棚橋弘至「近年にない苦しい試合」その意味を考えてみる

棚橋弘至「近年にない苦しい試合」その意味を考えてみる。

この言葉は余りにも深く、余りにも重たい。新日本プロレスを支え続けてきた棚橋弘至選手は今でこそ、温和で柔らかく自分に厳しい言葉とウイットに富んだジョークが印象的であるが、従来は他のレスラーに対しても辛辣な意見を飛ばすことも珍しくなかった。

例えば、新日本プロレスの至宝「IWGPヘビー級ベルト」を手にした中邑真輔選手に対して、「ストロング・スタイルの呪いにかかっている」と言い放ち、“レインメーカー”として凱旋帰国したばかりのオカダ・カズチカ選手には「実績ねぇじゃん?潰すよ?」と強い言葉を発した。

棚橋弘至選手の発する言葉。一挙手一投足には必ず意味がある。

プロレス脳の高さとメンタルの力で新日本プロレスいや日本のプロレス界を牽引し続ける男は意味のない発言をするはずがないのである。

新日本プロレスのエース・棚橋弘至選手をもってして近年の新日本プロレスで最も苦しい試合という評価が行われたこの一戦。

飯伏幸太選手とKENTA選手の試合を振り返りつつ、その意味を考えてみたい。

これは僕の仮説だが、おそらく棚橋弘至選手は新日本プロレスのエースとしてこの試合をぶった切ったように思う。

ハードヒットの厳しい試合もこれまで数多くあった。であれば、棚橋弘至選手が「苦しい」と表現した理由が必ずあるはずだ。

この言葉には、会場に集まったファンの満足度とは別にあるプロレスラー目線での評価が詰まっていたのではないだろうか。

棚橋弘至選手の真意に迫ってみる。

 

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飯伏幸太、地元・鹿児島県

CHAOSで新たに誕生したウィル・オスプレイ選手とロビー・イーグルス選手の極上のタッグ「Birds of prey」。その対角線に立った現「IWGPジュニアタッグ王者」石森太二選手&エル・ファンタズモ選手の試合は大盛り上がり。

シングルプレイヤーとして評価の高い4人がタッグマッチで激突。非常に素晴らしい試合だった。この試合については、明日しっかり書きたいと思う。

では、本題だ。

まず、前提として鹿児島県は飯伏幸太選手が生まれ育った故郷である。

事前にYouTubeで公開されたドキュメンタリー動画では上手く鹿児島弁が喋れないという上京後あるあるもありつつ、地元凱旋試合を楽しみにしている飯伏幸太選手の姿が印象的だった。

鹿児島アリーナは4004人の満員。新日本プロレス所属となった飯伏幸太選手のプロモーションが大成功した結果だろう。

この日、会場に集まったファンは飯伏幸太選手の試合を楽しみにしていた。

華麗な飛び技と打撃、スープレックス。プロレス少年が作り上げた「最強で最恐そして、最狂のプロレスラー像」を体現する飯伏幸太選手のプロレス。

だが、その予想を裏切られる試合が展開されてしまった。

棚橋弘至選手が言った「苦しい試合」とは言葉尻通りの意味ではない。

おそらくは入場直後から始まった飯伏幸太選手が自分のペースを掴むことができないことを指していたのだと思う。

 

20分経過!

「バレットクラブ」に加入したKENTA選手。試合開始のゴングを待たず飯伏幸太選手を強襲した。

更に先日から登場した権利証用のアタッシュケースで頭部を攻撃。この時点で不穏な空気は漂っていた。

「こんなもんで終われるか!」とゴングを鳴らすように指示する飯伏幸太選手。

ただ、ここから難しい展開となった。

KENTA選手のキックとソバット。そして、関節技。この繰り返しが20分ほど続く試合展開が続いた。

飯伏幸太選手はKENTA選手の執拗な攻めを受け続ける展開へ。

攻め返すも自分のペースを握ることができない。

タマ・トンガ選手とタンガ・ロア選手の乱入から石井智宏選手とYOSHI-HASHI選手の救出劇。ここが大きな山場だったと感じるほどに、KENTA選手が攻め続けていた試合という印象が残った。

