになり、怪我との付き合い方が重要になる2017年を過ごした。

実は、2014年のMVP受賞以降、MVP意外の賞でもノミネートはなし。エースと呼ばれる新日本プロレスの顔としては、寂しい結果が続いていた。

そして、2018年棚橋弘至選手は新日本プロレスの中心に返り咲くだけでなく、プロレス大賞MVPにも還ってきた。

では、本題に入ろう。棚橋弘至選手はなぜ、プロレス大賞MVPを受賞できたのだろうか。

 

苦しんだ前半

2018年の上半期。棚橋弘至選手は例年通り、プロレス大賞MVPとは縁遠い存在だったように思う。

イッテンヨンで凱旋帰国を果たしたジェイ・ホワイト選手を迎え撃つも不完全燃焼に終わった。これは自身のPodcastでも、その試合を反省するような言葉を発している。

『ニュージャパン・カップ』では準優勝という好成績を納め、『IWGPヘビー級ベルト』のV12記録を懸けてオカダ・カズチカ選手へと挑戦した。が、敗北した。

『IWGPインターコンチネンタルベルト』も持たず、『IWGPヘビー級ベルト』も遠のいた。だが、コンディションの良し悪しというレベルを超えた、背水の陣ならではの強さ。プロレスラーとしてもう一つ上のレベルに上り詰めるエース。

そう、歴戦のダメージにより影響が大きかった身体のキレが徐々に戻ってきただけでなく、より一層気持ちで伝える試合を実現できるようになってきたのだ。

全力で生きる技術

全力で生きる技術

 

歯車が噛み合った後半

『G1クライマックス』優勝。オカダ・カズチカ選手からの権利書防衛。主演映画『パパはわるものチャンピオン』封切り。『情熱大陸』出演。毎日のようにテレビで棚橋弘至選手を見た。

全てが棚橋弘至選手のためにあるような2018年の後半戦だった。極めつけは、『BULLET CLUB』のジェイ・ホワイト選手に蹂躙されていたオカダ・カズチカ選手を救出したことにより、ドリームタッグを結成したことだろう。

メディアでもリングだけではなく、プロレス界を飛び越えた活躍が評価されたと記載があった。だが、僕はもう一つ受賞理由あると思うのだ。

2018年の棚橋弘至選手は生き方そのもので“プロレス”をしていた、と。

1年間の生き様でプロレスを魅せた

プロレスとはリングの上で生き様を表現するものである。だが、リングの上だけが“プロレス”をしている場所だとは限らない。

これは柴田勝頼選手の動画でハッキリと分かったことである。プロレスを教えること、懸命に生きることもプロレスなのだ、と。

www.youtube.com

この見方で棚橋弘至選手を見てみると、前半戦はもがき苦しみながらも結果を出すための努力を重ね、後半戦でその全てが爆発したことが分かる。

僕が2018年、圧倒的に涙を流したのは『G1クライマックス28』で棚橋弘至選手が優勝した際に、セコンドに付いてきた柴田勝頼選手が肩車をしたシーンである。

新日本プロレスでの肩車と言えば、中邑真輔選手の壮行試合以来という印象すら受ける。

「勝った、負けた」を超えた感動、新日本プロレスの中心へ帰還。それを一年通じて表現した棚橋弘至選手はまさに2018年のプロレス大賞に相応しいと思う。

スマートに見えて大事なシーンで言葉を噛む。プロレス巧者に見えて未だに未完成。そんなギャップも魅力的だ。

今朝、棚橋弘至選手の受賞を知って改めて思った。

「面白いっしょ?プロレス」。

僕はこう答えたい「最高に面白いです!」と。

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