ジョン・モクスリーが語った棚橋弘至VS鈴木みのるの激戦を今見る意義

ジョン・モクスリーが語った棚橋弘至VS鈴木みのるの激戦を今見る意義について書き残す。

そう、この試合はいつ新日本プロレスファンになった方でも関係なく、ぜひ見て欲しい好勝負である。

先日公開された新日本プロレス公式スマホサイトのインタビューでジョン・モクスリー選手がこの両国決戦を非常に印象深い試合としてピックアップしていた。

この試合はある意味で、現代の新日本プロレスを確立した試合だと言っても過言ではない。

何故ならば、先輩や多くのファンの疑問や不満に対して溜飲を下げた重要な一戦であるためだ。

鈴木みのる選手は「今」のプロレスとは何か。この道を示すために、棚橋弘至選手へと宣戦布告した。

棚橋弘至選手を中心に「過去」から脱皮を果たそうとしていたブシロード体制の新日本プロレス。

この日は余りにもドラマが多過ぎた。

まず、第1試合で長期欠場から中西学選手が復帰した。内藤哲也選手は高橋裕二郎選手に敗れ、長期欠場へ。

「G1クライマックス」初出場・初優勝を果たしたオカダ・カズチカ選手が権利証の防衛戦を行い、中邑真輔選手が「IWGPインターコンチネンタル選手権試合」で後藤洋央紀選手を退けた。

そして、メインイベントである。

「お前のせいで新日本プロレスが舐められている」と苦言を呈した鈴木みのる選手が棚橋弘至選手と対峙し、現代の新日本プロレスを魅せつける試合を展開した。

棚橋弘至選手が試合後に語った言葉は「泣いた赤鬼」。

ある意味で、鈴木みのる選手がプロレス王となるべく「祝福」を受けたターニングポイントだったのかもしれない。

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価値観

サーカス、曲芸。2012年の新日本プロレスについて先輩たちから指摘された痛烈な言葉。この言葉に対して、価値観の全面戦争を挑んだ棚橋弘至選手VS鈴木みのる選手の「IWGPヘビー級選手権試合」。

2012年10月に吹いた風は歴史を変えるほどのHigh Energyを生み出した。

試合の序盤は腕の取り合いのみ。棚橋弘至選手がタックルに入ると、グラウンドレスリングがはじまる。

派手で分かりやすい試合が増えた「令和」の新日本プロレスと比較すると、明らかに雰囲気が異なる展開で時間が進んでいく。

鈴木みのる選手はタイトルマッチまでに痛めつけた左腕を徹底的に痛めつける。

一点攻撃はプロレスの醍醐味だ。「まいった」を言わせるべくダメージを与えていく。

一本足のヘッドバットなど今では使わない技も次々と繰り出す。

過去を超えるために過去の技を出す。鈴木みのる選手はこの試合に懸けていた。

 

