プロレスの無観客試合が難しすぎる理由

プロレスの無観客試合が難しすぎる理由について書きたい。

現在、エンターテインメントの現場では無観客ライブへの取り組みが始まっている。

プロレスの分野でもそう。Takaみちのく選手の『JUST TAP OUT』は既に無観客試合を実施。新日本プロレスと同じくブシロード傘下のスターダムは、2020年3月8日に後楽園ホールで無観客の無料配信試合を開催する。

それぞれの場所で色々な取り組みがスタートする中、ここ『NJWP FUN』でも過去の名試合特集を行なっている。

今回のテーマは2015年11月17日に開催された「#大家帝国主催興行〜マッスルメイツの2015〜」。棚橋弘至選手&小松洋平(現YOH)選手VS HARASHIMA選手&大家健選手の一戦だ。

棚橋弘至選手がプロレスファン時代に最もエキサイティングした武藤敬司選手VS高田延彦選手のような試合が出来なかった憤りをHARA SHIMA選手へぶつけてしまったことから生まれた完全なる遺恨マッチ。さらには他流試合ともなれば、ファンが盛り上がらない訳もなく、当日の後楽園ホールには超満員御礼、札止めの観客が集まった。

無観客試合とは真逆。そして、観客の大切さや重要さがこれでもかと伝わってくる重要な一戦だったように思う。

この試合の特徴を一言でまとめるのならば、「実況なしの動画で感情的になってしまい涙腺が刺激されるほど」だとお伝えしておこう。それでは試合の詳細を説明していきたい。

 

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完成された歓声が生むうねり

DDTの大会に姿を現した棚橋弘至選手と“ヤングライオン”小松洋平選手。まず、入場曲が現在の『LOVE & ENERGY』ではなく『HIGH ENERGY』というだけで新鮮である。

が、会場からは大ブーイングが飛び交う。後述するが、棚橋弘至選手が発した言葉により、この日まで新日本プロレスとDDTは緊張関係にあったのだ。

選手の入場が終わり、美しく飛び交った紙テープを片付けている段階から凄まじいまでの歓声が飛び交う。

いよいよ試合が始まった。

小松洋平選手からのタッチを受け、棚橋弘至選手がリングイン。右腕をサッと上げると観客への歓声を煽った。

会場に巻き起こる大歓声。その音を文字にしたらこうなる。

「ブーーーーーーー!!!!」

普段と会場の音を拾うマイクが違うのか?会場の声援を大目に拾うための設定にしているのかと思ってしまう程に会場からのボリュームが違いすぎる。

棚橋コールや小松コールが一番から巻き起こっても、その声をDDTファンが一気にかき消す。

それほどまでにとんでもない歓声が飛び交う試合だった。

そして、会場からの声に呼応するように棚橋弘至選手と小松洋平選手が変化し続けていく。

棚橋弘至選手と小松洋平選手(現YOH選手)は天性のベビーフェイスである。

そんな2人が徹底的に“外敵”としてヒールのファイトに徹底している。新日本プロレスとは何か。ストロング・スタイルとは何か。そんなイデオロギーをHARASHIMA選手と大塚健選手、そしてセコンドを囲むDDTのレスラーたち、DDTのファンに見せ付けるような試合だ。

セコンドも真剣に戦っていた。大家健選手が棚橋弘至選手の胸へ数発打ち込み、カウンターのビンタを見舞われダウンした際などはすぐさま鼓舞する動きを見せた。

決して試合には介入しないが、この試合に懸ける意気込みがビンビンに伝わってくる。

試合が終わった後、男爵ディーノ選手が大塚健選手を抱きしめ言葉を交わしている。

何を喋ったのかは全く分からない。分からないが伝わってくるものがある。

「DDTの威信、看板、プライドを守った」その光景に思わず感情的になってしまうのだ。

 

小松洋平という若獅子

“ヤングライオン”時代の小松洋平選手がこの試合で躍動していた。

HARASHIMA選手の蒼魔刀を切り返し、逆エビ固めへ。その際に魅せる気迫が半端じゃない。

前述したヒールの雰囲気も相まって、期待に胸を膨らましつつこう思ってしまったほどだ。

当時から進化したYOH選手がヒールになったらどうなるのか?と。

パートナーSHO選手と相対する時、YOH選手は「キラーYOH」としての姿を魅せてくれるのを楽しみにしている。

 

プロレス界をもっと盛り上げる方法

棚橋弘至選手は試合後に突如、プレゼンテーションをはじめた。

新日本プロレスとDDTは棚橋弘至選手の発言を受けて、極度の緊張関係にあった。

今でこそ新日本プロレスは海外の一部団体を除き鎖国状態だが、2010年代はプロレスリング・ノアやDDT、全日本プロレスのリングに参戦するのは決して珍しい光景ではなかったのである。

団体対抗戦は爆発的な盛り上がりを生む。これは日本のプロレス史を見れば明らかなのだが、一度この果実を食べたら最後、観客はこの熱や対戦カードの豪華さを基準にしてしまう。

そのため、団体対抗戦は諸刃の剣だと言われている。それを承知で棚橋弘至はDDTとの友好関係を誓った。が、2016年の東京ドームで『IWGPヘビー級王者』への返り咲きに失敗したため、マニフェストは自然消滅したよう。

チャンピオンがやるから意味がある。棚橋弘至選手らしい反故だと思った。

 

お客様の存在

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この試合、とにかくお客様の声と熱が凄まじかった。僕も仕事でアーティストのライブに取材で入ったりするケースがあるのだが、その度に思うことがある。

ファンの熱意、この一瞬を真剣に楽しむという気概は会場全体に広がるものなのだ。

ステージのパフォーマンスと会場からの歓声が溶け合うことで、言葉では表現できないほどの空気が生まれる。

現場が最高だと言われる所以はここにある。

無観客試合が難しいのはここなのだ。最高の試合を作る、武藤敬司選手風に言うならば「作品を作る」上で大切なピースが欠けた状態で試合をすることになる。

盛り上がりを生むためには別の演出が必要だと言わざるおえない。

僕も少し考えてみたので、書き残しておこう。

大きくは入場とセコンドだ。

入場はより派手でセンセーショナルなものに。そして、すべての試合で同ユニットのセコンドをつけるということである。

団体対抗戦ではなく、ユニット対抗戦の色を濃くする。ランバージャックデスマッチではないが、常にユニットのメンバーがリングを取り囲んでいる状況を作り、無観客だとしても別の熱で補填する形を取る。

これであれば、無観客であっても無人ではないため熱を生み出すことはできるはずだ。

ベストな状態は会場に観客がいること。

当たり前なことが大切さだと改めて知ることができた「#大家帝国主催興行〜マッスルメイツの2015〜」をぜひ、チェックいただきたい。

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