棚橋弘至(ゴキブリマスク)に飛んだブーイングに感動した話

新日本プロレスのエースであり現『IWGPヘビー級王者』棚橋弘至選手。

これまで意図したブーイングを経験することが出来なかった2018年のプロレス大賞MVPに、この日飛び交った万雷のブーイングは僕の心に大きく響いた。

2018年1月11日からスタートした「ファンカスティカマニア2019」の最終日となった1月21日の後楽園ホール大会。

この日の第6試合は「パパはわるものチャンピオンスペシャルタッグマッチ」と称され、映画「パパはわるものチャンピオン」に出演したレスラーが現実の世界に飛び出す展開となった。

あまりにも豪華で大きく盛り上がった試合が終わった時、僕の愛する野上慎平アナウンサーがこう叫んだ。

「棚橋弘至、大村孝志がリングを後にします」

この一言で今回の記事の企画は決まった。

そう、棚橋弘至(ゴキブリマスク)に飛んだブーイングに感動した話について書きたい。

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生粋のベビーフェイス

棚橋弘至選手は天性のベビーフェイス気質である。新日本プロレスのヒーローとして「疲れる」ことなく、リング内外で活躍し続けてきた。

だが、彼には一つだけできていないことがあったように思う。

それはヒールとして思う存分ブーイングを浴びることだった。

2006年に『IWGPヘビー級ベルト』を戴冠し、泣きながら「愛してます」と叫んだ棚橋弘至選手を待っていたのはブーイングだった。

新日本プロレスの革命家の前に待っていたのは、変わることへのアレルギーだったのだ。

だが、棚橋弘至選手は身を粉にして結果を残し続けた。その結果ファンの支持を得ることに成功した。

 

キラー・棚橋

2010年、矢野通選手との抗争中にはキラー・棚橋という言葉が出た。

ハサミを持って棚橋弘至選手の命でもある髪を切り落とすなど、悪の限りを尽くす矢野通選手に対して、普段とは異なる一面が現れた。

いわゆるヒールの雰囲気をまとった棚橋弘至選手。キラー・棚橋である。

だが、この時もヒールターンというよりはワンマッチ限定の新しい棚橋弘至選手の姿を表現しただけに留まっていた。

その後はオカダ・カズチカ選手が台頭し、新日本プロレスの中心を懸けた戦いを繰り広げた。

新日本プロレスの本隊時代に可愛がっていた後輩である“てっちゃん”こと『ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン』内藤哲也選手の躍進を止める壁として『IWGPインターコンチネンタルヘビー級選手権試合』を戦った。

そして、2018年の『G1クライマックス28』で優勝を果たし、2019年のイッテンヨン『レッスルキングダム13』でケニー・オメガ選手を破った。

平成最後のメインイベントを飾るだけでなく、夏の覇者が東京ドームでは勝てないというジンクスすら打ち破った。

新日本プロレスの中心に棚橋弘至選手は帰ってきた。

パパはわるものチャンピオン

2018年に公開された『パパはわるものチャンピオン』で棚橋弘至選手は主演を務めた。前述した『G1クライマックス28』優勝以降は映画の宣伝活動に走り回った時間だったように思う。

僕は映画の公開以前からずっと思っていた。いつ、現実の世界に登場レスラーはオーバーラップするのだろうと。

そして、いよいよ運命の試合が組まれたのだ。

ゴキブリマスクがギンバエマスクと共に入場を果たしたこの試合の入場シーンを見て、僕は思わず目頭が熱くなった。

棚橋弘至選手は自身の分身である大村孝志いや、ゴキブリマスクを通じて、レスラー人生初の狙ったブーイングを引き出しているように見えた。

彼に降り注ぐ万雷のブーイングはとてつもないボリュームだった。

まるでエイプリルフールにだけ逸材が「疲れた」とツイートした時のように、会場全体が一つの気持ちに包まれたように見えた。

「ゴキブリ帰れ!」

この日の後楽園ホールに集ったファンは最高だった。

ゴキブリマスクのフライハイをドラゴン・ジョージがドロップキックで迎撃したのはもはや銀幕発の芸術だったように思う。

 

ギンバエマスク

前述したのうに棚橋弘至選手はヒールをほぼ経験していないレスラーである。そして、『パパはわるものチャンピオン』で助演男優賞クラスの演技を見せた田口隆祐選手も新日本プロレスの本隊一筋である。

変態お尻おじさんには変貌したものの、ヒールレスラーのイメージも無かった彼から飛び出したギンバエマスクはまさに悪の権化だった。

「ゴキブリ!」

こう叫ぶ時の声が田口隆祐選手のものではない。

そこにいたのはデビュー以降、ヒール一筋であり、ゴキブリマスクの参謀役を務めるギンバエマスクだった。

普段表現する機会がない田口隆祐選手の新しい一面である。

再戦の可能性

試合後のバックステージでスイートゴリラ丸山選手は次回がある可能性を吟味し、彼とパートナーを組んだドラゴン・ジョージ選手は新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手と戦いたいと宣言した。

「パパはわるものチャンピオン」の世界は続く。まだまだ新しいレスラーが登場すれば、「パパはわるものチャンピオン興行」すら組める可能性だってあるのだ。

次の展開に期待しつつ、この対戦カードを仕掛けた粋な新日本プロレスにこのメッセージだけは伝えておこう。

「ありがとう」

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