タイチが内藤哲也に大勝利!飯塚高史との悲願達成
タイチが内藤哲也に大勝利!飯塚高史との悲願を達成した。
新日本プロレスでヘビー級に転向以降、はじめてシングルで内藤哲也選手を破ったタイチ選手。
その胸中には同じ北海道で生まれた飯塚高史さんの顔が浮かんでいたに違いない。
タイチ選手はそうまでして、内藤哲也選手に勝ちたかった。いや、絶対に否定するだろうが、勝つことで恩を返したかったのだと思う。
「俺の夢は新日本プロレスの主役になること」そう語った内藤哲也選手。主役には最高のライバルが必要だ。
そう、内藤哲也選手最大のライバルはタイチ選手なのかもしれない。
「素晴らしい選手だってことは知ってるよ。でも、一歩踏み出す勇気も必要なんじゃない?」
タイチ選手は完全否定するものの、世間的には内藤哲也選手の言葉が呼び水となり、ジュニアからヘビー級へと戦線を移したタイチ選手。
新日本プロレスはジュニア、ヘビー共に激戦区。転向したからと言ってもすぐに結果や大抜擢が待っているような場所ではない。
そんなファンたちからの目を「試合内容」だけでひっくり返したのが「鈴木軍」“愛を捨てた聖帝”タイチ選手である。
「お前が拳王なら俺は聖帝だ」
そんな流れで決まったキャッチコピーが板につき過ぎるほどの名レスラーとして一躍ファンの心を掴んだように思う。
事実、僕のコラムのタグを見てもタイチ選手はなんと棚橋弘至選手と並ぶ2位タイ。
どんだけタイチ選手のことを僕が書きたいんだよ?という声はさて置き本題に入ろう。
新日本プロレス真夏の最強戦士決定戦「G1クライマックス」北海道のメインイベントは「IWGPインターコンチネンタル王者」内藤哲也選手VSタイチ選手だった。
リベンジマッチ
試合開始のゴングが鳴り響くと両者ロックアップをすかし合う。
駄々っ子のようにリング中央で、手足をバタつかせる内藤哲也選手はいきなりタイチ選手を丸め込み。ここから一気に試合のペースが上がっていく。
場外戦ではあべみほさんに睨みをきかせて、怯ませる。あの至近距離で内藤哲也選手に凄まれほぼ半泣き状態になるあべみほ嬢。
“制御不能”な男が「楽しい」と語ったタイチ選手との試合。邪魔するものは誰であっても容赦しないのである。
指先一つであべみほさんをダウン(心理的に)させた内藤哲也選手だったが、ここからはタイチ選手のターンへ。
ノラリクラリしながらも強烈な打撃を見舞いつつ、内藤哲也選手を挑発していく。
「来てみろコラ!いてぇじゃねぇかコラ!」
と身体の厚みを増したタイチ選手は内藤哲也選手を前にして全く怯むことなく、優勢に試合を進めていく。
G1クライマックスに選ばれた男
タイチ選手はヘビー級転向後、一気に新日本プロレスのスターダムへと上り詰めた。
新日本プロレスの旗揚げ記念日では内藤哲也選手、「ニュージャパンカップ」では棚橋弘至選手を相手に好勝負を連発。
誰もが「G1クライマックス28」にエントリーするものだろうと踏んでいたが、まさかの落選。
本件は世紀の大誤算と呼ばれ、近年の新日本プロレス史に刻まれるエピソードとなった。
ここからタイチ選手は2018年と2019年に「NEVER無差別級ベルト」を戴冠するなど、ベルトホルダーとしても団体を牽引する存在となって行った。
ようやくたどり着いた「G1クライマックス」の舞台。エントリー発表時の歓声はどの選手よりも大きなものだった。
デンジャラスT
パンタロンを脱ぎ捨てショートパンツ姿になると、デンジャラスバックドロップを見舞い、「来い!!!!!」と叫んだ。
が、誰も出てこない。
引退した飯塚高史さんは出てこない。
そして、タイチ選手はアイアンフィンガーフロムヘルを装着。内藤哲也選手を強襲するも、不発に終わってしまう。
内藤哲也選手の攻撃を受けきり、2018年の春以来にあの技が飛び出した。
「ニュージャパンカップ2018」で棚橋弘至選手に見舞って以降、約一年半ぶりの三冠パワーボムが大炸裂。
内藤哲也選手はグロッキー状態に追い込まれるも、最後の力を振り絞り技を叩き込みまくる。
そして、タイチ選手が正調式デスティーノをブラックメフィストで切り返した。
アイアンフィンガーフロムヘル
再びアイアンフィンガーフロムヘルを装着したタイチ選手へバレンティアを見舞い、3カウントを取ったかに見えたが、レッドシューズ海野レフリーはグロッキー状態。
ここで、タイチ選手が起死回生の行動に出た。
三度目の正直となるアイアンフィンガーフロムヘルを装着。
そして、一線!
