内藤哲也と飯伏幸太の初タイトルマッチ!帰ってきた制御不能に震えた話
「IWGPインターコンチネンタル王者」内藤哲也選手がチャレンジャー飯伏幸太選手とMSG「G1 SUPERCARD」で激突した。
新日本プロレスを代表する好カードはまさに激戦となった。
新日本プロレスが昭和から見続けてきた夢を平成最後に叶えるという本大会を前に、強行スケジュールでメキシコ、コスタリカへと渡り試合を行ってきた内藤哲也選手。
僕はこの遠征を知った時、キャプテン翼中学生編で日向小次郎が沖縄でタイガーショットを身に付けた特訓を思い出していた。
日向小次郎は「牙の抜けた虎」と言われ、激しさが無くなったと言われていた。昔持っていたギラギラした気持ちをもう一度取り戻す。そんなシーンが今回の内藤哲也選手の遠征とダブって見えたのだ。
「ロス・インゴベルナブレス・デハポン」のリーダーとしてファンから浴びせられる大声援と期待、羨望の眼差し。
スターダスト・ジーニアス時代に発していたものを“制御不能”になったことで手に入れてしまった。
その結果、いつしかバランスは崩れていった。
何をするか分からない。それが新しい内藤哲也選手の魅力だったはずだった。
入場はノロノロと歩き、コスチュームはダラダラと脱ぐ。試合が始まっても中々ロックアップしない。
生真面目な男がメキシコの自由な空気で手に入れたのは、ギャップと意外性だったのだ。
いつしか薄れていった最大の魅力を内藤哲也選手はメキシコ、コスタリカで取り戻した。
結果的に飯伏幸太選手に敗れてはしまったものの、収穫は大きかったように思う。
制御不能が帰ってきた
最近の試合では入場も早くなり、コスチュームも普通に脱ぎ、すぐロックアップする機会が増えていた内藤哲也選手。
スターダスト・ジーニアス時代から持っていた身体能力に独特の間を加え、ダーティーなファイトも厭わなくなった。これが“制御不能”となった内藤哲也選手の強さである。
逆言えば、プラスαの部分が薄くなると、スターダスト・ジーニアスからフィニッシャーが変わっただけの状態となる。これが最近、僕が見ていて、少しだけ寂しいと思っていた部分だった。
だが、内藤哲也選手はメキシコ、コスタリカを経て帰ってきた。僕が大好きな内藤哲也選手が帰ってきたのだ。
ライバル飯伏幸太
イッテンヨン「レッスルキングダム13」以降の正装に身を包んだ内藤哲也選手はダラダラとリングを目指す。
その直後、「『ニュージャパンカップ』のリベンジなるか?」と息を飲んで「新日本プロレスワールド」を見ていた僕にある光景が映った。
明らかにスーツを脱ぐスピードが遅い。特に上着を脱いでからが遅い。
そうだ。これ、これなのだ。早く試合やってよ!と対戦相手だけでなくレフリー、ファン全員を焦らす。
「些細なことなのに内藤哲也だけに視線が集中してしまう」
このパフォーマンスをもってしてこその内藤哲也選手だ。
ゴングが鳴る。「ニュージャパンカップ」の時はあっさりとロックアップしたが、今回はスカした。
コレコレ!これを見たかった。内藤哲也選手の試合はこのスタイルが素晴らしいのである。
飯伏幸太選手は「新日本プロレスに残ります」と意気込みを語り、再び注目を浴びるようになった。その勢いのままに「ニュージャパンカップ」で内藤哲也選手を破った。
その結果掴んだ2人の神が巻いたいた白いベルト。大切な一戦だけに、自分のペースで試合を進めたいと思うのが当然だろう。
だが、この日の内藤哲也選手は一味も二味も違った。強行スケジュールで臨んだ海外遠征が“制御不能のカリスマ”をベストな状態へと誘ったのだ。
内藤哲也の試合だった
振り返ってみると、試合のペースは全て内藤哲也選手が握っていたように思う。
高角度のグロリアはつなぎ技なのか?と思うほどの破壊力を魅せ、雪崩式フランケンも綺麗にハマった。
だが、一番違ったのは内藤哲也選手が攻め続けていたことだったように思う。
鈴木みのる選手との一戦が顕著だが、内藤哲也選手は時々受けに回りすぎるケースがある。
一発逆転を狙うのはいいのだが、緩急こそが内藤哲也選手の魅力である。
ノラリクラリしてるかと思えば、フルスピードで動き、唾を吐きかけたと思ったら華麗な技で攻め立てる。
このスタイルを確立したことで、内藤哲也選手はトップ戦線に名を連ねることができたのだ。
MSGの内藤哲也選手はベストだった。
勝敗
飯伏幸太選手のカミゴェで勝敗は喫した。内容は内藤哲也選手、結果は飯伏幸太選手という言葉が相応しいのかもしれない。
それほどにこの日の内藤哲也選手は素晴らしかった。
勝敗を分けたのは、「2人の神が巻いたベルトを自分が巻きたい」という強い意志に違いない。最初の挑戦者に指名したのは「鈴木軍」ザック・セイバーJr.選手。
この試合も非常に楽しみで目が離せない展開になりそうである。
一方で、内藤哲也選手は白と黒を両方手に入れるという野望を口にしていたが、奇しくも「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざを体現する形となってしまった。
ただし、内藤哲也選手はここからが楽しみである。
目指す先は「IWGPヘビー級ベルト」か「IWGPインターコンチネンタルベルト」へのリベンジか。
試合後もノーコメントを貫いただけに、未来に向けて更なる期待が生まれた。
焦らず、じっくりとこの贅沢な時間をしばらく楽しみたいと思う次第だ。