矢野通の日経「COMEMO」での連載で学んだこと

矢野通の日経「COMEMO」での連載で学んだことについて書きたい。

「日経COMEMO公式」で行われていた矢野通選手の連載が2020年1月10日の更新分で最終回を迎えた。

“敏腕プロデューサー”矢野通選手。2019年は「G1クライマックス」でジョン・モクスリー選手や内藤哲也選手、ジェイ・ホワイト選手を破るなどタイトルホルダーキラーっぷりを見せ付けると「ワールドタッグリーグ」でもコルト・カバナ選手とその実力を遺憾なく発揮した。

後半こそブレーキが掛かってしまったものの、準優勝チームであるSANADA選手&EVIL選手に“フィンジュース”ことジュース・ロビンソン選手&デビッド・フィンレー選手以外で土をつけた唯一のチームという結果を残している。

2020年は早々に真壁刀義選手、田口隆祐と長期戴冠を果たしていた「NEVER無差別6人タッグ」のベルトこそは逃してしまったが、まだまだここから。

“令和の大泥棒”はどこでも輝くチャンスを持っている。それではそろそろ感想に入っていこう。

“崇高なる大泥棒”、“敏腕プロデューサー”がビジネスを語る。

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矢野通マジック

本連載のコンセプトは「異色のプロレスラーから次世代のビジネスパーソンに必須なスキルを学ぶ!」というもの。

プロレスラーの常識をことごとく覆して今がある矢野通選手の姿勢から一体どんなことが学べるのだろうか。と、その前に改めて矢野通選手の魅力とは何か。この点について考えてみたいも思う。ここでは大きく3つ。紹介したいと思う。

矢野マジックと呼ばれる劇的な試合展開。続いて、全てがギャップと言っても過言ではないファイトスタイル。最後にリング外での活動だ。

まずは矢野マジックについて。

シングル、タッグ共に“誰に勝ってもおかしくない”のが、矢野通選手の魅力である。

2018年は「G1クライマックス」飯伏幸太選手とケニー・オメガ選手の2人から白星を飾っている。

2019年、2020年の東京ドームメインイベンターから同じリーグで勝利を掴んだ唯一の存在だ。また、2019年も今や“二冠王”となった内藤哲也選手から3分で勝利し、ジョン・モクスリー選手の日本デビュー以降初となる黒星を献上するなど、記録にも記憶にも残る試合を連発している。

2019年は新技“悪質タックル”が加わり、さらに凄みを増してきた。タックルのタイミングや丸め込み時の押さえ方など、繰り返し見ることで矢野通選手の“業”が見えてくる。

また、プロレスラーの大半が海外遠征から帰国後に独自性を出す中で、矢野通選手は気付けば最も強烈な個性を放つ側となっている。アマレス技を封印し、まともにロックアップも組まない試合を続けてきたことで、いわゆる普通の試合をするだけで、会場は大歓声に包まれる。

全てはギャップなのだ。そして、同じことを継続しない。

常に観客を裏切る。この姿勢にファンは魅了されるのだ。

 

フロンティア精神

アマチュアレスリング界では知らないものが居ないほどの猛者。全日本学生選手権王者。

あの中邑真輔選手や後藤洋央紀選手に対峙するだけで「怖い」と思わすほどの空気感を持っているのが矢野通選手である。

今でこそ、新日本プロレスの興行を明るく楽しくする役割も担っている矢野通選手であるが極悪非道なヒール時代があった。真壁刀義選手らとの「G.B.H」時代や「CHAOS」初期は今とは違うオーラを放っていた。が、徐々にキャラクターを変化させ今では何とも言葉にしにくい癖のある存在となっている。

最後にリング外である。水道橋でスポーツバーを経営するだけではなく、年に一度のDVD展開やこうした日経の媒体へ寄稿するなど、とにかく幅広い活躍を見せている。

42.195キロを走った後、プロレスリング・ノアのリングに上がり、その後経営する飲食店で接客をしていたという事実はもはや「レヴェェルが違う」というか人間離れした離れ業としか言いようがない。

