トーア・ヘナーレの一歩踏み出す勇気に期待したい
トーア・ヘナーレの一歩踏み出す勇気に期待したい。
最近、トーア・ヘナーレ選手が『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』“制御不能のカリスマ”内藤哲也選手に突っかかる姿を見て、僕は素直に応援したくなった。
だが、彼には致命的な弱点がある。
物語性が足りないのだ。群雄割拠の新日本プロレスで勝ち抜くためには、リングの上で魅せる好勝負は前提でストーリー性も重要なのである。
そこで彼、そして新日本プロレスに提案したいのが大仁田劇場のようなドキュメンタリー動画である。
トーア・ヘナーレ選手にテレビ朝日のアナウンサーあるいは記者が張り付き、2人がYouTube上で物語を紡いでいく。
デリケートなところにも触れつつ、徐々に2人に奇妙な友情が生まれていく。
そんな展開が起こったらドキドキしないだろうか。
新日本本隊ということでユニットを超えた選手が出ても全く違和感はないし、AEWが発足した今、『beginning the elite』が新日本プロレスとどう絡んでいくのかも分からない。
ヨシハシカメラとも違うドキュメンタリーでトーア・ヘナーレ選手がスターダムに上り詰める様を描く。
中々面白い絵が撮れそうである。
トーア・ヘナーレの勇気
トーア・ヘナーレ選手はジュース・ロビンソン選手ともデビット・フィンレー選手とも少々違う道を歩んでいる気がする。
ヤングライオンだった彼は、真壁刀義選手のデビュー20周年興行で左足アキレス腱を負傷。
そうした背景があったためか、盟友・本間朋晃選手が長期離脱を余儀なくされたため、真壁刀義選手は彼とタッグを組み『ワールドタッグリーグ2017』に臨んだ。
それからである。彼のいい意味で前のめりな姿勢が表面化してきたのは。
トップ選手とのシングルマッチ
石井智宏選手、バットラック・ファレ選手とスペシャルシングルマッチが組まれたトーア・ヘナーレ選手。
石井智宏選手からも激励としか受け取れない言葉が飛び出すなど、キャリアハイとも言える好勝負を魅せた。
若造、若造。痛えだろ? 苦しいだろ? 悔しいだろ? これがプロレスだ。プロレス人生、ほとんどがこれとの闘いだ。これにどう向き合うか? これにどう打ち克つか? それが全てだ。あいつとの試合、俺の負けは絶対ない。間違いなくない。ただ、重要なのはそこじゃねえんだよ。重要なのはこのシングル、会社のプッシュで組まれたカードか? それともあいつ自身が自分の手で掴み取ったのか? そこだよ。
引用元:新日本プロレス
バットラックファレ選手と2度に亘る戦いも1度目は秒殺という結果に終わったが、2度目は前回よりも確かな爪痕を残すなど、常に成長の色を魅せている。
そして、2019年には『IWGPインターコンチネンタル王者』内藤哲也選手を新しい標的と定めた。
内藤哲也選手はメインイベンターである。『G1クライマックス』や『ニュージャパンカップ』などのリーグ戦、トーナメント戦を除けば、ほぼシングルマッチをする相手は固定されている。
誰しもが挑戦できる相手ではないのである。
事実、ベルトへの挑戦あるいは防衛戦。借りを返すためのリベンジマッチ。これ以外で内藤哲也選手がシングルマッチを戦ったのは近年で、鈴木みのる選手とタイチ選手だけである。
「頑張れば応援してもらえる」ヤングライオンを卒業したと内藤哲也選手からお墨付きをもらっているだけに、トーア・ヘナーレ選手には何か新しい一手が必要なような思うのだ。
『GBH』への加入を進言するなど、アクションは起こしている。だが、ファンの心を響かせるまでには至っていないことが本当に勿体無いと思う。
邪道の道。大仁田劇場2.0
近年、最も支持を得た“ガイジン”レスラーについては議論の余地もないと思う。
ケニー・オメガ選手である。
彼が絶大なる人気を得た背景にはさまざまな要因があると思うが敢えて一つだけ挙げると、物語性尽きると思う。
彼はプロレスラーとして紡ぐキャリアの中で物語を生むのが非常に上手い。そのための努力も惜しまない。
だからこそ、圧倒的な支持を得るに至ったように思う。
では、トーア・ヘナーレ選手はどうか。
圧倒的に弱い。これはプロレスラーとして身体的な強さや技の華麗さの話ではない。
ただ、前のめりに元気よく「僕にやらせてください!」と発言する優等生。
悪くはないが、ファンはそれだけでは満足できないのだ。
十分なポテンシャルはある。内藤哲也選手だってブレイク前夜はそうだった。
そう、表現の仕方を変えてみるのだ。単純にヒールターンすればいいという話ではない。
彼の人間性に迫りつつ、自分の目標をしっかりと公言し、クリアするためにあの手この手を尽くす。
そう、大仁田劇場のような番組が彼には必要なのである。
大仁田劇場とは
シンプルに言えば現在のボランティアレスラー大仁田厚さんが新日本プロレスを標的に定め、最終的には引退していた長州力さんを引きずり出すまでを描いたサクセスストーリーである。
簡単に書くとこれだけなのだが、その内容は特濃の牛乳よりも遥かに濃い。
徐々に変化していく真鍋アナウンサーとの関係性。
強さを見せたかと思えば人目もはばからず泣き出す弱さ。
人間とは何か。ひとりの男とは何かに迫ったたら意味で大河浪漫活劇である。
だからこそ、今でも根強いファンが多い。
大仁田劇場はワールドプロレスリングの1コーナーだった。
これを新日本プロレスのYouTubeチャンネルで再現してみるのはどうか。
これが、トーア・ヘナーレ選手が一歩踏み出すべき勇気なのかもしれない。
プラスアルファとは何か
トーア・ヘナーレ選手はTwitterで日本語の投稿を行う。実際にどれだけ話せるのかは不明だが、人気を得るために最大限頭を使っていることは分かる。
僕もそういった姿勢を微笑ましく、もっと頑張って欲しいという目で見ている。
だが、もっと彼のパーソナルな部分、本当の魅力があるようにも思う。
全ての人にはストーリーがある。物語がない人間など1人もいない。プロレスラーともなれば尚更である。
プラスアルファとはトーア・ヘナーレ選手の魅力を全身で伝えること。リングの上以外でどれだけ盛り上げることができるのかについて、追求することのように思う。
もしも、主演トーア・ヘナーレ選手&テレビ朝日のアナウンサーで人気コンテンツが作れればグッズだって制作されるだろうし、支持者は必ず生まれるはずだ。
最初の頃はたどたどしかった日本語が徐々に雄弁になってくる。
アナウンサーとの絆が育まれ、実況に熱が入る。
最終目標に掲げた選手との一騎打ちには大勢のファンが詰めかけるだろう。
トーア・ヘナーレ選手には、ぜひこのチャレンジをしてもらいたい。
僕は定期的に何本でも考察の記事を書く自信がある。
それほどまでに可能性を秘めているのだ、トーア・ヘナーレ選手というプロレスラーは。
石井智宏選手との一騎打ちが僕にその気持ちを芽生えさせた。
内藤哲也選手に噛み付いている今がチャンスだ。
トーア・ヘナーレ選手には、最高のプラスアルファを見つけて欲しい。