なぜ、内藤哲也は飯伏幸太に対して焦ってしまうのか

なぜ、内藤哲也は飯伏幸太に対して焦ってしまうのか。

これは飯伏幸太選手が新日本プロレスとDDTのW所属になり、本格的な進出が始まる以前にまで話が遡るような気がしている。

飯伏幸太選手は2019年のイッテンヨン「レッスルキングダム13」で「NEVER無差別級王者」として第一試合に出場して以降、脳しんとうの影響で欠場期間が続いていた。

新日本プロレスの大阪大会で「ゴールデン☆スター」が鳴り響き、約1ヶ月振りに姿を現した飯伏幸太選手を控室で見ていた内藤哲也選手の胸中に浮かんだのはジェラシーだったのかもしれない。

他のインタビューで語っていたが、飯伏幸太選手が復帰を宣言した時に語った言葉は、「自分は新日本プロレスに残る」というもの。KUSHIDA選手など嬉しくもあり、寂しい別れが続いていただけに飯伏幸太選手が発したメッセージには大きな意味があったように思う。

ただし、内藤哲也選手はこの言葉についてこう言及している「何当たり前のことを言っているんだ?」と。

そう言ってしまえばその通りなのだが、何を誰が言っているのか?ここに価値と意味があることを内藤哲也選手は誰よりも知っているはずなのである。

新日本プロレス出身の内藤哲也選手とインディー団体出身の飯伏幸太選手は1982年生まれの同級生。

2015年、内藤哲也選手がメキシコに渡り“制御不能”となる以前には、LINEで3回ほど交流があるほどの仲だったらしい。

なぜ、内藤哲也選手は飯伏幸太選手を意識してしまうのか。その心理について考えてみたいと思う。

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ジェラシーの原点

飯伏幸太選手が「ニュージャパンカップ」を制した2015年の春。内藤哲也選手は「ゴールデン☆スター」の前に完敗を喫していた。

棚橋弘至選手の次。次世代の新日本プロレスを担うのは内藤哲也選手である。このイメージはオカダ・カズチカ選手が実現したレインメーカーショックで完全に崩れ去っていた。

また、同級生である飯伏幸太選手がヘビー級に転向したことで、内藤哲也選手はこれまで以上の成果を求められるようになったのだと思う。

更に飯伏幸太選手は新日本プロレス本隊に籍を置いていた。全く横並びで試合を魅せた時にどちらが会場を沸かしているのか。

内藤哲也選手は5感でその答えを感じていただけに、本格的に何かを変えなければいけないと思ったのかもしれない。

 

心理学的な観点

内藤哲也選手は沖縄大会で飯伏幸太選手に対し「顔を出さないのか?」というメッセージを残し、後日訂正した。

内藤哲也選手と言えば、痛いところにクリティカルヒットする正論でその地位を高めてきた。

オカダ・カズチカ選手の2億円プロジェクトや棚橋弘至選手の「IWGPインターコンチネンタルベルト」挑戦について。

「確かに内藤哲也のいう通りだよな」

そう思わせる神通力があった。だが、沖縄で飯伏幸太選手に対して発した言葉はちょっとズレている印象はあった。

何故ならば飯伏幸太選手は「ニュージャパンカップ」で復帰するとお客様の前で高らかに宣言しているためだ。

また、飯伏幸太選手は明確に脳しんとうで欠場という発表がなされている。

棚橋弘至選手が足を負傷し、欠場した状況とは訳が違うのだ。

脳しんとうがなぜ、大事を取って休む必要があるのか?といえば、セカンドインパクト症候群があるためだ。

3週間以内に再び脳しんとうを起こした場合、かなりの確率で大事故につながる可能性がある。

そのため、復帰のタイミングは慎重に行わなければならないのだ。

プロレスのリングに上がるということは試合の有無に関係なく何かが起きる可能性がある。

先日の飯塚高史さん引退興行で鷹木信悟選手もBUSHI選手が乱入を果たし「ロッポンギ3K」へ攻撃を仕掛けた。

飯伏幸太選手は確かに脳しんとうから3週間以上経過しているが、大事を取るにこしたことはないのである。

本題はここからだ。

人が焦りを感じるのはどんな時なのだろうか。

周囲と己を比較して、自分の理想と現実の差が縮まっていない、あるいは広がっていないと感じてしまった時、人は不安や焦りを感じるのだ。

内藤哲也選手は「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」のリーダーとして一時代を築くほどの活躍を見せた。

