KUSHIDAがバレットクラブに関する噂を完全否定した真意を考える
2019年1月25日、『KUSHIDAのナイショ話』の「#45 “退団”を決意したクッシーが、新日本の8年間を振り返る! 最終回(!?)SP!」が配信された。
今月で新日本プロレスを退団するKUSHIDA選手は「本人ですらやったほうが良かったのか?」と前起きをしつつはじまった番組で現在の胸中を語った。
最後の巡業を行う中でファンから受け取ったメッセージを明かしつつ、プロレス業界で今自身がすべき事を考えているプロレスの求道者はなぜ、このタイミングで最終回を配信するに至ったのか。
最終回??を迎えた番組を聴いて僕が思った感想と、最近ちょっと思っていたことについてまとめておきたい。
KUSHIDA選手が『BULLET CLUB(バレットクラブ)』に関する噂を完全否定した真意を考えてみる。
その背景にあるのは、フェイクニュースに関しての問題と、最近プロレスブログのあり方について僕が思っていることである。
フェイクニュースが広まった背景
番組内でKUSHIDA選手は、『バレットクラブ 』への加入を断られたから退団に至ったという噂を完全に否定した。
噂の出どころについて僕が関与する話ではない。
煙のないところに火は立たない。何かしらの裏が取れてた結果報じたのだと思う。
一次情報を取得するだけのネットワークを持ち、可能な範囲で発信する。これは誰しもが真似できることではい。
時に誤報があったとしても、咎められる筋合いはないだろう。ここは別に構わないとも正直、僕は思っている。
ただ、 今回の噂をさも事実のように転載したプロレスブログが散見されたなぁとは感じていた。
僕は完全に後発なのでとやかく言える立場でもないのだが、メディアビジネスに携わってきた人間としては頭を痛めていた。
正直、一次情報を自分の手で掴んでもいない方が噂レベルのことをさも事実のように書いて何が楽しいんだろう、と。
「KUSHIDA選手ありがとう!」
「KUSHIDA選手がいなくなって寂しい!」
「新日本プロレスに入門する時も世界って言ってたよね」
それぞれ想いが浮かんできただろう。溢れ出る感情が文章にこもると、文章力に関係なく最高のコンテンツになると僕は思っている。
人にはそれぞれのスタンスがある。その点を否定することは誰にもできない。僕も否定するつもりはない。
ただ、棚橋弘至選手の言葉を借りるのであれば一次情報の引用をしている見出しを見るたびに「品がない」とは思った。
「バレットクラブ入りできなかったから、退団するらしいよ?」よりも「棚橋弘至選手とのスペシャルシングルマッチでKUSHIDA選手のセコンドに獣神サンダー・ライガー選手、田口隆祐選手だけじゃなくて、当日出場しているジュニア選手も出てきたら面白くなりそうだよね!」みたいな妄想の方が幸せになれるし、楽しそうだなぁと思える。
裏を知らないから楽しめる
世界中でフェイクニュース問題が物議を呼んでいる。今回の一件はまさに情報に踊らされた人々が余りにも多過ぎた。
僕は公式発表された情報以外を信じるつもりもないし、裏側になんか興味もない。
プロレスラーが表に立って魅せていることだけが全てだと思っている。
物事の裏側について知りたくなるのは人の性ではあるのだが、行き過ぎるとロクなことがないのである。
ケニー・オメガ選手の去就に関しての話題もそう。正式発表前に騒ぎすぎて違和感すら感じていた。
最近、顕著にファンの方を煽る記事ばかり出している方もいる。
妙にプロレスやレスラーに対しても、斜に構えて上目線な文章を書く人もいる。趣味なのか、お小遣いを増やすためのPV稼ぎ狙いなのか真意は分からないが。まぁ、おそらく後者だろう。
まぁ、別に他人のやっていることなので否定はしないと改めて伝えておくが、モヤモヤはしている。
僕は公式に発表されたことだけを書く。妄想の場合は妄想だとしっかりと書く。
時折、「それはないだろう」というコメントをいただくこともある。
実はそういったコメントは大好物なのだ。
昼飯を食べながらプロレス談議をしていただけの僕がインターネットを通じて発信する最低限の矜持。
誰が何を信じるかという指針が見えにくい時代の中で、変に煽ることだけは本当にしたくないと思っている。
その情報を鵜呑みにして、変な価値観が生まれてしまう可能性はゼロではないためだ。
否定した真意を考えてみる
プロレスに関する噂は尽きることはない。これから世界を目指すKUSHIDA選手であればゴシップとの戦いはもっと増えるだろう。
では、なぜ KUSHIDA選手はこの噂だけを完全に否定したのだろうか。
僕はPodcastを聴いて2つの思いがあると感じた。
まずは、日本プロレスという団体をあまりに侮辱している噂だということ。
次にそんな小さいことで、新日本プロレスを退団したと万が一にも勘違いされたくないと心から思ったためだと思っている。
KUSHIDA選手が『バレットクラブ 』への加入を希望していたが叶わなかった。
新日本プロレスは世界2位のプロレス団体である。子供じゃないんだからこんな理由で退団するなんてナンセンスだろう。
さらに KUSHIDA選手選手はジュニア選手である。新日本プロレスの入門テストを身長制限のため、受験することすら叶わなかった男なのだ。
本気で入門したかった団体に、努力の結果立つことができた。
そして、今しかないこの瞬間に予感だけを信じて退団を決めた。
「そんなに KUSHIDAは安い男じゃない」
KUSHIDA選手はクレバーだ。考えすぎるくらいに言葉を考え抜いている。
だからこそ、色々な決意を込めて今回の配信に至ったように思う。
実際、 KUSHIDA選手が本気でヒール側に回りたいのであれば、過去獣神サンダー・ライガー選手が『C.T.U』を作ったように、新しいユニットを作った方がいいに決まっている。
それだけの実力が KUSHIDA選手にはあるのだから。
誤報に日本のファンが踊らされたまま、世界を目指すことはできない。
KUSHIDA選手の願いは肉声によって届けられる形となった。
プロレスとは人生である
KUSHIDA選手にとって、新日本プロレスのレスラーとして残された時間は短い。
1月29日に後楽園ホールで行われる棚橋弘至選手との一戦まで残すところ3日である。
中邑真輔選手は壮行試合と銘打たれ、オカダ・カズチカ選手、石井智宏選手とタッグを組み、棚橋弘至選手、後藤洋央紀選手、柴田勝頼選手と戦った。
だが、今回の KUSHIDA選手VS棚橋弘至選手はスペシャルシングルマッチであり、壮行試合とは銘打たれていない。
生え抜きじゃないから壮行試合ではないのではないか。
絶対にそんなことはない。恐らく本人たちの希望でシンプルにスペシャルシングルマッチとなったのだろう。
プロレスとは人生だ。
別れがあれば出会いもある。
そして、今回のタイトルには「?」が付いている。一旦の終わりだがまたいつかナイショ話を届けてくれることもあるだろう。
KUSHIDA選手がこれから新日本プロレスで魅せる試合を目に、心に焼き付けたいと思う。