SANADA流“二冠論”に正当性を感じた話
SANADA流“二冠論”に正当性を感じた話を書きたい。
2020年の東京ドームで、新日本プロレスの中心にある話題は「IWGPヘビー級ベルト」と「IWGPインターコンチネンタルベルト」の二冠戦だ。
現在ベルトを持つオカダ・カズチカ選手とジェイ・ホワイト選手、夏の覇者である飯伏幸太選手。そして、無冠で丸腰の内藤哲也選手。
この4人がファン投票の結果という後押しを受け「二冠戦」に向けてそれぞれが動き出している。
ただし、ファン投票の際投票数がある程度割れていたのも事実だ。
過去に例のない取り組み。新しい景色を見てみたいファン。
「IWGPヘビー級ベルト」、「IWGPインターコンチネンタルベルト」それぞれの価値を尊重する声。
全ての人々が同じ方向を向けないように、本件でも相入れないといった方がいるのも事実としてあるようだ。
そんな中、SANADA選手が東京スポーツのインタビューに応じて自論を展開した。
その内容は「SANADAは我が道をゆき、目指すべき“真の二冠”を決めたということだった。
2018年以降、SANADA選手はジワジワと新日本プロレスの中で存在感を発揮し、今でスマホのライトの光景を広げるや「俺からのギフトだよ」とキザなコメントを残し、会場から黄色い声援を浴びている。
4強がシングルベルトの二冠をぶち上げる中、SANADA選手が目指すのは「IWGPヘビー級ベルト」と「IWGPタッグベルト」の二冠王だ。
タッグの価値向上
偉大なレスラーはシングルでもタッグでも好勝負を残す。海外遠征中ですらほぼタッグマッチで戦ってきたはずの“ロッポンギ3K”YOH選手、SHO選手ですらシングルマッチともなれば、普段と違う試合運びは勿論表情すら浮かべるようになる。
“G.o.D”タマ・トンガ選手&タンガ・ロア選手のようにタッグが前提になっているユニットもする。一方で、SANADA選手とEVIL選手のように普段はシングル戦線で凌ぎを削り、ここぞというタイミングでタッグでも成果を残すレスラーもいる。
イチタスイチがニにならないのがタッグチームの見どころである。2人の絆が勝利を呼び込むシーンも決して珍しいものではない。
タッグにはシングルとは違った魅力がある。つまり、シングルとタッグの二冠王であれば、満場一致で民衆の支持を集められたのではないだろうか。
僕はなぜだかそう思っていた。
天才の2019年
SANADA選手の2019年をこのタイミングで少し振り返ってみたい。
春。新日本プロレスで最も美しい桜を特等席で眺めるための「ニュージャパンカップ」で準優勝。オカダカズチカ選手に決勝で敗れはしたものの、トレードマークのモヒカンや黒を基調にしたコスチュームをやめるなど、ビジュアル面で大きな変化を見せてきた。
真田聖也とSANADAの融合。それがこの春のテーマだったようにすら思える。
それでは夏はどうか。“ライバル”オカダ・カズチカ選手との2019年3度目の一騎討ち。負け続けきた天才が怪物へようやく一矢報いることに成功した。
30分一本勝負の時間ギリギリではあったが、確かな成果を残し、秋へと確かな望みをつないだ。
秋。オカダ・カズチカ選手と4度目の激突。「これまでで一番怖いオカダを見せる」と本人が語ったように、オカダ・カズチカ選手のベルトに対する意地は閃きが見えた試合だった。
あの日しか飛び出していない新技も出た。技を厳選して使うオカダ・カズチカ選手にしては珍し過ぎるほどの展開だった。
そして、冬。EVIL選手と再びタッグを組み「ワールドタッグリーグ2019」へとエントリーしている。今のところ勝率は驚異の10割。前人未踏の三連勝に向けて、天才と闇の王による快進撃が続いている。
そんなSANADA選手が散々興味がないと語っていた二冠戦に対して口を開き、シングルとタッグについて言及した。ここには意味があるのではないか。
価値を上げる
タッグの価値を高める。これはEVIL選手が散々口を酸っぱくするほどに言い放ってきた言葉だ。
「(IWGPタッグの価値を)爆発的に高めてやったぜ」と何度も耳にしてきた。
もしも、シングルとタッグのベルトを同時戴冠すれば、爆発的に価値が高まることは間違いない。
新日本プロレス全体のことを考えれば、SANADA選手の提案、目標設定は間違いないのだ。
ただし、「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」内藤哲也選手はそれをよしとしない。なぜならば、前人未踏ではないためである。
過去にもシングルとタッグのベルトを同時に戴冠したケースはあった。
つまり、歴史に名を残すことにはならないのだ。内藤哲也選手は二冠王になった後で口を開く。そこにタッグのベルトを持って挑戦を仕掛けるのは天才・SANADA選手だった。
そんな展開を想像しても楽しいではないか。SANADA流の王道をしっかりと見届けたい。
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