オカダ・カズチカと内藤哲也の第1ラウンドに驚愕
オカダ・カズチカと内藤哲也の第1ラウンドに驚愕した。
今や新日本プロレスだけでなく、日本のプロレス界すらも背負って立つ最重要人物の一人となった“レインメーカー”オカダ・カズチカ選手。
今回は『IWGPヘビー級王者』としての初防衛戦に迫ってみたい。
棚橋弘至選手へ挑戦表明し、『IWGPヘビー級ベルト』初挑戦、初戴冠を実現したオカダ・カズチカ選手へ挑んできたのは、ヤングライオン 時代からの先輩である内藤哲也選手だった。
今から8年前となる「NJPW 40th anniversary 旗揚げ記念日」2012年3月4日。後楽園ホール で行われた『IWGPヘビー級選手権試合』オカダ・カズチカ選手VS内藤哲也選手。この一戦は今、このタイミングで改めて見るべき試合だった。
2020年、オカダ・カズチカ選手は内藤哲也選手に敗れた。レインメーカーがスターダスト・ジーニアスを潰し、“制御不能のカリスマ”が生まれた。その原点がこのタイトルマッチだったと僕は思うのだ。
金の雨
オカダ・カズチカ選手の入場時、後楽園ホール「金の雨」が降り注いだ。今のような土砂降りではなく、まだパラパラとした印象ではあった。ただ、空から金が降ってくるという演出は、オカダ・カズチカ時代を象徴するものであり、“レインメーカー”という二つ名にピッタリなものだった。
そう、この日のオカダ・カズチカ選手は若干24歳。中邑真輔選手の最年少記録には届かなかったものの、今で言えば現在の“ヤングライオン ”上村優也選手(25)や辻陽太選手(26)よりも若い。
圧倒的な身体能力とサイズ、パワー、甘いマスク、心肺能力。メキシコで身につけたルチャの基礎。ヤングライオンとして叩き込まれた闘魂。そして、アメリカで学んだ魅せ方。
そんなレヴェルが違う化け物以上の存在となって帰ってきたオカダ・カズチカ選手へ相対したのが、20代での『IWGPヘビー級ベルト』戴冠を目指していた内藤哲也選手だった。
レヴェルが違う、立場が違う
この一戦を改めて見てみると、2人の立ち位置が今とはまるっきり逆になっていることに気付かされる。
当時のオカダ・カズチカ選手は若くて生意気なヒール。場外でのツームストンパイルドライバーや油断させておいてのDDT。そして、最近では披露する機会がなくなったDID(DEEP IN DEBT)で一気に体力を奪う。
※メキシコでキャリアをスタートさせたため、複合関節技を熟知していることもオカダ・カズチカ選手の特徴なのだ
ニヤニヤと笑顔を浮かべて先輩である内藤哲也選手を挑発し続ける。
ヒールとしてのオカダ・カズチカ選手は非常に新鮮だ。今でこそ、相手の技を受けて、受けて、タイミングを見て反撃。相手の土俵に上がった上で圧倒する“横綱プロレス”がオカダ・カズチカ選手ならではの魅力である。
ただ、この時はヒールとして攻める、攻める。とにかく攻める。若き王者として、内藤哲也選手へ上から目線を崩さない。
試合後も「俺は本物だ!特にありません」とキッパリ。一度、外道選手がマイクを握れば会場の空気を一変する。
専属のマネージャーであり広報を携える。こうしたパフォーマンスも当時ならではであり、今とは全く違うオカダ・カズチカ選手を見ることができた。
ヒロイックさと時代
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では、内藤哲也選手はどうか。“スターダスト・ジーニアス”、努力の天才・内藤哲也として新日本プロレスの本隊に所属していた。
改めて、これは“制御不能”と化す2年前の話である。
オカダ・カズチカ選手とは対照的にベビーフェイスとして相手の技を受ける、受ける。機動力を活かして反撃に移る。
正統派ベビーフェイスであり、努力の男。夢を追っている自分を応援して欲しいというスタンス。
敢えて言ってしまうと、昭和・平成初期のヒロイックさが内藤哲也選手にはあった。
分かりやすいヒロイックさよりも、複雑な葛藤を抱えているダークヒーローが全盛の時代に、内藤哲也選手は選ばれることはなかった。
当時のアニメでも人気を博していたのは、サイコパス(Psycho-Pass)やソード・アート・オンライン。コードギアス以降、主人公に求められるものが少しずつ変わっていったように、明るく元気なキャラクターの熱血感じゃない男が求められる時代だったのだ。
もしも、新日本プロレスにオカダ・カズチカ選手がいなければ...。それでもこのままの内藤哲也選手にチャンスは回ってこなかったかもしれない。
それに気付いたからこそ、内藤哲也選手は根本的に何かを変えなければトップに立てないと判断したのではないだろうか。
オカダ・カズチカ選手と内藤哲也選手の第1ラウンドは今とは全く違う2人の関係が色濃く表現されていた。
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