なぜ、内藤哲也はタイチを倒さねばならなかったのか

なぜ、内藤哲也はタイチを倒さねばならなかったのか。

新日本プロレスの秋が終わった。「保険見直し本舗 Presents POWERSTRUGGLE ~SUPER Jr. TAGLEAGUE 2019~」には5558人(札止め)のお客様が詰めかけ、サプライズ満載の試合を見届けた。

そう、内藤哲也選手が夢想転生を身に付ける瞬間を目の当たりにしたのだ。

制御不能なカリスマのままでは届かなかった。肝心なところで転び、二冠から無冠となった。だが、そんな彼を天は見ていたのだ。

「将星」を背負う漢。「鈴木軍」“愛を捨てた聖帝”タイチ選手である。

タイチ選手は内藤哲也選手にとって最後の希望だった。

今の内藤哲也選手を客観的に、制御不能になる前に、今の支持率があるというフィルターを外して見てみよう。どうだろうか。

今の内藤哲也選手は全盛期ほどの求心力や勢いがなくなっているのは誰でも分かっているはずだ。

それでも誰よりも応援されるのはこれまで内藤哲也選手が積み重ねてきたもの以外に他ならない。

そう、ちょうどいいタイミングでダヴィンチで連載中の内藤哲也物語も2016年に入ってきた。

内藤哲也選手がオカダ・カズチカ選手に敗れるも、会場全体を掌の上に乗せていた時代である。

あの頃から内藤哲也選手と「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」は大きく変わった。

アンチヒーローからダークヒーローへ。そして、ダークヒーローが行き着く先はヒーローしかない。ただし、ダークヒーローで人気を掴んだ男にとって、ヒーローの道は険しいのである。

さて、まずはこの話題から入っていこう。まずは制御不能という生き方についてだ。

 

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制御不能という生き方

内藤哲也選手がスターダムに登り詰めるために必要不可欠だったのがヒールターンだった。

「偉そうに言うな」そんなメッセージは十二分に承知の上で書くが、内藤哲也選手には棚橋弘至選手やオカダ・カズチカ選手ほどの華がなかった。

ただし、華がなかったわけではない。トップに立つほどの華がなかっただけなのだ。スターダスト・ジーニアスが期待されながらも一歩手が届かなかったのは、ここに原因がある。

ただし、赤く咲いた華に毒を重ねた時、これまでにないほどの美しさを誇る存在が生まれてしまった。

最初は誰も指示しなかった。ただ、気付けば全員が虜にされてしまった。華と毒で内藤哲也選手は天下を取ることを決め、急速に支持率を高めていった。

これは紛れもない事実だ。ただし、華と毒のハイブリットには一つ問題もあった。

 

プロレスに存在する格

他の競技になく、プロレスにだけ存在するもの。それは選手としての格である。格という唯一無二の概念があるからこそ、若手は先輩に勝てない。それほどまでに格が持っているパワーは大きい。

テッペンに立つレスラーは格としてもトップだ。そして、自分が勝利を掴んだとしても試合を通じて、相手レスラーに未来があることをお客様に伝えなければならない。

オカダ・カズチカ選手と対峙することで、ブレイクしたレスラーは数えきれない。AEWのケニー・オメガ選手など最たる例だろう。また、SANADA選手やウィル・オスプレイ選手もそう。みんなオカダ・カズチカ選手との試合を経て、支持率を上げていった。

では、内藤哲也選手はどうだろう。彼と試合をして「このレスラーは凄い」と呼ばれるほどに飛躍したレスラーはいるだろうか。

彼の持つ毒は相手レスラーの魅力以上に“自身の魅力”を際立たせる。そう、内藤哲也選手の課題はここにあったのだ。

つまり、内藤哲也選手は主役であり続けなければならない。そうでなければ魅力は必然的に下がってしまうのだ。※それでも爆発的な支持率であることは一切否定しないが。

 

 

聖帝の漢気

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改めて伝えておくと、深層心理を汲み取り新日本プロレスの頂点へと駆け上った内藤哲也選手は今回エゴを出してきた。

