棚橋弘至が呼び覚ました“本物”のKENTAとは

棚橋弘至が呼び覚ました“本物”のKENTAとは何だったのか。

改めてその答えを紐解いてみたいと試合後に色々と見聞を広げてみた。

新日本プロレスの真夏の最強戦士決定戦「G1クライマックス29」が開催される直前、“ソウルメイト”である柴田勝頼選手と共に姿を現したKENTA選手(ヒデオ・イタミ)。

プロレスリング・ノアを経て、現在は中邑真輔選手やKUSHIDA選手が活躍しているWWEに挑戦。ただし、圧倒的なスーパースターとなる夢を叶えられぬまま退団の道を選び、今回新日本プロレスへの参戦が決定した。

ただし、他の参戦レスラーたちが「G1クライマックス29」にエントリーするに当たり、実績を残している中でKENTA選手のみが何もないままに出場が決まってしまった。

ギリギリまで粘ったYOSHI-HASHI選手やユニットのボスであるにも関わらずエントリーされることがなかった鈴木みのる選手。

海野翔太選手などの若手をエントリーさせるべきだと勇退した永田裕志選手も苦言を呈していた。

そのまま突入した公式戦で、いきなり飯伏幸太選手から白星を飾ったKENTA選手。

ただし、その試合内容は柴田勝頼選手のメインから見れば「ヒデオ・イタミが半分残っている」というものであり、棚橋弘至選手から見れば「迷子」に映ったようである。

アメリカから日本で舞台を移し、大田区区民会館は満員御礼の札止め。

「G1クライマックス29」Aブロック第2戦。メインイベントは新日本プロレスのエース棚橋弘至選手VS KENTA選手だった。試合を通じて、KENTA選手の本質を呼び覚ました棚橋弘至選手。

僕は、勝敗を超えた先にあるプロレスの奥深さを魅せる試合だったように思う。

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柴田勝頼の御前試合

棚橋弘至選手とKENTA選手の試合がはじまる直前、現在は新日本プロレスのLA道場でヘッドコーチを務める柴田勝頼選手が姿を現し、実況席に座った。

2018年の「G1クライマックス」優勝決定戦で姿を現し、棚橋弘至選手の元へ勝利の女神を呼び込んだ柴田勝頼選手。

今回はセコンドではなく、中立な立場で試合を見たいと、VIP席に座った。これはファンにとっては非常に贅沢な出来事であり、画面から目も耳も離すことができない時間になることが決定した瞬間だった。

「的確じゃないすか?」と柴田勝頼選手は語った。

「俺が連れてきたのはヒデオじゃなくて、KENTA。本人の中で意識して欲しい。あの頃のKENTAとして戦って欲しい。棚橋弘至もその辺りが分かってるから『迷子』って言ったんじゃないですかね?」

 

引き出したかったもの

KENTA選手について調べていくと、高山善廣選手に恐怖心を与えたほどの壮絶な試合が出てきた。

そう、KENTA選手の持ち味とはピリッとした空気感であり、ハードヒットのバチバチ感。そこに天性のおちょくるスキルが加わることで、ファンは彼の攻めから目が離せなくなっていくのだろう。

棚橋弘至選手はロックアップ後に張り手を見舞われ、張り手を返した。

このアクションがKENTA選手の中にあった「迷子感」を無くしたのかもしれない。

そう、プロレスリング・ノアを牽引する存在として、輝きを放っていたあの頃を。

KENTA選手はオカダ・カズチカ選手が2012年に続きMVPを連続受賞した2013年のプロレス大賞で殊勲賞を受賞している。

当時は「GHCヘビー級王者」としての功績を称えてのものだった。

「確かに体は小さいし、ジュニアだと言われちゃうかもしれないけど、覚悟とか、使命感だったら、そのへんのデカイ奴に負けないんで」

決意の言葉とチャンピオンとしての実績。試合勘は多少鈍ったとしても変わはなかったのがマイクだったように思う。

 

戻った先の魅力に期待

肉体の小ささはハンデではない。KENTA選手がより強くなるために必要だった素養である。

あの日、見えてこなかったKENTA選手の気持ちを棚橋弘至選手が映し出した。

その結果、「G1クライマックス28」の優勝、準優勝者から連勝することに成功したのだ。

セルリアンブルーのリングめメインイベントを締めたKENTA選手のマイクは非常に流暢だった。

エアギターと「愛してます!」を楽しみにしていたファン。時間的に帰宅の途に入る方もいる中で堂々とした喋りを見せた。

試合とマイク。両輪でファンの溜飲を下げ、己の力で全てを納得の方向へ導く。

多くの新日本プロレスファンの期待を背負って結果を出したKENTA選手だが、柴田勝頼選手の目から見れば及第点といったところだったのだろうか。

「まだまだKENTA選手はこんなものじゃない」

そう感じていたのではないだろうか。その証拠に柴田勝頼選手は試合について絶賛はしなかった。

「アイツならこれくらいできて当たり前だ」

柴田勝頼選手の中では、想像の範囲内に留まった印象を受けた。

 

いや、もうスゲー充実してるな、しかし。『どんなもんか』つって俺を見定めしてるような人たちもいて、スゲー緊張感で。これすらも、今までなかったから。こういう緊張感の中でできることを、今一度幸せに感じて、期待に応えて。期待イコール優勝目指して……いや優勝して、また帰ってきたいと思います

出典:新日本プロレス

柴田勝頼選手が行き場を失った名レスラーを導いた。棚橋弘至選手が試合を通じてKENTA選手の灯りを灯した。もう、迷子ではない。

そして、昨日の敵は今日の友。対角線に立っていた棚橋弘至選手とKENTA選手が北海道の大地で同じコーナーに揃い立つ。

相手側のコーナーは「鈴木軍」金丸義信選手がいる。こんな面白い展開は中々ないだろう。

これからは己の道を進むのみ。新日本プロレスのKENTA選手が好勝負を連発することを切に願う。

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