だが、グッズの売り上げやファンの支持でない、プロレスラーとしての深いところで飯伏幸太選手に対してのコンプレックスが消えていないのではないだろうか。

身体能力とアイデアと閃き。アスリートプロレスができる一方で、クラシックなスタイルを好む。また、ジュニア時代には「IWGPジュニアタッグ王座」で、ヘビー転向後は中邑真輔選手との「IWGPインターコンチネンタル選手権試合」でプロレス大賞でベストバウトを受賞している。

一方で、内藤哲也選手はベストバウトの受賞経験がない。MVPという最高の勲章を得ても、同じ年齢のライバルに対して、何か思う点があることは間違いない。

 

制御不能と天性の制御不能

お客様の前に出てきちんと挨拶をした。セカンドインパクト症候群のケアを万全にした状態で復帰する。これが今の飯伏幸太選手がすべきことである。

冷静に考えてそこが見えてきたからこそ、「焦っちゃったのかもな」とコメントを残した。

敢えて言おう。試合後のバックステージ、スマホ日記両方で書いているのである。

制御不能の前に制御不能が立った時、一体どんな試合になってしまうのだろうか。

そして、棚橋弘至選手が内藤哲也選手に対して、久しぶりにコメントを残した。

棚橋「よし! 月も変わって、新シリーズも始まった。これ、ギア入れ替えるのに一番よくない? 旗揚げシリーズあって、『NEW JAPAN CUP』。3月、4月、5月……むっちゃくちゃ忙しくなるから。先頭で走りたい。ベルト持ってなくてもね。ま、唯一、今日、久しぶりに内藤と対戦し、心配だったんだ。このままの内藤で終わるのかなっていう不安はあったかなあ……。大きい言葉で団体を引っ張っていくんではなくてね、ご意見番で、誰かの意見に物申して、シリーズを、プロレスを盛り上げていくっていう立ち位置。俺はね、こっち側にいてほしかった」
出典:新日本プロレス

2016年、「棚橋弘至になれなかった男」は「棚橋程度にならなくてよかった」と語った。

会場に来たファンへのムーブメントは間違いなく作った。「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」の勢いはあの選手が帰ってくることで、更に加速すると言えるだろう。

だからこそ、棚橋弘至選手は会場以外での活躍を内藤哲也選手に求めているのではないだろうか。

「内藤!早くここまで上がってこい!」

「てっちゃんなら大丈夫だよ」

「お前が最後の希望だ。東京ドームで勝負しろ!」

愛を叫び続けてきた逸材は2019年の内藤哲也にこれまでと違った期待を抱いているのかもしれない。

春の特異点

一体、誰がこの2人が一回戦からぶつかることを想像したのだろうか。

2019年3月10日の兵庫・ベイコム総合体育館で内藤哲也選手と飯伏幸太選手は激突する。優勝経験のある両者だけに、ある意味で事実上の決勝戦という見方もあるほどだ。

2018年の「G1クライマックス」で内藤哲也選手は飯伏幸太選手に敗れている。あの時との違いは内藤哲也選手がエボルシオンを手に入れていること。

ただし、飯伏幸太選手も新技を仕込んでくる可能性もある。

黒と白を同時に巻くことで唯一無二の輝きを目指す“制御不能のカリスマ”か。最後の選択をして、迷いを吹っ切った“ゴールデン☆スター”か。

焦りは不安を生む。実力が拮抗している以上、精神的に優位に立つ選手に分があるのかもしれない。

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