棚橋弘至が叫んだ愛

この試合はロープワークなし、最後までフォールもなしということで有名な一戦である。

アントニオ猪木VS藤波辰爾。武藤敬司VS高田延彦。

過去の名試合のメタファーを散りばめながら試合は終盤へと向かっていく。

張り手の打ち合いからバックに回ってのスリーパーへ。

ここで会場全体からの「落とせ」コールが響きわたる。飯塚高史さんの引退試合まで久しく聞くことがなかったコールが両国国技館中に鳴り響く。

「てめーのプロレスそんなもんか!?」

何発平手を貰っても前へ前へと向かう棚橋弘至選手。

引くどころから前へ進み続ける。

プロレスは前へ前へ向かっている。

上や下はない。左右に振り幅を広げ続けている。

どの方向が正解なのか。団体の象徴がその船の行き先を決める。

この時から7年が経ち、現在の新日本プロレスの象徴はオカダ・カズチカ選手へと移り変わりつつある。

だが、ここで過去の新日本プロレスと向き合い、乗り越えたからこそ棚橋弘至選手はいつまでも頂点を目指し続けることができるのだと思う。

——かなり前半戦のところで、ヒジを鈴木選手にやられて、苦しい闘いだったと思いますが、試合を振り返っていかがですか?
棚橋「厳しい闘いだったけど、実は、試合前に“憎しみ”みたいな気持ちは消えてて。っていうのは、昔から、昔ばなしの“泣いた赤鬼”ってのが、スゴイ好きで。赤鬼のために、青鬼がね、悪役を買って出るあの気持ち。俺、スッゴイ青鬼が好きだったんだけど、なんかその青鬼と、鈴木みのるがダブって。ま、性格が悪いことには変わりないんだけど、なんか、そんな感じでしたね」
——鈴木選手の存在も、また一つ、この新日本で、棚橋選手が輝くための布石のようなものだったのですか?
棚橋「鈴木みのるが怒ってたのは、俺じゃなくて。ましてや、今のプロレス、鈴木みのるがいう“プロレスごっこ”ではなくて。それに、文句をたれる、たれないでしょ?俺はもうわかったから。本当の敵はね。ただ、俺が考えて欲しいのは、そういう人達も、プロレスに出逢ったから、プロレスに入門したから、今があるわけで。自分一人で、スターになれるわけないから。みんながいて、ファンがいて、そして対戦相手がいて、『そういう気持ちがなんでなくなっちゃうのかな?』って。俺は、年取って、引退したとしても、プロレスを今も昔も、『面白いぜ!』って、きっと言うから。そういう気持ちです」
——そこまで、プロレスに向けて、棚橋選手の気持ちを突き動かすもの、それは何ですか?
棚橋「愛です!」

出典:新日本プロレス

 

鈴木みのるが語った現代

新日本プロレスひいてはプロレスの未来は今を生きているレスラーにしか紡ぐことはできない。

であれば、先人たちは変な意見を呈さずに今のプロレスを見て欲しい。

「どうだ!?今のプロレスは!」

そう言わんばかりの激しい試合を行った後に鈴木みのる選手はバックステージでこう語った。

なんとか言ってみろコノヤロー!別によ、痛くもねぇしよ、痒くもねぇんだよ、あんなヤツの攻撃よ。効いた技なんて1つもねぇぞコノヤロー!未来はよ、未来の人間にしか作れねぇんだ。過去はよ、もう過去に生きた人間にしか創れねぇんだよ。俺達には無理なんだよ。だけどな、今はな、現代はな、こうやって命と体張ってる、俺達が創るんだよ。俺達しか作れねぇんだよ。ウダウダ言わねぇで、テメーら最後まで見届けろ。それと、今日こうやって集まったプロレスファン、最近ファンになったヤツ、ずっと昔から見てるヤツ、幸せに、有難く思え!鈴木みのると同じ時代に生きてるんだ、有難く思えコノヤロー!フン!あ〜あ、痒かった!なんか言うことあるか?俺が『俺はプロレスラーだ』と言って、気に食わないことあるか?見たか、これが“現代”のプロレスだ!文句言わせねぇぞコノヤロー!

出典:新日本プロレス

誰にも文句は言わせない。俺が。俺たちが最先端のプロレスをやっているんだ。

黙って楽しんでりゃいいんだよ。痛みを知らないやつがプロレスをバカにしてるんじゃねぇ。

そんな言葉をGK金沢さんに語ったことがあるそうだ。

 

この試合の意味

昨今の新日本プロレスは一度波乱が起きるとすぐに一部のファンがアレルギー反応を示し、SNSが荒れている印象を受ける。

「この展開は気に入らない」

「あの選手が選ばれている意味が分からない」

学校や仕事や人生って、そんなものではないだろうか。納得ができることの方が少ない。

ただ、自分の中で少し見方を変えれば、溜飲を下げ楽しむことだってできるはずなのだ。

ジョン・モクスリー選手がこの時の背景までを知っていたかは分からない。

ただ、この一戦をこのタイミングで出してきた意味。その意義はたしかに受け取った。

新日本プロレスは常に変化している。令和に突入して以降、タイトルマッチの前には前フリが組み込まれるようになった。

少しずつ、少しずつ変化している。

その変化を楽しめないと、せっかくプロレスという最高のエンターテイメントを好きになっているのに勿体ないと僕は思う。

 

有料部分にも関わらずこのツイートをした担当者へ敬意を払い、本文を締めくくりたい。

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