新日本プロレスが再び暗黒期に突入しない3つの理由
新日本プロレスが再び暗黒期に突入しない3つの理由について書いてみたい。
先日、Twitterを見ていると新日本プロレスが再び暗黒期に突入するという意見を見た。
「何かが起きる雪の札幌」のメインイベント『IWGPインターコンチネンタル選手権試合』内藤哲也選手VSタイチ選手で巻き起こった大事件。これに遺憾の意を示す上で、ファンは警鐘を鳴らした。
別に避難するつもりは僕にはないし、意見の一つとしてあり得えなくはないとも思った。
それほどに今の新日本プロレスにとって、ドラスティックな展開だったと僕も思っている。
プロレスは100人いれば、100通りの楽しみ方があるし、100通りの意見が出るものである。誰が誰かを否定できるのだろうか。
勿論、ケニー・オメガ選手が『IWGPヘビー級王座』に輝いて以降、アメプロ路線が色濃くなった印象は僕にもある。
アントニオ猪木さんが訴えたストロング・スタイル。バチバチの戦いに恋い焦がれる方からすれば、変な介入や演出は必要ないでしょ?という見方だろう。
だが、僕はこれからの新日本プロレスがもっと、もっと、もっと面白くなると思って試合を観戦している。
新日本プロレスはハイブリッドのプロレス団体だ。アメプロのエンタメ性と、ストロング・スタイルを掲げた戦い。
この2つの魅力が浸透するための準備期間が今であると僕は思っている。
「この日から全てが変わる」
まだまだその序章に過ぎないのである。
だが、「暗黒期」という言葉が出たので僕が今の新日本プロレスについて思っていることを書き残しておきたい。
ゲームチェンジャーは別の存在へ
新日本プロレスというよりもプロレス界全体が下火となったのは、「総合格闘技というゲーム・チェンジャー」が登場したことが大きな要因だと考える。
「ゲーム・チェンジャー」については、早稲田大学ビジネススクールの教師である内田和成氏の著書である「ゲーム・チェンジャーの競争戦略」に目を通すと分かりやすく説明されている。
ここでは抜粋して記述しよう。
市場の状況やルールを急激に変えてしまう存在(企業や製品)を「ゲーム・チェンジャー」と定義している。
従来、ビジネスにおける競合とは自社と同じようなビジネスを展開している企業が一般的だった。
新日本プロレスでいえば全日本プロレスやプロレスリング・ノア、海外に目を向ければWWEやCMLLなどである。
プロレス団体の競合はプロレス団体。それぞれの団体がいい興行を行うことで、切磋琢磨しプロレスそのものの価値を高めていく。これが基本にあった。
だが、現在の競争を見てみるとどうだろう。スマホに高性能のカメラが付き、デジタルカメラ市場はハイエンド機のみが勝ち残る状況になった。
ゲーム機を購入しなければ遊ぶことができなかったゲームがスマホ上で行えるようになった。
TwitterやInstagram、LINEなどのSNS。YouTubeやNetflix、アマゾンプライムビデオなどの動画、SpotifyやAWAなどの音楽の音楽ストリーミングサービス。
その全てが既存のルールを破壊して台頭したサービスである。
線の輝きと点の輝き
話を戻そう。
プロレスは総合格闘技という「ゲーム・チェンジャー」の台頭に多くの影響を受けた。
プロレスと格闘技はそもそも見方が異なると僕は思っている。
プロレスは線で見るもの。格闘技は点で見るもの。
プロレスは目の前で繰り広げられる試合を見るだけでも面白いが、前哨戦やそれ以前の歴史を知ることで更に深みが出るコンテンツである。
一方で、格闘技は点の要素が強い。「どちらの方が強いのか?」このシンプルなテーマに対して、人生を懸けて挑む。
その結果、一瞬で勝敗が喫することも珍しくはないし、そこに格も存在しない。
一夜でシンデレラストーリーが生まれる可能性だって十分にありえる。
どちらも面白いし、魅力的だし、刺激的だ。
総合格闘技という新しい輝きは従来のプロレスファンを刺激し、観客の目を奪った。
その結果、新日本プロレスは従来とは異なる方向へ向かってしまった。選手の多くも離脱した。
武藤敬司選手や小島聡選手らが新日本プロレスを退団し、王道を貫く全日本プロレスへと移籍している。
ザック・セイバーJr.選手が繰り出す関節技のように複合的な要素が何重にも何重にも絡み合い、新日本プロレスは暗黒という時代を迎えたのだ。
現在ではプロレスと総合格闘技は全く別の存在として認識されている。
かつてのゲーム・チェンジャーは別のビジネスへと進化したのだ。
いくつかのビッグマッチが一部のファンから見て不評だったことで到来するような、冬の時代ではないのである。
オカダ・カズチカとライバル、そしてヤングライオン
新日本プロレスが完全復活した最大の要因について、鈴木みのる選手はオカダ・カズチカ選手の存在があると著書やインタビューで語っている。
身長191センチ、甘いマスク、圧倒的な身体能力。存在の全てに華がある。
先日、後楽園ホールで試合を観戦した時も思った。
「マジでメチャクチャカッコいい」
オカダ・カズチカ選手の試合を見ていて、気付いたことがある。
