メイ社長の新日本プロレスへ向けた“社内報”にリーダーの強さを学ぶ

メイ社長の新日本プロレスへ向けた“コラムと言う名の社内報”。僕はここにリーダーとしての強さを学んだ。

「メイ社長、腹に何かを抱えているな」

新日本プロレスの公式スマホサイトで無料公開された「第36回 今の心境を申し上げますと…」に目を通してみると、彼の胸中に興味が沸いてきた。

その内容はセンシティブな部分に触れるというもの。言葉のチョイス一つにもとても熟考された印象を受けた。

厳しい言葉になってしまうようなブロックにはウィットに富んだユーモアを盛り込んでいる。

マーケティングの最前線で手腕を発揮してきただけに、行動心理学を用いた思考の誘導が染み付いているのだろう。

読んだ人の気持ちを前向きにさせる。そんな気持ちがとても伝わってきた。

だが、企業のトップがこの内容を公式サイトで発信するのはそう簡単なことではない。

新日本プロレスの最高経営責任者はメイ社長である。そんな彼が敢えてこのタイミングでこの内容を発信した理由とは何なのだろうか。コラム内に込められた3つの要素を振り返りつつ、今回の意図を紐解いていきたい。

また、文末では「検索」のデータで2019年のイッテンヨン『レッスルキングダム13』を振り返ってみたいと思う。

 

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ハロルドの部屋にあったメッセージ

まずは、今回のコラムで新日本プロレスのCEOであるメイ社長が何を伝えたかったのか?という点について要素分解したい。

まずは、「冗談でも新日本プロレスは大丈夫か?という声を上げて欲しくない」ということ。

次に、「選手の流動性」について。最後に、“ガイジン”社長の海外戦略についてだ。

ここからはこの3つの視点を細かく見ていこう。

新日本プロレスは大丈夫なのか

まず、「新日本プロレスは大丈夫」このメッセージは誰に向けられたものなのだろうか。

僕はコラムを目にする新日本プロレスのファン以上にスタッフやレスラーに向けられた内容だと感じた。言葉の裏を紐解いてみるとこうなる。

「君たちのような優秀なスタッフや最高のレスラーたちがいるのに、世間は何を言っているのだろう。クレバーな社員。日本、世界を代表するプロレスラーが集まっているのは僕が一番よく知っているし、そう感じている。だからこそ、僕はこの新日本プロレスのCEOというオファーを受けたんだ。今、一部で起こっているSNSでの風潮被害などは全く気に止めて欲しくない」

そう、新日本プロレスは大丈夫なのである。

言葉を選ばずに言えば、「一部の選手が抜けた程度で、今の新日本プロレスは揺らがないですよ?」という自信の裏返しだ。

考えてみて欲しい。一部の選手が離脱するだけで、暗黒期と言われる。

他のレスラーはそういった発信を見てどう思うのか、と。

少なくとも嬉しいわけがないと思う。

プロレスとは、特定の選手だけを見る時間ではない。その日最高の時間を作っているのは最高のレスラーであり、最高のスタッフたちである。

たからこそ、いつも楽しく、豊かで満足の高い時間が生まれているのだ。

また、企業のトップにはリーダーシップが必要。リーダーシップには「言葉」が重要である。

メイ社長はここで自分は百戦錬磨であること。市場規模についての話も出した。

「僕に任して欲しい。新日本プロレスはここからが面白くなるんだ」

そう、スタッフやレスラーに対してのメッセージがこのコラムに詰まっていた。

僕は君たちのリーダーなんだ。ここはファンとコミュニケーションを取る場所であり、君たちへのメッセージを発信している場所でもあるのだと。

これから新日本プロレスはレスラー、スタッフが一丸にならなければならない。2020年の東京ドーム2daysが待っているためだ。

好調な業績を残す企業が投資としてとんでもない興行を張ってきた。この2日間を成功させるにあたって、変な横槍や意見があれば、自分が盾になる。そんなリーダーの強さを感じた。

 

