SANADAは涙を超え、新日本プロレスの希望となった

SANADAは涙を超え、新日本プロレスの希望となった。そんな言葉が飛び出す日は決して先のことではない。僕はそう感じていている。

改めて彼のプロレスについて思いを巡らす。

SANADAという天才レスラーにとってプロレスとは、抜群の身体能力を駆使しつつ考えながら進めるチェスである。

そう感じたのは、今にはじまったことではない。オカダ・カズチカ選手やザック・セイバーJr.選手、石井智宏選手らトップレスラーたちを肌を合わせる度に感じていたもの。

セルリアンブルーのリング上は多くのファンが注視する、華やかで非日常的な空間。裏側の努力など関係ない。

勝つか負けるか。カッコいいかダサイか。

SANADAというレスラーは痺れるほどにカッコいい。それはオカダ・カズチカ選手が繰り出した新技の前に砕け散ったこの日も同じだった。

「SANADAがまた負けた」言葉にするのは簡単だ。だが、「IWGPヘビー級王者」として、最多連続防衛記録、最長戴冠日数、最多防衛記録回数を持つオカダ・カズチカ選手が相手となれば話が違うのではないだろうか。

オカダ・カズチカ選手は棚橋弘至選手に負けて、涙を流した日から「IWGPヘビー級選手権試合」60分一本勝負の不敗記録を持っている。

反則介入の結果、内藤哲也選手に敗れたが介入がない試合でリベンジを果たした。

強すぎる王者。いつしか彼はそう呼ばれるようになった。

そのキッカケとなったのが2015年の東京ドーム。棚橋弘至選手は「あの日、オカダに主人公感が生まれた」と考察している。あの日“レインメーカー”は生まれ変わったのだ。

そして、ライバルに敗れたSANADA選手も悔しく涙を流した。全日本プロレスの先輩である「鈴木軍」のタイチ選手は「あいつ(SANADA選手)が負けたら後がない」と語っていた。

背水の陣で挑んだおそらく2019年最後の一騎討ち。軍配が上がったのは、「東京ドームを超満員にする」とマニュフェストを掲げたオカダ・カズチカ選手だった。

6人目のパレハが生まれた2018年から2019年へ。この日はSANADA選手が泣いた日として歴史に名を刻むこととなる。

 

f:id:yukikawano5963:20191016071408j:image

勝利を、勝利を

それぞれが花道を歩き“運命”が決まるセルリアンブルーのリングを目指す。絵になる男が2人並んだ。

満員の両国国技館のど真ん中でコスチュームを脱がずに歓声を欲しがる2人。今では“ライバル”という言葉が定着している“レインメーカー”と“Cold Skull”。

「IWGPヘビー級ベルト」を巡っては、2019年2度目のタイトルマッチになる。そして、「ニュージャパンカップ」や「G1クライマックス」でも激突してきた。

縁があったのか。縁が呼んだのか。オカダ・カズチカ選手が待ち望んだ同年代のライバル誕生は未来の新日本プロレスにとって重要なエピソードとなったように思う。

武藤敬司選手に憧れた男は直接薫陶を受け、新日本プロレスで躍動する選手になった。

 

これまでとは違う試合

ゴングが鳴ると同時にオカダ・カズチカ選手は仕掛けてきた。王者としての経験がそうさせたのだろう。

この仕掛けを紐解いてみると、勝利意外の理由しか思い当たらなかった。

両国国技館に集まったファンはお腹一杯、胸いっぱいになっていた。

エル・デスペラード選手の復帰。棚橋弘至選手、井上亘選手の20周年。タイチ選手の暴走。

鈴木みのる選手と獣神サンダー・ライガー選手のプロレス史に残る名勝負。エルファンタズモ選手の「バレットクラブ」リーダーコンボ。石井智宏選手とKENTA選手の因縁。ランス・アーチャー選手の「IWGP USヘビー級ベルト」初戴冠。

更には飯伏幸太選手をギリギリまで追い詰めたEVIL選手。

この日の両国国技館はあまりにも豪華だった。ほぼメインディッシュを休暇なしで8皿連続で食べた状態である。どんなに2人の対決を楽しみにしていたといしても、食べ疲れが起こっていた。

そんな空気を察知した結果、あの展開が生まれたのだと思う。SANADA選手も瞬時に対応した。その意図を感じ取った。観客の目の色を変えた数分の出来事だった。

オカダ・カズチカが新技を繰り出した理由

今回の試合でSANADA選手が敗れた理由は一つしかない。「G1クライマックス29」で勝利していたためだ。もっと細かく言えば、隠し技であるポップアップ式のTKOが見破られていた点にある。

同じ轍は踏まないからこそ、オカダ・カズチカ選手は完全無欠のチャンピオンであり続けたのだ。

そして、オカダ・カズチカ選手もライバル誕生により新境地へたどり着いた。

SANADA選手がオカダ・カズチカ選手を強くした。「これまで一番手強いオカダ・カズチカ」という言葉の裏には今回の新技があったのだ。

新日本プロレス公式スマホサイトには「変型パイルドライバー」と記載されている。

ツームストンパイルドライバーの体制から前に落とす。咄嗟の出来事に流石のSANADA選手もモロにダメージを受けた結果、正調のレインメーカーをダイレクトに食らった。

僕たちの希望は金の雨に濡れた。雨なのか、汗なのか。試合後、SANADA選手は感情を抑えきれなくなっていた。

漢泣き。

スクライドを彷彿とさせるほどの泣きっぷりである。

 

真田聖也ではなく

真田聖也からSANADAへ。僕が敬愛する方の言葉を借りれば、「同格だったの内藤哲也選手の下についた」のがSANADA選手の新日本プロレスデビューだった。

「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」はプロレス界全体を牽引するほどの人気ユニットとなっていた。個性は揃いのメンバーたち。そこでSANADA選手が選んだのは前に出ないことで個性を発揮することだった。

“Cold Skull”の名の通り、血の通っていないような雰囲気を作り出した。マスクマンよりも感情が見えない男。それがSANADA選手だった。

そんな彼が感情的になった。

2018年のイッテンゴ。「SANADAが喋った」が最大のサプライズだった。

2019年10月14日に「SANADAは泣いた」。ここから新しい景色が始まるのだ。

 

敗れた2人へ花束を

これは飯伏幸太選手に対峙したEVIL選手にも言えることだが、SANADA選手はオカダ・カズチカ選手に勝利するための準備を全て行ってきた。

2018年2月に「IWGPヘビー級ベルト」に初挑戦した時もそう。徹底的に完全無欠の王者を丸裸にすることで、勝利を掴み取ろうとしていたように思う。

二冠王どころかシングルでは「IWGPヘビー級ベルト」以外に目もくれない。そんなSANADA選手だからこそ、短期間で圧倒的な支持を得たのだ。

ただし、華やかでスマートな男は実のところ新日本プロレスでも全日本プロレスでもシングルベルトを戴冠したことがない。

「IWGPタッグ」、「世界タッグ」、「アジアタッグ」、「NEVER6人タッグ」などパートナーと栄光は何度も掴んできた。

TNAでAJスタイルズ選手が巻いたベルトは手に入れている。ライバルを倒すこと。新日本プロレスの頂にあるベルトを手中に収めること。その先に希望があるのだ。

ライバルストーリーはこれからも続いていく。目指すは2021年の東京ドームメインイベントだ。

涙を超えたSANADA選手に心から期待したい。

→【ランキング参加中】人気プロレスブログはここからチェック!【クリックで応援お願いします】

→NJPW FUNのTwitterフォローはこちら