今の新日本プロレスで単純なヘビーVSジュニアという構図は通用しない
今の新日本プロレスで単純なヘビーVSジュニアという構図は通用しない理由を書いていきたい。
昨今の新日本プロレスには様々な価値観がある。4本存在する「IWGPシングルベルト」の棲み分けや「NEVER」を舞台にした“無差別級”の定義。まだまだ他にもたくさんある。
勿論、それぞれの解釈により意味合いが大きく変わるため、正解が無い問いなのかもしれない。
そんな中、「ニュージャパンカップ2020」ではジュニアヘビーとヘビーが戦うことにより、新しい景色が展開され続けている。
おそらく石井智宏選手もエル・デスペラード選手や高橋ヒロム選手VS本間朋晃選手などの対戦カードは、今回の一件がなければ中々見ることができない組み合わせだったように思う。
以前から“無差別級”への名乗りを挙げていたエル・デスペラード選手については石井智宏選手とヤる日は訪れたようにも思うが、ここで因縁が生まれたのはこれからのキャリアを考えてもとても大きい価値を持つ。
あんなとんでもない試合を見せられたら、次のシングルマッチはプレミア級の価値を持つためだ。
一方で、2年連続となる「ニュージャパンカップ」エントリーを果たした田口隆祐選手や鷹木信悟選手を追い続けてきたSHO選手は、いつか起こり得るであろう一戦だったようも思う。
「ニュージャパンカップ2020」右下のブロックにはヘビーVSジュニアヘビーの試合がない。
振り返るにはこのタイミングが最適だと思い、筆を取ってみる。
ジュニアに託された春
渡航制限により“ガイジン”レスラーが参戦できない状況で新日本プロレスが取った“秘策”はジュニアヘビー級の参戦だった。
敢えて“秘策”と書いた理由は簡単で、新日本プロレスは32人のエントリー枠を厳守する必要はなかったためである。従来、「ニュージャパンカップ」にエントリー人数は16人だった。
今回のやむおえず参戦できなかったレスラーは14人。昨年の優勝者であるオカダ・カズチカ選手と『NEVER王者』である鷹木信悟選手をシード扱いにして、対戦カードを調整すればヘビー級のレスラーだけでも十分に試合を組むことができたのだ。
それでも、新日本プロレスがトーナメントの32人体制を強行したのは、「ジュニアヘビー級のレスラーたちに懸けた」のだと僕は解釈している。
令和2年。新しい新日本プロレスの幕開け。観客に見せたい景色は、これまでにないワクワクやドキドキだったように思う。
「ニュージャパンカップ2020」にジュニアヘビー級のレスラーが参戦したことで、これまでにない対戦カードが並んだ。また、オカダ・カズチカ選手VS外道選手や鷹木信悟選手VSSHO選手のようなもう一度見たかったプレミア級の激突を見ることができた。まるで別の作品のヒーローや悪者たちが己の威信を懸けて戦っているよう。
真っ向勝負もあれば、勝つためには何でもする試合もある。それはまるで、画面を通じて視界の中心を独占されるような感覚で、僕はこの大会をこれから何度も振り返るような予感にかられていた。
スポーツマン・SHO
“宿敵”鷹木信悟選手から3カウントフォールを奪ったSHO選手はリング上で感情的に涙を流した。画面で見ても伝わるほどの男泣き。号泣。
これまで負けた悔しさで泣くシーンや観客の声を受け、涙を流すシーンは何度となく見てきた。
ただ、相手を倒したことでここまで泣く姿ははじめて見たかもしれない。超えたかった。そのためだけの徹底的は徹底的に行ってきた。
顔を手で覆う様子はまるで高校球児のよう。このためだけに人生を捧げてきた。一発勝負で負けたら終わりの場所でしかこみ上げてこない特別な感情が溢れたことが画面を通じて、こちらにも伝わってくる。
SHO選手は最後にシングルマッチを戦った「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア26」と見比べてみると、肉体が全く違った。VSヘビー級用、いや対鷹木信悟選手専用の肉体を作り上げてきた。技もアレンジされていたし、鷹木信悟選手が間を取りたい思うシーンを全て埋めるように技を繰り出していた。
先を見ていた鷹木信悟選手はここまでSHO選手への対策を取っていなかったようにも映った。
油断していなかった訳じゃない。SHO選手が強かっただけの話なのだ。次の相手は昨年の準優勝者であり、「G1クライマックス」ではオカダ・カズチカ選手をも破ったSANADA選手だ。
エル・デスペラードの矜恃
「ニュージャパンカップ2020」初日のメインイベントを飾ったのは石井智宏選手とエル・デスペラード選手だった。
僕の見解では、この試合がヘビー級VSジュニアヘビー級という枠を超越してしまったのだ。
その結果、ジュニアヘビーがヘビー級に向かっていくという構図が成立しなくなってしまったのである。
滅多に見ることができないレスラー同士のシングルマッチ。プロ野球で例えるならば、セ・リーグとパ・リーグの試合だ。
ウエイトが重い、デカい方が有利には違いない。ただ、それが全てではないことをジュニアヘビー級のレスラーたちが証明し、成し遂げたのだ。
その実感もあり、エル・デスペラード選手は以下のツイートを投稿したと僕は考えている。
あの文脈だと「去年の準優勝社が一回戦敗退すること」よりも「ヘビーがジュニアヘビーに負けること」を屈辱の敗戦と言ってるようにしか聞こえねえんだが
— El Desperado (@ElDesperado5) 2020年6月22日
なめてんのか
実況がそれを言うか#njpw #njpwworld
今改めて考えると、無差別級を宣言していた鷹木信悟選手やウィル・オスプレイ選手が後藤洋央紀選手や棚橋弘至選手から白星を飾っていた時点で認識すべきことだったのだ。
ヘビー級とジュニアヘビー級は違う世界観の中、それぞれの舞台で最高の試合を魅せている。それが交わる時に必要な考え方は確かにジュニアはウエイトが下だが、どんな工夫でヘビー級を倒すのか?というフェアな視線なのだ。
エル・デスペラード選手と鷹木信悟選手。そして、最初にヘビー級レスラーの本間朋晃選手を破った高橋ヒロム選手の試合が改めてその価値観を見せつけたのだと僕は思う。
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