オカダ・カズチカとクリス・ジェリコにまつわるWARの物語
オカダ・カズチカとクリス・ジェリコにまつわるWARの物語。
MSGでジェィ・ホワイト選手、レスリングどんたくでSANADA選手を破り、「IWGPヘビー級王者」として新日本プロレスのど真ん中に返り咲いたオカダ・カズチカ選手。
約一年ぶりにレイン・メーカーの所有物とも称された「IWGPヘビー級」ベルトを腰に巻いたオカダ・カズチカ選手は赤髪バルーンお兄さんともこれまでの絶対王者とも違う、新しい魅力を発するようになった。
遊びゴコロのある最高のチャンピオン。これが今のオカダ・カズチカ選手から受ける印象だ。
そんなオカダ・カズチカ選手の次なる防衛戦の相手は初対決となるスーパースターだ。
“ペイン・メーカー”クリス・ジェリコ選手である。
新日本プロレスに金の雨を降らせてきた男に対して、痛み、悲しみの雨を降らせる男が新しい敵として現れた。
これまでNODQマッチで内藤哲也選手やケニー・オメガ選手と激闘を繰り広げてきたクリス・ジェリコ選手は一体どんな試合を魅せるのか。
前日に行われた記者会見でも、“ペイン・メーカー”節を炸裂させていただけに、明日への期待は高まるばかりである。
一方で、今回の試合はこれまでと異なり、前哨戦もなければ襲撃すらなかった。ある意味でアッサリも当日を迎えたという見方もあるのだ。
ただし、プロレスらしいストーリーを2人に照らし合わせてみると、あら不思議。
この2人の対決が必然であったことが分かるのだ。
WAR(レッスル・アンド・ロマンス/レッスル・アソシエーション・アール)。
SWS崩壊後、レボリューションのメンバーが中心となって誕生した団体であり、邪道・外道、ウルティモ・ドラゴン校長、クリス・ジェリコ選手が身を置いていた団体だ。
プロレスとロマンス。
ウルティモ・ドラゴン校長に見出され、外道選手のマネジメントを受け大きく咲いた才能が、WARの“道”と交差する日が来たのだ。
プロレス界に降る恵の雨。その雨をライオンはどんな顔で浴びるのだろうか。
レイン・メーカー真の実力
オカダ・カズチカ選手がプロレスラーとして最も秀でている力とは何か。この点を考えていると、ある答えにたどり着いた。
オカダ・カズチカ選手は相手を引き立てる能力がとてつもなく高いのだ。
いわゆる「俺、凄いっしょ!」と危険技を連発するプロレスとは一線を画し、最小限の技で最大限の試合を作っているのがオカダ・カズチカ選手なのだ。
クリス・ジェリコ選手もオカダ・カズチカ選手に対してこうコメントしている。
新日本プロレスではいまオカダ・カズチカがベストである。そして、このレスリングという業界そのものが、強さとはスター性であったり、ファイティングスピリットがあるか、ストロングスタイルをどれだけ披露できるかというところになっていると思う。そして、オカダはそれができているレスラーだと思う。正直言って、オカダの試合は観ていて楽しいと思うし、俺は彼の試合が好きだ。とても賢くアーティスティックであり、観ているこちらの方が壁画のように感じる。それだけ美しいものができるレスラーだと思っている。ただ、何か違いがあるとすれば、オカダ・カズチカはあらゆる選手と対戦しているかもしれないが、ただ一人、このクリス・ジェリコとの対戦経験はないということだ。そして、このクリス・ジェリコと対戦する。それだけでこの対戦は話題になるし、もちろんオカダ・カズチカというものがまた一つ上のレベルにいける大きな機会になると思う
出典:新日本プロレス
昭和、平成、令和。最強のレスラー像
オカダ・カズチカ選手はいい意味でグラスのように相手に応じて試合内容が変わる。
涼しい顔のまま基本技を軸に戦っているため、分かりにくいが、どんな技でも繰り出せるし、バチバチの展開にも対応できるのがオカダ・カズチカ選手なのだ。
そんな彼のプロレスを天龍源一郎さんは真っ白なキャンバスと称した。
真っ白なキャンバスに相手のレスラーが絵を描き、最後にオカダ・カズチカとサインを入れる。
そんな彼のプロレスは相手の更なる力を引き出しつつ、己の強さを魅せるというジャイアント馬場さんとアントニオ猪木さんを足しつつ、ウルティモ・ドラゴン校長の華やかさを加えた、平成最強であり令和時代のスタイルだと言えるだろう。
まさにレヴェェェルが違うのだ。
天龍源一郎を介錯した男
クリス・ジェリコ選手は天龍源一郎さんが旗揚げしたWARに所属していた。
当時は「冬木軍」の一員として、邪道・外道と行動を共にするなど、オカダ・カズチカ選手にとっては因縁浅からぬ関係でもある。
また、オカダ・カズチカ選手の育ての親と言っても過言でもないウルティモ・ドラゴン校長に関してもWARに身を置いていた。
そして、天龍源一郎さんが廃業した日、引退試合の相手を務めたのがオカダ・カズチカ選手である。
プロレスラー オカダ・カズチカを追うと、WARが紡いできた物語があった。
WARを経てスーパースターとなったクリス・ジェリコ選手はオカダ・カズチカ選手に何を伝えるのだろうか。
運命のゴングが鳴るまで数時間を切った。