オカダ・カズチカ選手が変形のコブラクラッチにこだわったワケ

オカダ・カズチカ選手と永田裕志選手の関係を例えるのは非常に難しい。新日本プロレス、いやプロレス界全体が総合格闘技の勢いに飲まれてしまった時代の中で、永田裕志選手はミスターIWGPと呼ばれ数々の功績を作り上げてきた。

その歴史は今から18年前にまで遡る。2002年。サッカーワールドカップが日韓同時開催となっていたあの時代だ。

2002年4月5日、安田忠夫選手から『IWGPヘビー級ベルト』を奪取すると、2003年5月2日に高山善廣選手に敗れるまで10度の防衛を果たした。棚橋弘至選手がV11を記録した2011年まで8年にわたり『IWGPヘビー級王座』の連続防衛記録は永田裕志選手の聖域だった。

ちなみに、1994年の橋本真也さんが樹立した防衛記録が9回。そう考えると、『IWGPヘビー級』の記録更新は約10年に一度起こるとも考えられる。

話を戻そう。棚橋弘至選手が樹立したV11を破ったのが、この日『ニュージャパンカップ2020』の2回戦で永田裕志選手の対角線に立ったオカダ・カズチカ選手だ。

2016年6月〜2018年8月の間でV12を記録。その後、防衛回数は30回に到達し歴代最多の防衛回数のレコードすら更新してしまった。

2012年以降、新日本プロレスに金の雨を降らせ続けてきた男は棚橋弘至選手とぶつかりあうことで、大きく進化を果たし今ではプロレス界を背負って立つ存在となった。

永田裕志選手がV10を達成していた裏でオカダ・カズチカ少年はプロレスラーになることを目指し、中学を卒業後に闘龍門に入門した。

キャリアハイの記録を樹立した時期とプロレスラーを志した時期がほぼ同じ。そんな2人が5年振りにシングルマッチで激突するのである。

用意された舞台は『ニュージャパンカップ』の2回戦。そして、無観客の会場だった。

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実況は野上慎平!!!!

矢野通選手と高橋ヒロム選手の壮絶な?一戦が終わって一息つくと、野上慎平アナウンサーの声が鳴り響く。

耳馴染みの良さと滑舌の良さ、何よりも熱い実況がこの試合のゴングが鳴り響く前から最高の試合になることを予想させる。

5年前の後楽園ホールと同じように、永田裕志選手のグラウンドから試合がはじまった。

開始早々フェイスロックで絞りまくる。肩から上腕の張りが半端じゃない。オカダ・カズチカ選手の挑発に“青い炎”が一瞬で燃え上がる。

オカダ・カズチカ選手はかつて永田裕志選手の付き人だった。新日本プロレスとは何か。闘魂とは何か。ストロングスタイルとは何か。

そうした新日本プロレスで最も尊く、気高い誇りをオカダ・カズチカ選手に“注入”したのが、永田裕志選手だったのだ。

 

冬の時代とV字回復後の世界

プロレスの冬の時代を戦い抜いてきた永田裕志選手。一番つらい時に新日本プロレスを支えてきた文字通り苦労人である。どんなに頑張っても流れが悪い時期はある。

そんな時代を任されたのが永田裕志選手だったのだ。つまり、永田裕志選手が支えた船を“100年に一人の逸材”となった棚橋弘至選手が舵を取り、新日本プロレスは再び息を吹き返してきた。

そして、金の雨、恵みの雨、喜びの雨を土砂降りにしたのがオカダ・カズチカ選手である。

「おっさんであることは認める。ただ、どんなオッサンであるかはお前が試してくれよ」

エルボーとエルボー。感情と感情がぶつかり合う。エゲツない音が響き続ける。野上慎平アナウンサーの言葉を借りれば「誉れ高き試合」になってきた。

 

チャレンジャー・永田裕志

52歳の“グリーン(ブルー)ボーイ”はこの日、挑戦者だった。2007年の「G1クライマックス」で中邑真輔選手に見舞った雪崩式のエクスプロイダーをオカダ・カズチカ選手に繰り出した。ここからは強烈なキックを連発。

ただし、オカダ・カズチカ選手は恐怖の回復力を魅せる。ツームストンパイルドライバーから変形のコブラクラッチへ。と永田裕志選手はナガタロック2で切り返す。外道選手との一戦を徹底研究し、このタイミングを狙ってきた。

突然、このセルリアンブルーのリングに違和感を覚えてしまった。本来であれば大歓声に包まれているはずの会場。地鳴りがするほどの怒号が飛び交うような客席。

そして何よりも最高の試合。この試合が観客の前じゃないところで行われていることに大きな寂しさを覚えてしまったのだ。

「来い!オラ!」張り手とラリアットの応酬からローリング式のレインメーカーすら見切って、バックドロップを見舞う。

オカダ・カズチカ選手を倒すために、全ての準備を整えてきた。だが、オカダ・カズチカ選手が現在のトップが許してくれない。

再び、変形のコブラクラッチへ。更に脚をロック。ここで、永田裕志選手がタップ。

オカダ・カズチカ選手の3回戦進出が決まった。

なぜ、レインメーカーではなく変形のコブラクラッチを狙ったのか。おそらく優勝決定戦の先を見据えてのことだともう。

内藤哲也選手が待つタイトルマッチ。ここを見据えているからこそ、オカダ・カズチカ選手はレインメーカーを封じる戦いを続けているのだろう。そして、マイクを手に取りこう語った。

「永田さん、オッサンって言ってすいません。オジサンでした」

ダンディーで最高にカッコいい。そして、強い。永田裕志選手に惚れ直した試合だった。

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