彼のプロレスは相手選手の格を圧倒的に上げることができるのだ。
内藤哲也選手やEVIL選手、SANADA選手、ケニー・オメガ選手、ザック・セイバーJr.選手、ジェイ・ホワイト選手。
様々な選手が彼と戦い、その価値を爆発的に高めた。
僕はオカダ・カズチカ選手のV12時代と、有名サッカー漫画が重なって見えた。
キャプテン翼中学生編
サッカー漫画の金字塔である『キャプテン翼』。ご存知の方も多いだろう。
同作品が圧倒的な支持を得たのは中学生編だと僕は思っている。
小学生編は主人公である大空翼の目線でストーリーが進んだ。
若林源三や岬太郎、石崎了という仲間たちと全国大会優勝を目指すという王道のストーリーだ。
この時点では主人公の大空翼に感情移入する作品だった。
だが、中学生編に進むと作風が一転する。
日向小次郎や松山光、次藤洋、立花兄弟などライバルキャラクターに焦点が当たり始める。
大空翼率いる絶対王者・南葛中をどうすれば倒せるのか?という視点でストーリーが展開されたのだ。
主人公でありラスボス。この演出は非常に魅力的だった。
NEW ERAへの期待
オカダ・カズチカ選手は化け物以上の存在・レインメーカーとして、新日本プロレスに帰還し、1発で100年に一人の逸材から『IWGPヘビー級ベルト』を奪取した。
そして、現在こそベルトを所持していないが、圧倒的な存在感を放っている。
新日本プロレスにはオカダ・カズチカ選手がいる。そして、数多くのライバルたちがいる。
更にはグレート・オーカーン選手や川人拓来選手、海野翔太選手、成田蓮選手などがいる。
そして、はV字回復を成し遂げた選手たちの大半が残っている。
ここまでの存在が揃った新日本プロレスの未来は明るい。
安定経営と認知度向上
ブシロード体制となった2012年以降、新日本プロレスは常に右肩上がりの成長を記録している。
広告予算の投下やレスラーそれぞれのSNS活動、棚橋弘至選手や真壁刀義選手らのタレント活動も相まって徐々に新日本プロレスは認知を高めてきた。
プロレスを知らない友人ですら棚橋弘至選手と真壁刀義選手の名前や顔は知っている。
認知はビジネス展開の上で圧倒的な武器になるのだ。
ユニット別LINEスタンプで更なる飛躍を提案
もう少し狙っていくのであれば、最近リリースされていないLINEスタンプを選手別やユニット別に制作するのもいいかもしれない。
友だちからインパクトのあるスタンプが送られてくると、ついそのスタンプが何なのか調べた経験があなたにもあるはずだ。
肝心の絵だが、新日本プロレスが主催でオーディションを開催すれば、「書きたい!」と手を挙げるクリエイターの方も必ず出るはずである。
まず、新日本プロレスファンが買う、クリエイターのファンも買う。
ユニークなスタンプを送られた友だちも買う。ジワジワと新日本プロレスを普及させることにマッチしたプラットフォームだと思う。
『CHAOS』や『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』、『バレットクラブ 』、『田口ジャパン』などのLINEスタンプが出ればバカ売れ必至だろう。
タレント契約の影響で制作ができないのかもしれないが、この点は交渉する価値があると思っている。
話がかなり逸れたが、興行会社からIP会社へと変貌を遂げると宣言した今の新日本プロレスは大きな可能性を秘めていると僕は思っている。
事実、レッスルキングダム13のハッシュダグは世界一を記録した。
ここに広告を出すことができるのである。企業として新日本プロレスにスポンサードするメリットは多分にある。
新日本プロレスは可能性に満ちている。
どうすればもっと楽しくなるかという視点
「何かが起きる雪の札幌」ではテロリスト飯塚高史選手が内藤哲也選手を襲撃し、物議を醸した。
SNSでも様々な意見が飛び交っていた。
「普通の試合が見たかった」
正直、気持ちが分からなくはない。
僕も内藤哲也選手とタイチ選手が正々堂々戦う姿を見たかった。
だが、この先に控える『ニュージャパンカップ』や『G1クライマックス』に期待を膨らませばいいのではないか。
どうして今、この瞬間に見たいものが提供されないだけで、文句を垂れ流すのか。
団体批判に関して後に内藤哲也選手はクビ覚悟だと語っていた。
矢沢永吉さんではないが、出禁になる覚悟を持って発信しているのか、と僕は思う。
批判的な意見を言うことはとても簡単だし、誰しもが持ち得ている権利だと思っている。
「どうすれば新日本プロレスはもっと楽しくなるか」
この視座を前提に持てば発信する内容も大きく変わってくるはずである。
新日本プロレスは世界2位のプロレス団体である。
PDCAとOODAの使い分けつつ、よりよいものを提供してくれると僕は信じている。
実況席の獣神サンダー・ライガー選手の様に素直にプロレスを見る価値観を。
“Good Guy”のように争いを拒む勇気?を。
新日本プロレスが再び暗黒期に突入しない3つの理由を書いてきたが、内心全く心配していない。
これから盛り上がる新日本プロレスは不安に感じるよりもトコトン楽しんだ方が得だと僕は思っている。