オカダ・カズチカはMSGで王者に返り咲く

オカダ・カズチカ選手が新日本プロレスの春を制した。本人が「ニュージャパンカップ2019」開催前から豪語していた通り、大本命として結果を残したことになる。

波乱がなかったと言えば確かにそうだ。僕自身、今回の「ニュージャパンカップ」はオカダ・カズチカ選手が優勝すると予感していたわけで。

ただ、結果としての波乱は確かになかったが、その内容に不満を抱いた方は少数派なのではないだろうか。

SANADA選手との激闘を制した後、オカダ・カズチカ選手はマイクを手に取り高らかに“ライバル”の言葉を借りて「新日本プロレスのリングが世界で一番好き」だと宣言した。

2018年6月に「IWGPヘビー級ベルト」を手放して以降、結果に恵まれなかった元王者が、本当の輝きを取り戻した瞬間だったように思う。

いや、違う。オカダ・カズチカ選手はこの1年、正確には2年で大きく、大きく成長を遂げた。

所有物である「IWGPヘビー級ベルト」が手元からすり抜け、自分がスカウトしたジェイ・ホワイト選手から反乱を受け、自分を「CHAOS」にスカウトした外道選手から裏切られた。

改めてオカダ・カズチカ選手がこの2年間、新日本プロレスで過ごした成長の軌跡について考えてみたい。そして、僕はこう思っている。オカダ・カズチカはMSGで王者に返り咲く、と。

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赤髪とバルーン

丸腰のレインメーカー。身軽と言えば聞こえはいいが、違和感があることは否めない。

オカダ・カズチカ選手は杞憂な存在だ。新日本プロレスで戴冠したベルトは「IWGPヘビー級ベルト」のみ。

シングルマッチに限って言えば、他のベルトに挑戦したことすらない。

ブシロード体制になって以降、新日本プロレスの象徴となったレインメーカーは金の雨を降らせ続けてきた。

そんなオカダ・カズチカ選手の歯車が大きく狂ったのが2018年6次の以降だと思う。ただし、この寄り道、回り道が非常に価値のあるものだった。

金髪やシルバーアッシュがトレードマークの髪を真っ赤に染め上げ、煌びやかなガウンを着用せず、バルーンを持って身軽にリングへと向かう姿は、これまでにないオカダ・カズチカ像を作り上げた。

入場曲のリミックスも変えた。そして、「レヴェルが違う」、「金の雨が降るぞ」と言わなくなった。

柴田勝頼という存在

オカダ・カズチカ選手の運命を変えたのが、2017年の両国国技館ではないだろうか。

「ニュージャパンカップ2017」の決勝戦でバットラック・ファレ選手を破り「約束したやつがいるんだよ」と言い放ちオカダ・カズチカ選手の持つ「IWGPヘビー級ベルト」に挑戦した柴田勝頼選手。

ザ・レスラーはこの試合を機に、プロレスラーとして観客が入ったリングの上でプロレスをしてない。

生死の境をさまようほどの経験をし、今ではLA道場のヘッドコーチを務めているが過去の経験からもうリングで試合をすることはないだろう。

生まれた時から新日本プロレス。そんなキャッチフレーズが誰よりも似合う男の選手生命、人生を危機に追い込んでしまった。

オカダ・カズチカ選手の苦悩は僕なんかには生涯分からないものだったに違いない。

だが、オカダ・カズチカ選手は柴田勝頼選手の気持ちを背負い“超人”となった。

どんな技を受けても立ち上がる。決して諦めないのがプロレスラー。今思えば、そんな存在になることを宣言し、自分を追い込んだのかもしれない。

それからオカダ・カズチカ選手は「IWGPヘビー級ベルト」の戴冠期間、防衛回数の記録を塗り替えた。

表面上は強く、明るい彼の心の奥底にあったのは柴田勝頼選手への想いだったのかもしれない。

 

SANADAは強かった

地元に錦を飾るべく本気を出した天才・SANADA選手は強かった。

正直、オカダ・カズチカ選手が破れる可能性すらあったように思う。

だが、絶対に絶対にオカダ・カズチカ選手は負けるわけにはいかなかった。

目の前で恥をかかせるわけにはいかなかったのだ。だって、解説席には柴田勝頼選手が座っていたのだから。

試合の後日に行われた記者会見で「柴田さんともう一度約束したい。柴田さんはクソ真面目な人なので必ず約束を守ってくれると思う。もう一度やりましょう」とオカダ・カズチカ選手は語った。

あの日、オカダ・カズチカ選手は泣きそうな顔をしていた。

そして、この日、オカダ・カズチカ選手は泣いた。

そして、柴田勝頼選手は笑った。

「俺は生きてる、安心しろ。泣くな」

俺は生きてる。そう、柴田勝頼選手は生きている。

ザ・レスラー。新日本プロレス最強のベビーフェイス。

彼の存在が「CHAOS」を背負って決勝に駒を進めたオカダ・カズチカ選手に最後の勇気を与えた。

だからこそ、試合後に握手を求めたのだと思う。

僕はこの瞬間、仕事の帰り道で電車の中だという状況にも関わらず涙が止まらなかった。

オカダ・カズチカ選手はあの瞬間、ある意味で自分との約束を果たせたのかもしれない、と。

偉大なるレスラー柴田勝頼選手の前で恥ずかしい姿は絶対に見せない。あなたに勝った男は最強であり続けなければならない。

「(柴田勝頼選手を倒して今ここにいるオレは)レヴェルが違う」、「(柴田勝頼選手が愛してやまない)新日本プロレスに金の雨が降るぞ!」改めて試合後のマイクを見直して、僕はそう感じた。

事実かどうかは抜きにして、僕はそう受け取った。

 

ジェイ・ホワイトとMSG

新日本プロレスはプロレスの聖地であるMSGで興行を行う。

メインイベントは「IWGPヘビー級選手権試合」チャンピオン ジェイ・ホワイト選手VS挑戦者オカダ・カズチカ選手だ。

これまでは確かに部の悪い結果となっている。シングルマッチに関してはオカダ・カズチカ選手の二敗という状況だ。

僕はある時から滅多に勝敗の予想をしなくなった。プロレスの楽しみ方を変えたと言えば聞こえはいいが、なんだかそういった見方をしなくなった。

今、この瞬間にある試合を楽しむ。

であれば、勝利予想は無粋な想像だろう。もちろん、他の人の予想は楽しく拝見しているわけだが。

だが、今回ばかりはオカダ・カズチカ選手の勝利を予想してみたいと思う。

ジェイ・ホワイト選手はとてつもなく強く、とてつもなく魅力的で、とてつもなく存在感のあるレスラーへと変貌した。

外道選手がセコンドに付く魔力もあるだけに、決意だけで勝てるほど甘い試合にならないことは分かっている。

激戦のダメージもある分、オカダ・カズチカ選手の方が不利なわけで。

でも、オカダ・カズチカ選手に勝ってほしい。心からそう思った。

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