だが、そのエゴは以前のような民意(空気)を掴んだものではなかった。そう、偉業は偉業だが民意として二本のベルトを持った王者を見たいわけではないのだ。

内藤哲也選手が掲げた夢だから、“お客様”は応援する。ただし、以前のように内藤哲也選手が何を喋っても正しいとなる空気はもう無くなってしまっている。

内藤哲也の時代から新4強時代へ。移り変わる景色の中、聖帝だけは内藤哲也選手の本質を見ていた。

そう、タイチ選手は全てを知っていた。飯伏幸太選手が予言していたのは、「主役になってくれとファンから言われ続けた内藤哲也選手が本当に主役を目指してしまった時に起こる地盤沈下だったのだ。

制御不能になる以前は元々夢を追っていた男だ。誰よりも応援が欲しいし、大歓声を求めているに違いない。

野上慎平アナウンサーはあの日「主役になると言わなくなった漢に、主役になって欲しいとファンが叫んでいる」と語った。

この状況でいなければならなかった。内藤哲也選手は常に反体制にいるべきだったのだ。

ただ、できなかった。その結果「ダブル選手権試合」という自分の夢を語り始めた。

その結果はどうだろう。2016年、「ニュージャパンカップ」を制した頃ほどの輝きは無くなってしまった。

“お客様”という態度は無くなり「焦るなよ」とま言わなくなった。ただ、二冠を目指す男。内藤哲也選手は丸裸になりつつある。

それが、分かっていたからタイチ選手は勝負を挑んだのだ。

自分を超えた。この悲しみを背負わせるために。夢の男に愛、いや慈愛を背負わせた。

タイチ選手の狙いは、内藤哲也選手に悲しみを伝えること。そして、その先にある夢想転生への礎となることだったのだ。

 

漢気を受け取り頂点へ

前述した通り、内藤哲也選手は勝ち続けなければ、独自の立ち位置に居なければ全てを覆うほどの輝きを放つことはできない。

実際、今年のプロレス大賞にノミネートされるのかすら危ういところにまで来てしまった。ただ、悲観する必要はない。

いつだって内藤哲也選手は圧倒的な輝きを放つ全てを身に付けているからだ。

タイチ選手を葬った決め技は掟破りのブラックメフィストだった。

これはタイチ選手のオリジナル技ではあるものの、師匠である川田利明さんが海外遠征中に使用していたリングネームでもある。

タイチ選手は「律儀さ」で言えば、右に出るものはいないレスラーなのである(本人は絶対否定すると思うが)。自分をヘビー級へと招き、一つ上のレベルへと引き上げた内藤哲也選手。

彼が二冠を目指す過程でドロドロになっている。正直、「IWGPインターコンチネンタルベルト」へのリマッチ権は持っている。ただ、リマッチ権は彼がずっと否定してきたものでもある。

万策尽きた状態の内藤哲也選手に花道を作ったのは自らを犠牲にする覚悟すら持っていた聖帝だった。

夢想転生

タイチ選手との試合を試合を経て、内藤哲也選手は夢想転生を身に付けた。これでいつでも“掟破り”を行える状態になったのだ。

そして、“カミゴェ”や“ブレードランナー”すらコピーし、使用してしまうだろう。

もしも、本日15時からの会見で内藤哲也選手とジェイ・ホワイト選手の「IWGPインターコンチネンタル選手権試合」が決定し、イッテンゴでオカダ・カズチカ選手と飯伏幸太選手の勝者とのダブル選手権試合が組まれたとする。

その時に一番美味しいのは6人体制の「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」を初お披露目し、偉業を夢に持つ内藤哲也選手なのかもしれない。

 

内藤哲也選手が“制御不能”になって以降、ここまでの逆風が来ているのはおそらく、一人ロス・インゴ時代以来だろう。

悲しみを知り、それでも偉業を目指す。彼はブレていないのだ。新しい夢を追うことに対して、全くブレていない。

変わったのは周りからの見え方であって、内藤哲也選手は大きく変わっていないのだ。僕は夢を目指すいつもの内藤哲也選手を応援し続けたい。

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