SHOが完全覚醒した伝説の2試合を振り返る
SHOが完全覚醒した伝説の2試合を振り返る。
気付けば新日本プロレスのジュニア戦士の中でも、最も注目を集めるレスラーの1人になった「IWGPジュニアタッグ王者」“ロッポンギ3K”のSHO選手。
ヤングライオン時代はYOH(小松洋平)選手が一歩リードしている印象でした。が、メキシコ、アメリカを股にかけた海外遠征から帰ってきてからというもの評価と注目を集めるレスラーへと変貌しましたよね。
SHO選手の持ち味は類稀なるストイックさとプロレス力(ライバルとの作りを含む)。
そして、なんと言っても最高の武器は新日本プロレスのエース“100年に一人の逸材”棚橋弘至選手も認める主人公力でしょう。
不器用で真っ直ぐ、努力の天才。その姿はまるでジャンプ漫画の主役の如く。
今日はSHO選手の試合で特に想い出深い2試合を振り返ってみます。
一つは分かりやすいですよね。鷹木信悟選手との一戦です。
新コスチューム、新ヘアスタイル。そして、新入場曲のお披露目。全てを新しくして鷹木信悟選手から初白星を掴もうとした一戦です。
問題はもう1試合の方でしょう。
対戦相手は試合後に「あれは別に珍しくないよ。特に気にしないで欲しい」と、“Podcast”で語っていました。
それでは行ってみましょう。まずは、スーパースターとの一戦から。
迷ったら俺を見ろよ
2018年の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」。
BEST OF THE SUPER Jr.25 2018年5月27日 愛知・名古屋国際会議場・イベントホール 第7試合 「BEST OF THE SUPER Jr.25」Bブロック公式戦 KUSHIDA VS SHO。
試合開始直後からKUSHIDA選手への声援が多い印象です。
「クッシー!!」と飛び交う声を聞くだけで、嬉しいやら懐かしいやら色んな思いが交錯します。
この試合、何が異色だったか。何が印象に残っているのなと言われると、新日本プロレスのトレンドと真逆の試合だったことに尽きます。
グラウンドの攻防が8割。ロープワークは勿論、飛び技すら使わない。
新日本プロレスワールドの動画を見ると、実況解説なし。カメラも固定なのでとにかく地味です。
派手なだけがプロレスじゃない。むしろ本流はこっちなのだ、俺たちはどっちも出来るのだと見せ付けているかのよう。
SHO選手はアメリカでMMAの経験を積んできました。
総合格闘家のキャリアを勧められていたKUSHIDA選手に高校時代からはじめたレスリングとMMAで培ったグラウンド技術がどこまで通用するのか。
そんな腕試しをしたかったのかもしれませんね。普段はタッグが中心なので、どうしても自分がやりたいことたけが出来る訳ではないですし。
ちなみにこの日のメインイベントは田口隆祐選手VS高橋ヒロム選手でした。
濃い2人のメインを食うために選んだのは、ロープワークなし、フォールにもほぼいかないクラッシックなプロレスだったのかもしれません。試合後、2人のコメントに全てが集約されています。
KUSHIDA「プロレスの、プロレスラーの何が魅力かって、挫折や失敗に、心が動かされるんだと思います。それが人前で闘う理由……。SHO、お前はこのままいけ。もし、何かあったら、俺を見ろ。KUSHIDAを見ろ。遠くからうなずいてやっから。(※控室に戻ろうとするところ、引き返してきて)最後に、ロープワークも、派手な空中殺法も、ピンフォールも、一切なかったね……」
迷ったら俺を見ろと語るKUSHIDA選手。
SHO「(シリーズ開幕)前日の会見で、あの人は『SHOとやるのが楽しみだ』と言ってくれて、ゾクッとしたよ、正直。海外にいるとき、あいつの試合、ずっと見てたんだ。この『SUPER Jr.』、去年、あいつが優勝したトコも俺は見た。で、どうすればあいつに勝てるかって、ずっと考えた。どうすれば、この『SUPER Jr.』、優勝できるかって。それでいろんなこと試したよ。ついこの前の試合の後、俺は『プロレスは技術でもない、力でもない、気持ちだ』って言ったよな。でも! 今日の一番の敗因は、技術の差だ。クソッ! 超えたい、超えたい壁、KUSHIDA。でも、まだまだ高い壁。デケェよ。俺の相方のYOHが言ったよ。『KUSHIDA? 頭のいいハイエナだ』って。そうかもしんねぇよ。でも俺は、この新日本ジュニアっていう生態系に、いろんな生き物がいてもいいと思う。そっちのほうがおもろいだろ? ハイエナがいてもいい。ドラゴンだっていてもいい。いろんなヤツと、いろんな試合ができるんだったら、いろんな生物がいたっていいよ。じゃないと、生態系って成り立たねぇだろ? でも! その新日本ジュニアの生態系のトップに立つ、ピラミッドのトップに立つのは、これは俺の考えだけど、ライオンじゃねぇとダメだと思うんだよ。これからもKUSHIDAとずっとやっていきたい。これは俺個人の考えだ。世界中から『SHOとKUSHIDA、“神カード”だ』って言われるまで、俺はのし上がってやる」
色々な獣が存在する新日本プロレスの生態系の中で、勝ち抜いていくことを宣言するSHO選手。
そして、2018年がKUSHIDA選手であるならば、2019年の覚醒はこの試合でした。スーパージュニア開幕戦のセミファイナルです。
昇り竜の喉元に喰らいつく獅子
まさにライオンとドラゴンの一騎討ちだった。
...。改めて見た結果でもあるけど、以前書いたレポートでガッツリ書いてるな。その時の心情や新日本プロレスの空気感を掴むのであれば、こちらをチェックしてみてください。
と、過去の自分に丸投げするのは良くないので、少しだけ試合の感想を書き残していく。
正直、この試合はSHO選手が勝つかもとは思った。ただ、この壮絶なリーグ戦を勝ち抜くのは無理だろうな、とも思った。
鷹木信悟選手はリーグ戦を見据えた初戦。SHO選手はこの試合で絶対に勝つ!という一戦だったのでしょう。
実際、終わってみれば5勝4敗のリーグ戦敗退。勝ち越しこそしたものの、石森太二選手や金丸義信選手といった実力者の前に完敗しています。
※特に金丸義信選手との一戦はとんでもない負け方をしたので要チェック
はじめて鷹木信悟選手が新日本プロレスに足を踏み入れたあの日から、リベンジの機会に燃え続けてきた。
いい試合はできた。ただ、その代償はあまりにも大きかった。
鷹木信悟選手がヘビー級に転向を果たしたため、再戦は「NEVER無差別級」になるだろう。
獅子が龍を乗り越える瞬間を今から楽しみにしたい。
次のターゲットは誰だ
SHO選手の主人公性は驚異的な力を持っています。今はまだ勝てないかもしれない。それでも挑み続けていつかは乗り越える。そんな物語を魅せていくことで、どんどんSHO選手へと気持ちが引き込まれるのです。
また、KUSHIDA選手と鷹木信悟選手。この2人は新日本プロレスジュニアの中でも完全にトップ中のトップレスラーでした。実力で言えば頭一つ抜けるレベル。そんな相手に対して、果敢に挑むことで気づけばSHO選手のシングルはひとつのブランドになった気がします。
では、次の標的は誰なのか。僕は、石森太二選手と高橋ヒロム選手がメインターゲットになってくると睨んでいます。
生涯のライバルとなるYOH選手との試合が解禁された時、二人が見せる光景はどんなものになるのか。これからもSHO選手の試合が楽しみで仕方ありません。
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