選手の流動性、雇用の流動性

人気選手は目に入れてもおかしくないほどに可愛い。

そもそもメイ社長は大のプロレスファンであり、退団の話を耳にして頭を痛めない筈がないだろう。

だが、メイ社長はグローバル視点での仕事選びという思考が前提にあるはずだ。

「UP or OUT」とまではいかないが、流動性については、そもそも人は動くものだという認識があるように思う。

でなければこのタイミングでKUSHIDA選手を手放したりしない。可愛く、最高のレスラーには東京ドーム2連戦という最高の舞台は踏んで欲しいと思うものだろう。

だが、「寛大な判断」で送り出すことを判断した。これも一つの経営判断である。

また、これは余談ではあるが、兎にも角にもケニー・オメガ選手の今後についてSNSで悲観的なことを発信している点もよく目に止まる。個人的にはそこを気にしてもしょーがなくない?という気持ちがあるのだ。

3年前。

新日本プロレスの生え抜きであり、暗黒期を月として支えた中邑真輔ですら“新しい刺激”を受けるためにWWEを選んでいるのだ。

結局、中邑真輔選手とAJスタイルズ選手、カール・アンダーソン選手、ドク・ギャローズ選手が新天地を求め、新日本プロレスを去った。

行くときは皆行く。

これは自分の転職に照らし合わせてみれば、分かりやすいと思う。

決意した人をびっくり返すことは誰にもできないのである。

大切なのは正式な決定まで外野はとやかく言わないこと。新しい道について自身で納得できれば応援し、納得出来なければ彼のファンを辞めて新しいレスラーを探せばいい。

当時、内藤哲也少年は憧れの武藤敬司選手が全日本プロレスへと移籍した際、ファンを辞めたという。そこで新しく目を奪われたのが棚橋弘至選手だというのだから、プロレスは面白いと思わないか。

 

“ガイジン”社長

以前からSNSで「“ガイジン”社長になってから海外、海外って日本を蔑ろにしている」などの意見が散見されていた。

海外戦略。海外思考。

この意見を言っている方に前から僕も疑問があった。

「そんなに何か大きく変わったか」と。

確かに一時期、“ガイジン”レスラーが大半とベルトを手に入れているという状況はあった。

だが、現在新日本プロレスのベルトを所有している“ガイジン”レスラーは『NEVER無差別級』のウィル・オスプレイ選手。『IWGP USヘビー級』のジュース・ロビンソン選手『NEVER無差別6人タッグ』のタマ・トンガ選手とタンガ・ロア選手の4人である。

特段に“ガイジン”レスラーが優遇されている印象もないし、海外向けのコンテンツだけに予算が投下されている印象もない。

メイ社長が一度だけ書くと言ったように、そもそも因果関係が逆なのだ。

「今後グローバルな市場で飛躍的な成長を遂げたい」

新日本プロレスにこの事業構想があったからこそ、それが実現できる元タカラ・トミーCEOハロルド・ジョージ・メイ社長に白羽の矢が立ったのだ。

経営目線で新日本プロレスを見てみよう。

日本国内の各会場はレスラー、スタッフの努力で概ね満員。グッズもモノによっては即完売。

つまり、国内でも事業の鍵を握るのは、新日本プロレスワールドになってくる。

2018年、クリス・ジェリコ選手が新日本プロレスのマットに上がることでグローバルの会員数は激増。彼は明らかな功績を残した。それは誰も疑いようのない事実である。

今後、グローバルで動画事業を強化し、興行も一定数増えるだろう。

あくまでもそれは新日本プロレスの「HOME」がどこかを踏まえた上で、事業戦略的に海の向こうにいるファンにも会いに行くということである。

会社としての必要な変化を「あの外人社長が来てから海外志向が強くなって」と言われることにも我慢ならないのだろう。

2019年のイッテンヨン

ここで海外戦略についてのあるデータを残しておこう。

Google trendによると、2018年のイッテンヨンの方が「検索」という意味での盛り上がりはあったことが分かる。

この数値を観ると、 2017年の“Alpha”クリス・ジェリコ選手対“Omega”ケニー・オメガ選手はそれほどまでのインパクトがあったのだ。

新日本プロレスはこれからもう一度、サプライズを仕込まなければならない。

だが、僕は全く不安に思っていない。

現在所属しているプロレスラー、スタッフがそれぞれ成長することで、更なる飛躍が見られるはずだ。

その決起を生み出すための社内報として、『ハロルドの部屋』は存在しているのかもしれない。

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