鈴木みのる「風になれ」は全てが最高の入場曲だ
『鈴木軍』のボスである“プロレス王”鈴木みのる選手。
高校時代にレスリングで国体2位の実績を残し、新日本プロレスに入門。1988年にデビューを飾るとUWF、藤原組を経てパンクラスを旗揚げし、2003年に新日本プロレスへとカムバックを果たした。
ちなみに、新日本プロレスで鈴木みのる選手のデビュー戦を務めたのは飯塚高史選手である。
鈴木みのる選手はパンクラスを旗揚げした頃から変わらずにこだわり続けているものがある。
そう、彼の入場を最高で極上の空間に音楽で彩る入場曲「風になれ」である。
先日、鈴木みのる選手のTwitterでこういったコメントが発信されていた。
「『風になれ』はサビで大合唱になるがクライマックスまで時間がかかりすぎる…」
“かかりすぎる”。
鈴木みのる選手自身も言い回しに対して指摘していたが、ファン目線で見たときに長いなぁと思ったことは一度もない。
ただ、「風になれ」という神曲について改めて考えさせられる機会になったので、ここに書き留めておきたい。
中村あゆみさんが紡いだ、鈴木みのる選手の入場曲「風になれ」は全てが最高な入場曲である。
鈴木みのる選手と中村あゆみさん
中村あゆみさんが作詞・作曲を手掛けた「風になれ」。
同曲は鈴木みのる選手が直接中村あゆみさんにオファーして完成した経緯があるという。
鈴木みのる少年には有名なプロレスラーになるという確固たる夢があった。
そんなある日、AMラジオから流れてきた楽曲が彼にもう一つの夢を作った。
「翼の折れたエンジェル」
この楽曲を歌唱しているのが中村あゆみさんだと知り、彼の胸中には新しい夢が芽生えた。
中村あゆみさんに自分の入場曲を手掛けてもらう、と。
この話を始めて聞いたのは、鈴木みのる選手VS永田裕志選手の2013年1月に行われた東京ドームスペシャルシングルマッチだっただろうか。
この日、中村あゆみさんも東京ドームに登場。生ライブを見せるという豪華過ぎる共演が実現した瞬間だった。
1番が終わった間奏で鈴木みのる選手が入場。中村あゆみさんの頭を撫で、ステージとリングという離れた距離の中、拳と拳を心で合わせる姿に感服した。
そして、対戦相手は高校時代からも面識のある永田裕志選手である。この試合を見て、僕は鈴木みのる選手がまた一段と好きになった。
「なんて、物語がある人なんだ」
自分よりも先に有名になったアーティストへ一つ目の夢を叶えた上でオファーを掛け、東京ドームライブまで実現させた。
1人の男として、ただただカッコよすぎると思った。
大海賊祭と恵の雨
そんな僕にもある日、中村あゆみさんの生歌を聴くチャンスが訪れた。
鈴木みのる選手のデビュー30周年を記念して開催された「大海賊祭」である。
有名な話だが、この日はあいにくの大雨だった。
僕が横浜の会場についても雨が降り止む気配はない。
到着した時のステージでは、小島よしおさんが会場を沸かしていた。
だが、傘が刺された会場ではリングやステージは全く見えなかった。
まぁ、そりゃそうだよな。
と思いつつ、せっかくの記念日だし、鈴木みのる選手のグッズを買って、試合が見えなかったらしょうがないや。そう思いながらビーフステーキ串に舌鼓を打っていた。
ここで、アナウンサーさんから運命の言葉が発せられた。※おそらく言葉尻は違う
「鈴木みのるからのお願いです。皆さん傘を閉じていただけないでしょうか?」
会場全体から怒号の様な叫びが鳴り響いた。雨合羽を持参している方は少数派だ。だが、多くのファンが傘を閉じた。
そして、何故かは分からないが暗黙の了解が生まれた。
傘を差さない人間はリングの近くへ。傘を差す方は後方へと。
『鈴木軍』バスタオルでバッグの中のPCをくるみ、記憶に残る恵の雨に打たれながらリング付近へ移動した。
そして、メインイベント。鈴木みのる選手VSオカダ・カズチカ選手のスペシャルシングルマッチが始まった。
鈴木みのる選手は白のコスチューム。中村あゆみさんの生歌で登場し、バキバキに絞った身体と強くなると言われている「日焼け」を披露した。
びしょ濡れになりながら見たプロレス。おそらく二度と体験できないだろう。
僕自身、雨に濡れるのは好きじゃない。でも、あの雨のお陰でより記憶が鮮明になっている気がする。傘があっても敢えて差さないで濡れる。
不思議と気分は更に高揚していた。
野外リングを囲んでの「風になれ」の大合唱。今でもしっかりと思い出せる。最高の景色だった。
この日、会場ではInstagramキャンペーンを行っていた。鈴木みのる選手のパネルと一緒に写真撮影をして、ハッシュタグをつけて投稿してね、というものである。
当然、僕も参加した。この時の特賞が鈴木みのる選手の等身大パネルだった。
今、僕の家には鈴木みのる選手の等身大がある。
今日もベッドルームで睨みをきかせている。
神曲たる所以
前置きが長くなった。
「風になれ」が流れるといつも会場が一つになる。
印象的なイントロからハスキーでパワフルな中村あゆみさんのヴォーカルが鳴り響く1A。ここが終わったタイミングで手拍子が始まる。
イントロのスタートから手拍子が開始されるまでの時間が約1分だ。
鈴木みのる選手が姿を現わし、鋭い目付きで会場を見渡す仕草にいつもドキドキする。
サビに入ると鈴木みのる選手はリング付近へ。そして、「風になれ」の大合唱を更に盛り上げるために、会場を煽り始める。
「もっと来いよ!もっと、もっと!」
そして、「輝きの中で」というフレーズがトリガーとなり、テンションが爆上がりする。
「風になれ!!!!!!」
会場全体から響く声には常に一体感を感じる。
会場全体の叫びと同時にリングインしている鈴木みのる選手。その全てが極上の時間であり、最高の入場だ。
何度見ても飽きることなんてない。長過ぎるなんて思うわけがない。約110秒の濃密した時間。この時間を体験するために僕はチケットを買っていると言っても過言ではないくらいいつも、鈴木みのる選手の入場は楽しみだ。
はじめてプロレス観戦に行った友人が、次からは大合唱に参加しているのを見ると、人を惹きつける絶対的な力があることは明らかである。
やっぱり「風になれ」は最高だ。
冬の札幌への期待と不安
冬の札幌で『鈴木軍』は『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』と全面対決を行う。
メインイベントはタイチ選手VS内藤哲也選手の『IWGPインターコンチネンタル選手権試合』だ。
本日、新日本プロレスの公式スマホサイトで公開されたタイチ選手のブログは不穏な文末で締められていた。
2018年『ゴールデン☆ラヴァーズ』 が再会した札幌で新しい出会いがあるのか。それとも別れが生まれるのか。
ただし、何が起きるとしても「風になれ」の大合唱は、これまでもこれからも変わらずに進化し続けるだろう。