なぜ、内藤哲也はプライドを捨ててタイチとの一騎討ちを選んだのか?
なぜ、内藤哲也はプライドを捨ててタイチとの一騎討ちを選んだのか?二冠王を手中に納めるためなのか。それとも別の目的があるのか。
2019年10月14日に開催された「保険見直し本舗 Presents KING OFPRO-WRESTLING」でタイチ選手の前に敗れた(試合はタイチ選手の反則負け)内藤哲也選手。
その翌日にタイチ選手とのスペシャルシングルマッチが発表されたが、非常に疑問が残る対戦カードとなった。
決戦の場は2019年11月3日の「保険見直し本舗 Presents POWERSTRUGGLE ~SUPER Jr. TAGLEAGUE 2019~」。2019年で3度目の激突となる。
現在の新日本プロレスにおいて「二冠王」というワードが持つ意味はとてつもなく大きなものとなった。
元々は新しいテーマを探し求める「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」“制御不能なカリスマ”内藤哲也選手が発した言葉。「IWGPインターコンチネンタルベルトを持ったまま、IWGPヘビー級ベルトに挑戦する」。制御不能な新世界を標榜する内藤哲也選手。「ベルトの価値を超えてしまった」と語った2016年の春から3年以上の月日が過ぎた今、どん底にまで落ちてしまった。
内藤哲也選手のラストチャンスの鍵を握るのはタイチ選手なのか。どういった状況を想定しているのだろうか。
あらゆる可能性を視野に入れつつ考えてみたい。
失速したカリスマ
「白を巻いたまま黒を狙う」。ただの二冠王ではない。内藤哲也選手が目指しているのは「IWGPヘビー級ベルト」と「IWGPインターコンチネンタルベルト」の同時戴冠である。つまり、別のベルトでは意味がないのだ。
さらに飯伏幸太選手との試合で生まれたもう一つ条件がある。「IWGPインターコンチネンタルベルト」が先。「IWGPヘビー級ベルト」が後。
白の金メダルと黒の金メダル。最高と最強。
ルールを守り、異なる価値観を持ったベルトを同時に保有するのはあまりにもハードルが高い目標だったのかもしれない。
事実、だ。内藤哲也選手は2019年10月時点でベルトも無ければ挑戦権利もない。
2017年は白の王者として棚橋弘至選手へ引導を渡した。2018年は東京ドームのメインイベントに立った。2019年は世界のスーパースターからノーDQマッチで白いベルトを奪還した。
“制御不能”となり、新日本プロレスの主役に立った男は飯伏幸太選手の予言通り「失速」してしまった。
偉業への第一歩
タイチ選手とのスペシャルシングルマッチにどんな意味があるのだろうか。内藤哲也選手に対して、相当上からの目線で暴言を吐いた聖帝だが、実際には彼も丸腰である。
「G1クライマックス29」でタイチ選手が破ったのは、ジュース・ロビンソン選手、石井智宏選手、内藤哲也選手。そして、後藤洋央紀選手だ。
一方で、内藤哲也選手を見てみると後藤洋央紀選手や石井智宏選手に勝利を飾っている。
つまり、次期「IWGPインターコンチネンタル選手権試合」挑戦者である後藤洋央紀選手にそもそも内藤哲也選手は勝っているのだ。であれば、なぜ今回のスペシャルシングルマッチの条件を飲んだのだろうか。
タイチの情
2019年10月14日の「保険見直し本舗 Presents KING OFPRO-WRESTLING」でタイチ選手は内藤哲也選手に対して、「新日本プロレスに対して、『ラストチャンスをくれ』と言え」と囁いたそうだ。
その翌日に発表された11月の大阪決戦。内藤哲也選手は当日の試合後「時間がないのは分かっている。ただ、俺は諦めない。うっすらとその道が見えてきた」と語っている。
つまり、タイチ選手の呼び水に蜘蛛の糸を見出したのだ。
理屈だけで紐解いてみよう。たらればだが、後藤洋央紀選手は鷹木信悟選手に敗れなければ、「G1クライマックス29」の決勝に駒を進めていた。
その鷹木信悟選手に内藤哲也選手は勝利している。タイチ選手は敗れている。そして、後藤洋央紀選手も10月のシリーズでリベンジを果たしている。
タイチ選手は「G1クライマックス29」で内藤哲也選手に勝利している。このリベンジがまだ果たされていないのだ。
つまり、ジェイ・ホワイト選手への挑戦という意味では、後藤洋央紀選手→タイチ選手→内藤哲也選手になる。あくまでも理屈上、だが。
タイチ選手が言っているラストチャンスとは、自分を倒すことができれば内藤哲也選手に序列を譲るとしうなのだろう。
ジェイ・ホワイト選手と後藤洋央紀選手の試合が終わった後にリングへと向かうのが内藤哲也選手とタイチ選手の勝者なのだ。
内藤哲也選手にとってリスクが大きい賭けだがリターンも大きい。
ほぼ東京ドームでのタイトルマッチを手中に納めると共に、イッテンゴでオカダ・カズチカ選手がタイトルマッチをすると公言している以上、白を巻いたまま黒に向かうことも可能だ。
勿論、飯伏幸太選手が勝った場合も同様。ダブルタイトルマッチは確実に開催される。タイチ選手を経た道筋。これが内藤哲也選手がうっすらと見えたものなのかもしれない。
「俺は優しいからな」聖帝は自身でも鬼ではないと語っている。これで自分に負けるようなら自ら内藤哲也選手に引導をわたす。愛を捨てた聖帝にはその覚悟がある。
一歩踏み出す勇気
最後に。なぜ、ここまで内藤哲也選手はプライドを捨ててまで「二冠王」を目指したのか。この点も考えてみよう。
2019年。「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」を牽引したのはSANADA選手と鷹木信悟選手だった。
「IWGPヘビー級王者」との名勝負数え歌。「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア26」リーグ戦全勝からの「G1クライマックス29」エントリー。
EVIL選手も「メード・イン・ニュージャパン」を掲げて、独自の路線へと進んだ。髙橋ヒロム選手の欠場中にメンバーはそれぞれの道で歩を進め、更に魅力的なユニットへと変化しつつあるのだ。
では、内藤哲也選手はどうだろう。「IWGPインターコンチネンタルベルト」を巡る戦いと「二冠王宣言」。これが現時点での2019年だ。
テッペンを取った内藤哲也選手は少しのジャンプアップではもはや計測不能な立ち位置にまで来てしまった。
だから敢えて茨の道を歩んだのかもしれない。「勝った負けた。そんな小さいことでプロレスをしていない」男は成功したとしても、ずっと栄光が続く訳ではないことを説いている。
挑戦しなければ新しい景色は届けられない。例えそれがどんなに難しいテーマで前人未到の領域だとしても成し遂げる。
そのために泥水をすする想いでタイチ選手が出した条件を飲んだのだと思う。
プライドを捨てた男は一番怖く、一番魅力的だ。2019年も残すところ2ヶ月。ここから内藤哲也選手の反撃がはじまる。
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