オカダ・カズチカのGET SPORT。その素顔が素朴で素敵で泣けた
オカダ・カズチカのGET SPORT。その素顔が素朴で素敵で泣けた。新日本プロレスで事実上のトップに君臨する“レインメーカー”オカダ・カズチカ選手。
2017年のサクラジェネシスで柴田勝頼選手との「IWGPヘビー級選手権試合」に挑んだ際、実況席に座った野上慎平アナウンサーは若き完全無欠の王者をこう紹介した。
「カッコよくて、華やかでオシャレで。そして、誰よりも強い」と。
そう、オカダ・カズチカ選手はプロレスラーという職業がどう見られるのか?についてとことんお金をつぎ込んでいる。
ヘアメイクは表参道の一級美容師が担当。愛車はフェラーリ488GTB(3000万円以上)。
金の雨を降らす男はまず、自分が率先して使う事を心掛けているようにも思う。
そんな常に新日本プロレスでトップを走り続けてきたオカダ・カズチカ選手の素顔にスポットライトを当てた密着ドキュメンタリーが2019年9月1日に放送された。
まず、番組が始まると普段のリングでは見ることのできないレスラーからの賛辞が飛び出した。
「IWGP US ヘビー級王者」ジョン・モクスリー選手は「究極の超人」だとオカダ・カズチカ選手を評価し、同じ「CHAOS」の後藤洋央紀選手は「天才」だと漏らした。
そんな新日本プロレスいや日本のプロレス界を背負って立つ男オカダ・カズチカ選手が普段見せない素顔とはどんなものなのか。
オカダ・カズチカ密着40日 黄昏の騎士について書いていきたい。
プロレスラーとしてこだわるもの
オカダ・カズチカ選手の入場を振り返ってみると、ヤングライオン期間と2018年の赤髪バルーンお兄さん時代以外は全て煌びやかなガウンが印象的である。
想像もしていなかったのだが、あのガウンは20キロという重量らしい。ただ、重さの分だけカッコいいとも言える。
そう、レインメーカードルが降り注ぐ花道で颯爽と歩むオカダ・カズチカ選手は他のどの選手よりも映えるのだ。
テレビで見ても伝わるが、会場でオカダ・カズチカ選手の入場シーンを見るとお世辞抜きで「半端じゃなくカッコよく見える」。
そんな入場でオカダ・カズチカ選手がこだわっているのが、非日常を見せることだという。
会場に来たお客様に対して、「夢の中にいたよう」と思わせる。それがオカダ・カズチカ選手のこだわりなのだ。
191センチ、107キロ。動けるジャイアント馬場さんを目指せと言われた男はアントニオ猪木さんが創設した新日本プロレスのトップに君臨する。
野球少年からプロレス少年へ
オカダ・カズチカ選手は1987年に愛知県安城市で生まれた。小学校、中学校と野球や陸上に打ち込むと脚の速さは愛知県内でも一目置かれるまでに成長していたという。
ただ、そんな少年岡田にも転機が訪れた。ゲームがキッカケで自身が最も輝く場所を見つけてしまったのである。
ドクトル・ワグナーJr.選手とシルバー・キング選手というメキシコ人兄弟レスラーがオカダ・カズチカ選手を魅了してしまった。
その心の揺れは中学を卒業後にプロレスラーを目指すため、日本を飛び出しメキシコ渡るまでに大きなものとなった。
と、ここまではオカダ・カズチカ選手の中でも有名な話である。番組が大きく動いたのはここからだ。オカダ・カズチカ選手が「気づいたらヒザがどんどん痛くなってきた」と語ったのだ
歩けないほどの痛み
全く想像すらしていなかったが、オカダ・カズチカ選手は足を引きずりながらでなければ、歩けないほどの爆弾を抱えているという。
睡眠を阻害するほどの激痛。あまりにも想像していなかったオカダ・カズチカ選手の裏側だった。
これまでの激戦は右膝の痛みに直結していた。「とにかく試合に出られる状態」を目指して治療を依頼する。
そもそも怪我をしない。常にトップコンディションで試合に臨んでいる。身体の強さも化け物級。
これがリングの上のオカダ・カズチカ選手なのだ。
例えどんな状況だとしても、カッコいいヒーローであり続ける。そう、ヒーロー、超人でい続けなくてはならない。
その根底にあったのは柴田勝頼選手との一戦だった。
言葉にできない
まさか自分の試合でそんなことが起きるとは。
たくさん泣いてました。
2017年。柴田勝頼選手との激闘の末起こってしまったアクシデント。
オカダ・カズチカ選手に対して、何かを伝えるように柴田勝頼選手は技を繰り出し、技を受け続けた。
この番組ではじめてちゃんと映し出されたあの日の試合は、3カウント後に柴田勝頼選手がオカダ・カズチカ選手へ何かのメッセージを送っているように見える。
試合後の柴田勝頼選手を待っていたのは、硬膜下血腫だった。5時間におよぶ手術で一命は取り留めたが、未だリングへの復帰はない。
今ではLA道場のヘッドコーチとして活躍しているが、あの日から既に2年が経っていたのだ。
オカダ・カズチカ選手はこの日の試合のことを今でも引きずっている。それは人間として当然のことのように思う。
当時を振り返って、技を出すことに恐怖を覚え、自分を見失っていたという。
「たくさん泣いてましたよ」
今でこそ笑顔で語っているが、そのアクシデントがオカダ・カズチカ選手の胸に深く深く刻み込まれている。
春を愛する人
そんなオカダ・カズチカ選手の転機になったのは2019年の「ニュージャパンカップ」決勝。柴田勝頼選手が解説席に座った試合である。
決勝の相手である「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」のSANADA選手を敗り優勝を決めると柴田勝頼選手の元へ駆け寄った。
柴田勝頼選手は元気よく拍手を行い握手を求めた。
「おめでとう」
ダメだ。このシーンで目頭が熱くなってきた。
ガッチリと握手を交わした2人。その後バックステージでオカダ・カズチカ選手は涙を流した。
金の雨を降らす男がザ・レスラーから受け取ったものは“プロレスラーとしての気高かさと美しさ”だった。
何度も「IWGPヘビー級ベルト」を懸けて抗争を繰り広げた棚橋弘至選手からは“団体を背負う強さと華やかさ”を。
「CHAOS」の兄貴分、現WWEのスーパースター中邑真輔選手からは“強さと独自性”を。
闘魂三銃士から多くのモノを受け取ったレインメーカー。
超人とは人を超えた存在なのではなく、人(自分)を越え続ける。そんな心の強さを持った存在なのだ。