チェーズ・オーエンズは「ニュージャパンカップ2019」で真価を発揮するか
チェーズ・オーエンズは「ニュージャパンカップ2019」で真価を発揮するか。「バレットクラブ 」でメキメキと地位を高めている彼について考えてみたい。
新日本プロレス春の祭典「ニュージャパンカップ」は史上最多となる32名の選手がエントリーを果たした。
「IWGPヘビー級」を除くシングル王者もエントリーしているこの大会。一回戦が終了した段階では大きなサプライズは決して多くはなかった。ジュース・ロビンソン選手の敗戦を除いて、だ。
新日本プロレスが海外戦略のために新設した「IWGP USヘビー級王者」にして、現「LIFE BLOOD」のリーダー。
2019年のイッテヨンでCody選手をくだすなど、これまでの努力が身を結び羽ばたく時期に来たと思われていたジュース・ロビンソン選手が足元を掬われたのだ。
更に目を引いたのは、ほぼ完封で敗れたことである。
大金星を得たのはイッテンゴから「バレットクラブ 」へと復帰したチェーズ・オーエンズ選手だった。
彼の試合を「新日本プロレスワールド」で検索してみると、面白いことが分かった。
2018年9月8日 東京・後楽園ホール 第2試合 吉田綾斗 VS チェーズ・オーエンズ
2017年8月8日 神奈川・横浜文化体育館 第1試合 岡倫之 VS チェーズ・オーエンズ
2017年8月5日 大阪・大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪) 第1試合 北村克哉 VS チェーズ・オーエンズ
2018年2月に海外で永田裕志選手と試合をしている動画もあったが、2017年まで配信されているシングルマッチは上記のみなのだ。(個別配信のみ)
また、シングルどころかタッグでも新日本プロレスでのベルト戴冠経験はゼロ。「IWGP USヘビー級ベルト」を2度戴冠し、「ニュージャパンカップ」でも2年連続で高橋裕二郎選手を下していたジュース・ロビンソン選手と実績だけ比較すれば、大きな差があったことは間違いない。
だが、彼は大番狂わせを起こしたのである。新日本プロレスにまた1人新しく“ガイジン”のスターが生まれようとしているのかもしれない。
いよいよ来た革命の時
2018年、チェーズ・オーエンズ選手は何とも言えない立ち位置にいた。
「バレットクラブ」内での抗争を経て始まった分裂騒動。この時、チェーズ・オーエンズ選手と高橋裕二郎選手が岐路に立たされていた。
「おいおいおい!」と場を納めにいくと同士であったはずのタマ・トンガ選手らから襲撃を受ける。
明確に「ジ・エリート」のメンバーではない自分たちがなぜやられているのか。
突然の展開に驚きを隠せなかったに違いない。
紆余曲折を経て、飯伏幸太選手とも合流し、Too Sweetを何度も断られる。そして、2019年のイッテンヨンには未出場。運命のイッテンゴを迎えた。
高橋裕二郎選手と共に「バレットクラブ」へと帰還。その後は一気にヒールとしての才能を爆発させていく。
レスラーとしての意識
チェーズ・オーエンズ選手はレスラーとしての評価が決して低かったわけではない。
その大きな要因を作っていたのは解説のミラノコレクションA.T.さんである。
現役時代、ジャベで一世を風靡したテクニシャンが絶対的な評価をコメントを残す。
プロレスの技術に対して素人である僕からすると、タイトルマッチに絡むことはないものの素晴らしい選手なのだと思うわけだ。
ミラノコレクションA.Tさんの寵愛を受け、「プロレスが上手い」というブランドを自然と手に入れていたチェーズ・オーエンズ選手がいよいよベールを脱いだのが、今回の「ニュージャパンカップ2019」なのである。
チャンスを掴んだ男
試合時間は24分36秒。「ニュージャパンカップ2019」の一回戦では最長の時間で勝利を掴んだチェーズ・オーエンズ選手。
チェーズ・オーエンズ選手はこの試合を前に意味深な発言をしていた。「オレは失うものはなにもない。得るものしかない」と。
ある意味で「ニュージャパンカップ」は「G1クライマックス」以上にチャンスを掴みやすい大会だとも言える。
長期のリーグ戦が確定しているリーグ戦とは異なり、トーナメントは一発勝負。相手がタイトルホルダーである場合は、ここぞとばかりに照準を合わせ、その試合だけは絶対に勝利を掴むという闘い方もあり得るのだ。
そうした背景もあり、これまでシングルベルトを巻いている王者は参戦していなかったようにも思う。
その結果、何が起こったのか。そう、「IWGP インターコンチネンタル王者」の内藤哲也選手と「IWGP USヘビー級王者」ジュース・ロビンソン選手の2人が一回戦で脱落した。
2人に勝利した飯伏幸太選手とチェーズ・オーエンズ選手は2回戦への切符とベルトへの挑戦権を手に入れたに違いない。理屈としては十分に通る。
だからこそ「得るものしかない」と発言したのではないだろうか。一戦目で必ず、ジュース・ロビンソン選手を倒し、ベルトへの挑戦権を手に入れる。そして、欠場中の高橋裕二郎選手がなし得なかった2回戦進出を成し遂げる。
彼が真価を発揮するのはこれからだ。
バレットクラブ唯一の男として
一回戦が終わり「バレットクラブ」と「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」にとっては手痛い結果となった。
「バレットクラブ」はバッドラック・ファレ選手、ヒクレオ選手が敗れ、残るはチェーズ・オーエンズ選手のみ。
「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」は内藤哲也選手、EVIL選手が惜しくも敗退し、SANADA選手のみという状況になっている。
ここからはベスト16。つまり、昨年と同じ人数という状況になった。YOSHI-HASHI選手との一戦をチェーズ・オーエンズ選手が制すと、次はタイチ選手、石井智宏選手との一戦となる。
全くどんな試合になるのか想像もできないために、非常に楽しみなカードとなる。
だが、YOSHI-HASHI選手も侮ってはいけない。なぜならば、未だ試し切りで終わっている隠し技「緊箍児」を持っているためだ。
チェーズ・オーエンズ選手として「バレットクラブ」として。負けられない2回戦から目を離すことができない。