ヤングライオン杯優勝の行方が3選手に絞られた
ヤングライオン杯優勝の行方が3選手に絞られた。
単なるヤングライオン同士のぶつかり合いではなく、道場同士の尊厳を懸けた戦いが繰り広げられているヤングライオン杯争奪リーグ戦。
始まった当初、目を見張ったのはLA道場出身の“青い目”のヤングライオンたちが魅せたフィジカルの強さだった。
棚橋弘至選手ですら「フィジカルで戦えるのは上村くらい」と評したように、欧米人が持つ身体能力と筋肉量は過酷なトレーニングを経たヤングライオンをも凌駕してしまうほどだった。
その強靭な肉体を支えている以上に強いのが、柴田勝頼選手が徹底的に鍛え抜いたダイヤモンドのメンタルである。
男の魂を磨き上げた先にこそ存在しうる宝石を手に入れたLA道場のヤングライオンたちはこれまで野毛道場が輩出してきたレスラーたちとも違う魅力を放っている。
ただし、プロレスはフィジカルとメンタルが強ければ勝てるという者でもないのが現実である。
現在、勝ち点10点で優勝候補として残っているのは、野毛道場の海野翔太選手、成田蓮選手。LA道場からはカール・フレドリックス選手の3人。
3つの道場による連戦が続いたヤングライオン杯もいよいよ大詰め。運命の瞬間を迎える前に、3人についてしっかりと振り返ってみたい。
ジョン・モクスリーのパートナー
ヤングライオン杯が開催されると発表されるや否や、今回の優勝は海野翔太選手で間違いないという下馬表が広がっていった。
カワトサン選手やグレート・オーカーン選手がメキシコやイギリスで活躍している昨今、ヤングライオンの代表として飛び級したかのような話題の中に身を投じてきた。
「ニュージャパンカップ」へのエントリーやジョン・モクスリー選手と共に駆け抜けた夏。MOXの文字が刻まれたTシャツや革ジャンを見るたびに、彼の将来が楽しみになっていった。
ヤングライオンとしてのファイトスタイルも円熟味が出てきた。リング上で魅せる気迫も申し分ない。
ただし、ヤングライオン髙橋広夢選手と比較してみると、どうだろうか。海野翔太選手はあまりにも恵まれていることが分かる。
そう。海野翔太選手が秘めるポテンシャルとその魅力は、新日本プロレスやジョン・モクスリー選手を動かしてしまったのである。
ここは髙橋広夢(現、髙橋ヒロム選手)と大きく異なるポイントなのかもしれない。
髙橋広夢。レインボードリーム
スターになるのは髙橋広夢。そんな言葉が飛び出すのは決して珍しくなかった。
その答えは、自らチャンスを掴み取る姿勢にある。先輩に噛みつき、「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」にエントリーするために菅林会長に直談判するなど、ある意味で規格外のヤングライオンだっ
常に自分から話題を生み出してきた髙橋広夢選手と会社や誰かがチャンスを与えている海野翔太選手。
ヤングライオン卒業が本当のスタートなだけに、恵まれすぎている現状に少しだけ不安がないわけではない。はっきり言えばエリートなのだ。海野翔太選手は恵まれすぎている。
そんな彼を見ていると、いつか雑草に足元をすくわれるのではないか?と心配になる。
なので、優勝を飾って海外で修行するもよし。優勝できず挫折を知るもよし。どちらかの結果になったとしても、新日本プロレスに絶対欠かせない海野翔太選手のヤングライオン 杯は多くの人の記憶に残るものになると断言できる。
海野翔太選手は太陽が昇り、雨が降った後に現れた世代。つまり、新日本プロレスが未来へ羽ばたくために必要不可欠な漢なのだ。
蒼い炎。覚醒の時
ヤングライオン 売店争奪リーグ戦の初日と、2日目。ある事件が起ころうとしていた。海野翔太選手、辻陽太選手、上村優也選手らが惜敗を記録。野毛道場がLA道場もファレ道場の前に全敗を喫してしまうのではないか?一抹の不安がよぎった。
だが、そんなピンチを救ったのが、成田蓮選手だった。
因縁の相手であるカール点フレドリックス選手に必殺の成田スペシャル3号で快勝したのだ。
以前、辻陽太選手から「スープレックスに色気を出している」と一蹴されたフロントスープレックスで、野毛道場の危機を救ったのである。
まさに漢を魅せた瞬間だった。もしも、成田蓮選手が敗れていたら、野毛道場生たちの勢いが無くなっていた可能性だってあるのだから。
海野翔太との直接対決
先程も例に出した髙橋広夢選手であるが、彼は記者会見の現場に乗り込んで「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」への出場権利を掴み取った。