ラストはタイチ式ラストライドからの川田式エビ固め。
とうとうタイチ選手が内藤哲也選手からヘビー級のシングルマッチで初となる勝利を奪った。
飯塚高史の生まれた地で
飯塚高史さんが引退したあの日以降、常にタイチ選手はアイアンフィンガーフロムヘルを所持してリングに上がっていた。
同じ北海道出身でタッグパートナー。ニヤニヤしながらも心の中で通じるものがあったのかもしれない。
そして、機が熟し怨念坊主が地獄の爪に乗り移ったのだ。タイチ選手は激闘を制した後、こう語っている。
アァーアァーアァー…!(※アイアンフィンガーを手にコメントスペースペース内を飯塚のように暴れ回る)。危ねぇな、これ着けてると……(※と言って、アイアンフィンガーをアームカバーにしまいながら)危ねぇ。頭おかしくなっちゃう……。(ここに)しまって……。帰ってくれ……。鎮まってくれ、頼む……。なんか、どうやら、これの力かな? 俺の力じゃないものが宿って……。今日は、『G1』かもしんねぇな。でも、俺と飯塚の闘いは、続いてたんだよ。それを今日、場所も同じ(ところで)カードが組まれて、さぞかしこれで、こいつが成仏できるだろうよ。これで、ホントにあいつが引退したっつんだったら、そうなるかもしんねぇな、今日で。まあ今後、俺の守護神になるかもんねぇし、それはどうなるかわからない。まあ、これからも(アイアンフィンガーを)持ち続けるよ。今日は(飯塚本人は)来なかったみたいけど、またどっかで来るかもしんねぇからな。やあやあやあ、どうだ? どうだ? どうせ今日もまた、俺が負けるとか思ってたんだろ、この野郎? 初出場、ナメてんのか、この野郎。お前ら、何もわかってねぇよ。これこそ、『G1 CLIMAX』だ。この意味わかるか? 全部、俺が変えてやる。俺が中心にな。このあとも、楽しみにしとけ。全部だ、全部。とりあえず1人、チャンピオン倒したぞ。あと1人(チャンピオンが)いるな。楽しみにしとけ
タイチ選手は先日の大田区体育館以降、アイアンフィンガーフロムヘルと交信しているシーンが目立つようになった。
飯塚高史選手は喋ることすら出来なかったはずだが、タイチ選手は一体何を聞いているのだろうか。
そんな野暮なことは置いておいて、タイチ選手が一歩踏み出してから約一年半。
獣神サンダー・ライガー選手が語っていたように、もやはジュニアのイメージは既に薄れつつある。それほとまでにタイチ選手はヘビー級戦線で実績を残し続けてきた。
ミラノコレクションA.T.さんと別れ辿り着いたメキシコが1人のレスラーとして最初のターニングポイントであるならば、二度目のターニングポイントはヘビー級戦線への参戦になるのかもしれない。
「鈴木軍」という最強の軍団に流れ着いたのも勿論大事。
内藤哲也選手に勝利し「これがG1クライマックスだ」と叫んだタイチ選手は心からの笑顔を浮かべていた。
その顔を見て、ミラノコレクションA.T.さんは感極まっていたように見えた。
地元・北海道で色々な人々の想いを背負って戦ったタイチ選手。その肉体は分厚く、この先も続くチャンピオンとの試合を期待させるものとなった。
タイチ選手の「G1クライマックス」はまだこれからだ。