そう、試合の中盤からは「G1クライマックス29」の初戦と同じような印象を受けたのだ。

 

神のプロレス

“棚橋”プロレスとはある意味でアントニオ猪木さんのプロレスを継承したかのように、観客の全てを自分の手の平に乗せるプロレスである。

攻めていても受けていても自分のペース。狙った通りに歓声を引き出すことすらできる。

以前にも書いたがヒール版“棚橋”プロレスの体現者がジェイ・ホワイト選手である。

匠な技と美しい肉体。アスリートプロレスと対局にある間のあるプロレスは「ゴクリ」と息を飲むプロレスである。

天性の才能によりアスリートプロレスもできる飯伏幸太選手であるが、棚橋弘至選手を神と呼ぶ以上、新しいスタイルへと進むことも視野に入れているに違いない。

闇の王、襲来。バックステージにて

これまでの飯伏幸太選手は棚橋弘至選手や中邑真輔選手、AJスタイルズ選手にとってのジョーカーだった。

天賦の才能を持った逸材。対戦相手から見ても好勝負が約束されるほどの実力者であり、華もある。

完璧すぎるほどのレスラーとなった飯伏幸太選手に対して、棚橋弘至選手は敢えて辛辣な言葉を語った。

僕が感じた「苦しさ」とは観客を手の平の上に乗せられなかったこと。試合中に喜怒哀楽を操れなかったことだと考える。

そして、2人の試合が終わった後に登場したのは、コスチューム姿のEVIL選手。「IWGPヘビー」を狙うといい続けてきた男にチャンスが訪れたのである。

闇の中に挿した一筋の光、星。飯伏幸太選手とEVIL選手の激突が今から楽しみである。

最後に、バックステージのコメントを掲載する。

アタッシュケースは白、青、シルバー、ゴールドになるのか。この点も期待したい。

 

ヤバい、ヤバい。あぁ~…。最初ね、ちょっと。最初のホントに、ハプニングはあったけど、こうやってまた権利証が戻って来ました。これはホントに、自分の力で、そしてみんなの力で、守ったと思います。僕はまだまだ終わってないんで。これからまだまだやることたくさんあるんで。いくらでもやりますよ。何回でもいいですよ。権利証、何回でも懸けてもいいですよ、はい。その前に、入れ物、ケース、新しい物にお願いします。まあ、個人的な願望を言えば、白、青、シルバー、ゴールド。この4つ(の色)が入った物。それだけです。もうそれ以上はいらない。(BULLET CLUBは)まあ、許せないですよね、もう。せっかくの地元だったんですけど…。でも、またこうやって、勝って、ここでコメントすることができて、ホントうれしいです。はい。とりあえず安心しました」
――それで、さっそくEVIL選手が挑戦をアピールしましたけど…。
飯伏「はい。いつでも。どこでもいいですよ、別に。どこでもやりますよ。いますぐはちょっとキツいから。次の興行でもいいですよ。いつでもいいですよ。僕だけが決めれることじゃないんで」
――本当に苦しい序盤の攻防の中で、鹿児島の声援というのは本当に凄いものがありました。あの声というのは、どういうふうに聞いていたんですか?
飯伏「その声ももちろん聞こえてました。もうどの地方も、いまもうプロレスが、新日本プロレス、プロレス界が、全体が盛り上がってると思うんで。それを感じましたね。地元だからっていう部分もあると思うんですけど、それ以外の部分も感じました。それが最高にうれしいです」
――その中であの大きな「飯伏」コール。今後に向けて、その声というのはどうして行きたいというのはありますか?
飯伏「そうですね。もっと、もっともっとプロレスを広めて行きたいんでね。まあ、その第1歩、『G1(CLIMAX)』優勝。次、次のステップですよ。まずこれ(権利証)を守りぬくこと。そして、その次が、僕にはあるんで。その次まで行きますから。だから必ず、次は防衛します。いつでもいいです。どうぞ。(ほかに質問は)なんかありますか? 大丈夫ですか? まあ、最後にちょっと。完全にこれは個人的な意見なんですけど。まあ、この場所で、そのカミゴェという技が生まれて、で、その技で(棚橋に)勝つことができて。そこに……見えましたね。

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