“44歳のグリーンボーイ”石井智宏が真壁刀義へ残した未来への爪痕
“44歳のグリーンボーイ”石井智宏が真壁刀義へ残した未来への爪痕について書きたい。
『ニュージャパン2020』2回戦。真壁刀義選手はかつて『NEVER無差別級ベルト』を懸けて戦ったライバルと再び相対する形となった。
共に1996年デビュー。新日本プロレスとWAR(Wrestle and Romance)とデビューした団体は違えどそれぞれの場所で辛酸を舐めながらもじっくりじっくりとプロレスラーとしての価値を高め続けてきた2人だ。
そう、この2人によるシングルマッチ自体が3年振り。2人の立ち位置にも数年前から変化があった。
“名勝負製造機”と呼ばれ、どんな相手でも根底にある感情を引き出し、最高に熱い試合を魅せるメインイベンター。それが今の石井智宏選手だ。
『NEVER無差別級』だけでなく、『IWGP』のベルトにも挑戦できる位置に立っている。
一方で、真壁刀義選手はどうか。『G1クライマックス29』の選考から漏れるだけでなく以前は、本間朋晃選手と大車輪の活躍を魅せていた『ワールドタッグリーグ』でも結果を残すことができていない。
かつての輝きを知っているファンからすれば、そろそろ結果も求めたくなる時期だという見方もあっただろう。
ただ、この状況に最も歯痒い気持ちを抱いていたのは、石井智宏選手なのかもしれない。
口数少ない男が2019年11月25日と2020年6月23日に語った言葉から振り返っていきたい。
物足りない
まずは先日の前哨戦後に石井智宏選手が語った言葉から。
石井「真壁、久しぶりだなオイ。何年ぶりだ? 忘れたよ、オイ。真壁、ここ何年か、何でおれとシングルが組まれなかったか。それと、俺が去年タッグリーグでテメェに言ったこと。それをしっかりと考えて、リングに上がってこい」
ここで時計の針が2019年に戻る。『ワールドタッグリーグ2019』石井智宏選手&YOSHI-HASHI選手VS真壁刀義選手&本間朋晃選手の試合が終わった後のバックステージコメントがこれだ。
石井「もうあいつら、俺らと違うとこにいんな。相手にならねえ。まあ2人とも、芸能界で頑張ってくれ」
試合後はノーコメントも多い石井智宏選手がここまで辛辣な言葉を真壁刀義選手に投げ掛けていたのだ。
現在では芸能活動と並行してYouTubeにも進出。YouTuberとして色々な企画に挑戦していることに対して、石井智宏選手は何か引っ掛かるところがあったのではないだろうか。
ここに僕は人生で学ぶことが詰まっている気がする。
復業、パラレルワークの時代
副業が復業と呼ばれる機会が増えた。各企業でパラレルワークの需要が高まっていると数年前から報じられている。
副業を解禁することで、社員の定着率を高めようとする動きだって決して珍しいものではなくなった。
ただ、根底にあるのは本業に迷惑を掛けない。ではなく、本業で誰もが納得している価値を発揮しているかどうかではないだろうか。
僕は今、フリーランスという立ち位置にあるが、「副業やりましょう!」を簡単に言っている人を見ると、違和感しか覚えない。
本人は知っている、実践しているはずのことは喋らずに綺麗ごとだけを並べるためだ(二兎(以上)を追うものは必ずどこかに歪みが出る)。
また、副業でやっている人材が増えたことで価格崩壊や本来仕事を受注すべき人に流れる案件が減っている...。と、話が横道に逸れすぎた。
閑話休題。
石井智宏選手は真壁刀義選手にリングで結果を残してないレスラーが外でチヤホヤされてんなよ?と言いたかったのではないだろうか。
ここで棚橋弘至選手について指摘しないのは、2019年の東京ドームで『IWGPヘビー級王座』に返り咲き、現在も飯伏幸太選手とゴールデン・エースを結成し『IWGPタッグ』で最前線に立っているためだろう。
真壁刀義選手の強さや恐ろしさを知っている。だからこそ、3年ぶりのシングルマッチについてわざわざ言及したのだ。
僕の見解では「よそ見しすぎてるんじゃねぇか?」これが、石井智宏選手から真壁刀義選手へのメッセージだったような気がする。
真壁刀義の変化
試合を見た率直な感想は最高だった。ただそれは、以前とは違う良さなのかもしれない。
ベビーフェイスながら荒々しいファイトがウリの真壁刀義選手も現在47歳。
小島聡選手が49歳だと考えると、真壁刀義選手も年齢的にはほぼ第3世代なのだ。
年齢を重ねることで、身体のキレやスピード感は徐々に衰えてしまう。オリンピックを見れば分かりやいとも思うが。
ただ、プロレスに関して言えば、身体能力が優れたレスラーだけが活躍する場所ではない。
むしろ深みや哀愁といった20代や30代では得ることできない魅力が全身から発せられるようになる。
これがオリジナリティ。その魅力がベテランレスラーたちがファンを惹きつけて離さないものだと思っている。
この日の真壁刀義選手はその域に達していた。僕はそう思っている。心から素晴らしい試合だった。
一周も二周も三周も回った先にある必死さ。そして、ファイティングスピリッツというハート。これこそが新日本プロレスの魅力なのだと改めて実感した。
グリーンボーイはヤングキングコングを待っている
芸能活動やYouTubeを通じて、新日本プロレスを広げることに時間を使っている漢は、そうした活動をせずリングに集中している漢に負けられない。
結果、内容、インパクト。この3つを達成しなければ石井智宏選手は満足しないという。
そんな彼が試合後に残したコメントがこれだ。
石井「アレはもうダメだな! 黒パンと黒シューズ用意しとけ!」
「やめちまえ」ではない。若手になったつもりで、もう一回這い上がって俺のところに来いという熱いエールだ。
次々と新しいスターが生まれる新日本プロレス。その中で一際大きな光を放つことは、決して簡単なことではない。
ただ、はるか、はるか遠く。ぼんやりと見えたのか錯覚なのかも定かではないような小さな光が指した。
その先で“44歳のグリーンボーイ”は真壁刀義選手との試合を楽しみに待っている。
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