オレ流ならぬヤノ流。矢野通選手のプロレスラーとしての生き様は奥深く、常に新しいことを開拓するフロンティア精神のもと刻まれてきたのだと思うのだ。

 

カッコいい男とは何か

今回の連載で矢野通選手は自身のことを「スターではない、イケメンではない、カッコつけは似合わない」と語っていた。

この卑屈な発想がセルフプロデュースの肝だと考えるのだから矢野通選手は面白い。自己表現

矢野通選手のユニークな点に触れてみよう。“敏腕プロデューサー”が最も面白いのは、これまでのアスリートと逆の状況を生み出したことである。

リング上で魅せる個性的なプロレスに“惚れ込み”、リング外での多岐に渡る活躍に“憧れる”。リングでの試合に憧れ、リングから離れた場所で惚れるポイントを作るのが従来型の存在だった。

だが、矢野通選手はこの2つを上手く逆転させることに成功しているのだ。相当に丁寧で慎重なブランディングと確かな実力。この2つが無ければ確実にこの逆転現象は起こらない。

勿論、リングで憧れを作る道もあったはずだし、一般的にはその戦略を取りがちだ。

ただ、矢野通選手は連載中でもこう語っている。

世間は言う。アマレス出身だから投げ技を使え!ストロングスタイルで真っ向から勝負しろ!
なるほどね、ラクでいいよね、没個性だけど。

そういった声はとにかく裏切ることにした。度肝を抜きたい、裏をかきたい、そんなことをニタニタとしたり顔で構想するようになった。バカ真面目なレスリング少年は、稀に見る捻くれ者として変貌を遂げ、セルフプロデュースの権化と化したのである。

ストロングスタイルはアントニオ猪木さんが提唱した概念である。そのお作法つまりはレールに乗れば、“いわゆる新日本プロレスのレスラー”になる。ただ、矢野通選手はそれをラクで没個性だと一蹴している。

本当の魅力と、本当にカッコいいとはどういうことなのか。そんな生き方を矢野通選手は伝えてくれているのだ。

 

カッコいいとはこういうことさ

カッコいい男とは確実に格好つけていないものである。ただ、カッコ付けない自然体でいることは案外難しいものなのだ。

人は持っていないことで卑屈になりがちだ。

学歴がない、お金がない、夢がない、いい仕事にもついていない。

これらは全てコンプレックスとなり、自分の身に降りかかってくる。そして、どんどんネガティブな発想になってしまう。

そんな現代人に対して、矢野通選手は連載を通じヒントを与えてきたのだと僕は思っている。

「無いものはしょうがない。じゃあどうするんだ!?」と。この「どうするんだ!?」という発想と行動することで人は徐々に変化していく。その結果、雰囲気が変わってくるのだ。

自分が持っていないことを発見できたら、むしろそれが長所になると考えてみる。そう簡単にできることではないが、考え方を変えてみることで、カッコよさが生まれていくのだと思う。

 

最後に。強さと魅力

矢野通選手は本業と副業の境目を取っ払った。リングを降りた時の青年実業家や登別市の観光大使という顔を持つ。はたまたカレーや鍋つゆもプロデュースしている。

現在、日本はパラレルワークを標榜し、副業や復業を推奨している。これは僕個人の主張ではあるが、そう簡単にできることではない。必ず“本業”の時間が削減されることになる。そのジレンマに苛まれる時が一年もすればやってくるのだ。

矢野通選手は違う。プロレスラーとしても100%。経営するスポーツバー“EBRIETAS”はオープン8年目を迎えた(10年間継続できる飲食店は約1割だと言われている)。

Y.T.RプロデュースのDVDだって次回作で9本目。多方面に進出して、多方面で成果を出す。

今回の日経「COMEMO」連載もそう。インタビューはあっても、プロレスラー自らが筆を取った連載となれば明らかに珍しい。更にはリングとは離れた内容で綴られているのもミソだ。

男性、女性問わず愛される強さと優しさ。そして、唯一無二のキャラクター性。

矢野通選手は新日本プロレスいや、プロレス界に革命をもたらせる存在として、これからもビジネスという場を席巻するだろう。

次はどんな場所に登場するのか。これからが楽しみだ。

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