メイ社長のマーティングスキルに新日本プロレスの未来を見た

敏腕マーケターが魅せた今回のゲリラ調印式。僕はメイ社長のマーティングスキルに新日本プロレスの未来を見た。

2018年の大晦日。新日本プロレスの公式Twitterで突如ある発表が行われた。その内容は、渋谷109前からイッテンヨン『レッスルキングダム13』のメインイベントで『IWGPヘビー級ベルト』を懸けて戦うケニー・オメガ選手と棚橋弘至選手が公開調印式を行うというもの。

運命のステージにはハロルド・ジョージ・メイ(以下、メイ社長)とケニー・オメガ選手、棚橋弘至選手そして、リングアナウンサーの阿部誠さんが登壇。約20分に亘り平成最後の大晦日で賑わう渋谷でゲリライベントを決行した。

例年、1月3日に行っている調印式を年内に前倒し。また、イベント開始10分前まで告知はなし。

直前に木谷高明オーナーが渋谷に居ることをツイートしていたが、それ以外では全く情報を明かさないとゲリラ戦法が取られた。

新日本プロレスのメイ社長は就任以前、タカラトミーでCEOを務め、日本コカ・コーラでは副社長兼マーケティング本部長として手腕を奮ってきた人物である。

残り2日に迫った『バンドリ! ガールズバンドパーティ! presents WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム』。数々の名勝負が繰り広げられる以前からキャッチコピーである「プロレス!冬フェス!イッテンヨン!!」の通り、フェスははじまっているのだ。

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天才マーケター

今回の一件の発案者はおそらくメイ社長だろう。

従来、調印式の立会人を担ってきたのは菅林会長である。

カウントダウンを祝う若者が集う渋谷。この中でプロレスファンは一体何人いるのだろうか。サプライズ的に行うイベントに分かりやすいアイコン。後々ビジネス誌等で取り上げられることを見越して、彼自身が姿を現したに違いない。

そして、コカコーラなどでマーティグ室長を務めた彼はCEO就任後初めて、所属レスラーと同じ場に立った。

多くを語らなかったとしてもフィクサーとしてのゲリラ戦法は様々なインパクトを与えたと思う。

新日本プロレスはV字回復以降、一般誌に取り上げられる機会が増えた。

今回のゲリライベントも新聞社にて報じられている。

次に待っているのは、取材でこのゲリライベントの背景について語ること。

Webでのプロモーションが一般的になってきた現在でも、リアルのインパクトは圧倒的なのだ。

 

事前告知なしのメリット

前日や当日の朝に渋谷109前で公開調印式を行うという発表をしていれば、東京在住のプロレスファンは棚橋弘至選手、ケニー・オメガ選手を一目見るために、足を運んだだろう。

だが、新日本プロレスは既存のファン層以外にリーチすることを考えている。

既に各会場のチケットは概ね完売している状況である。だが、新規ファンを獲得しなければまた暗黒期を迎える可能性は常にある。

新日本プロレスはこれから投資のスタンスで事業戦略を組んでいくだろう。

既存ファンを蔑ろにしているわけではない。海外戦略のみに傾倒しているわけでもない。

国内外でプロレスという文化を発信することが、新日本プロレスの歩む道なりなのである。

 

リアルな場の有効活用

新日本プロレスはイッテンヨン『レッスルキングダム13』に向けて、山手線ジャックを行なっていた。

広告費の詳細は各所のデータを見ていただきたいが、中々の広告予算を投下することには変わりない。

2017年の渋谷にはカウントダウンで6万7000人が集まったと報じられた。そして、2018年は約10万人が訪れたらしい。

パリピが集まる騒がしい場。お祭りの参加者に向けゲリライベントを開催するという発想を僕は全く持ち合わせていなかった。

渋谷区に申請、収入印紙代、映像配信のみのコストで開催は可能だ。後は選手とスタッフの稼働費のみ。破格の金額で自社のPRを行うことができるわけだ。

宣伝やPRはどこかでなんとなく、情報に触れさせることが重要である。

思い出して欲しい。初めてプロレスに触れた時のことを。家族や友人、知人から紹介されたり、テレビで流れていたものをたまたま見たがスタンダードだろう。

ここからファンになるまでには更に時間が掛かる。だが、心に情報の引っかかりを作ることが大切なのだ。

今回のゲリライベントを通じて、イッテンヨン『レッスルキングダム13』 の来場者に大きな変動は間違いないだろう。

ただし、どの企業も行なっていなかったことに着手したという功績は大きい。

メイ社長を中心とした新日本プロレスのマーケターたちはファーストペンギンとしての役割を全うした。

おそらく2020年の渋谷カウントダウンでは、こうした事例が増えるに違いないだろう。

新日本プロレスのビジネス戦略から各企業は学ぶことが多い、という記事が以前にも出ていたが、この新任社長はまだまだ底がしれない。

更なるマーケティング施策で新日本プロレスを日本、世界で広げていくに違いない。

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