成田蓮選手には実力と棚橋弘至選手も認めるスター性がある。内側に秘めた闘志も申し分ない。
今回のヤングライオン杯で優勝するかしないかが、成田蓮選手のプロレスラー人生を変えてしまう可能性がある。
アピールすることの大切さ。実力。その両方を持つことで、プロレスラーはよりリングの上で輝くのだ。
成田蓮選手が海野翔太選手とカール・フレドリックス選手に対して、完全にリードしているのはリーグ戦を戦い抜く経験だ。
あの「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア26」を最後まで戦い抜いた経験は余りにも大きすぎる糧となっているに違いない。
海野翔太選手との一戦に負けたこと。この結果が優勝にどう響いてしまうのか。最後まで目が離せない。
LA道場と柴田勝頼。「喧嘩売りに来ました」
最後にカール・フレドリックス選手である。
柴田勝頼選手がヘッドコーチを名乗り出た当初のLA道場は、現地に道場を作ることで新しい才能を育て新日本プロレスに逆輸入しつつ、アメリカで“生え抜き”のスターを生み出すことが目的にあったように思う。
ただし、柴田勝頼選手がヘッドコーチに就任したことで、副次的な目標と野毛道場にも変化が生まれたのである。
柴田勝頼選手がぶち上げた裏テーマはおそらく今の新日本プロレスに“自分が信じる”新日本プロレスを魅せつけること。
ヤングライオンとは新日本プロレスを映す鏡でもある。これは先輩を見て、後輩が育つためだ。
新日本プロレスを辞めることが新日本プロレスだった柴田勝頼選手にとって今の新日本プロレスはどんな風に映っていたのだろうか。
「パフォーマンスしすぎ」
「フレッシュさがない」
「順番が逆」
など、柴田勝頼選手はヤングライオン杯が始まる前のインタビューで野毛道場のレスラーたちに対して、辛辣な意見を述べていた。
このインタビューがキッカケで完全に道場対抗戦の機運が高まっただけに、柴田勝頼選手は己が鍛え上げた3人と共に新日本プロレスへ再び「喧嘩を売りに来た」のだ。
今の新日本プロレスは海外団体との興行はあるが、日本の別団体から見れば、ほぼ鎖国状態にある。
新日本プロレスをもっと強くするためには、対立関係となる存在も必要。そのために選ばれたのが「オレタチガ LAドージョーダ!」と高らかに言い放つ爽やかなレスラーたちだった。
カール・フレドリックス
これはカール・フレドリックス選手に限った話ではないが、LA道場のヤングライオンたちは明らかに肉体とメンタルが凄まじい。そもそも目つきが違う。
野毛道場のヤングライオンがどんな技をしても、辛い表情すら浮かばないのは絶対に負けないというプライドの現れだろう。
肉体をどんなに鍛えても痛いものは痛い。ただし、痛みを我慢するメンタルを鍛え上げることで、痛みに対する抵抗はつく。
柴田勝頼選手は一体どんな練習をLA道場で行ってきたのか。僕はLA道場のレスラーたちに対して、フィジカル以上にメンタルに魅力を感じている。
そんな選ばれた存在の中でも、カール・フレドリックス選手は柴田勝頼選手が特に太鼓判を押している選手である。
恐らく実力では今回のヤングライオン 杯争奪リーグ戦ではトップに位置しているのかもしれない。
ただし、プロレスには経験が必要不可欠だ。ここに、海野翔太選手と成田蓮選手が優勝する勝機があるのかもしれない。
ただし、フィジカルとメンタルのみが結果を左右するのであれば...。LA道場に軍配が上がる可能性は高いのかもしれない。
それほどまでにLA道場出身の3人はヤングライオンとして完成していたのだ
決戦の地、神戸
約2年ぶりに開催されたヤングライオン杯。前回からガラッと顔ぶれも変わった。道場対抗戦という意味合いも変わった。
今の新日本プロレス、そして未来の新日本プロレスを楽しむためには、今回の大会は必ず見届けなくてはならない。
仮に優勝せずとも棚橋弘至選手のようなエースが登場する可能性はある。また、武藤敬司選手も優勝していない。中邑真輔選手は飛びたため、エントリーすらしていない。
ただし、優勝しなくてもいいということにはならないのだ。
ここで優勝して一気にスターダムへ上り詰める。海外遠征の切符を手に入れ、広い世界に旅立つ。
そんな若獅子を見るのが今から楽しみで仕方ない。
決戦の地、神戸。一体誰がトロフィーを手にするのか。優勝のインセンティブとして求めるものは何か。
明日を楽しみに待ちたい。