EVILと内藤哲也の愛憎劇。“制御不能”を解き放った引き金の正体
EVILと内藤哲也の愛憎劇。“制御不能”を解き放った引き金の正体について書きたい。
「2人は教えられないよ」
内藤哲也選手からそう言われた渡辺貴章青年(EVIL選手)。高橋ヒロム(当時、髙橋広夢)先輩は教わっているのに自分は...。
2013年。渡辺高章選手はアメリカでプレミアムな男となり、日本へと帰国する途中で怨霊に取り憑かれた。
凱旋帰国を果たしたナベちゃんは“キング・オブ・ダークネス”EVIL選手となり、内藤哲也選手の最初のパレハとしてお披露目された。
一回り以上大きくなった肉体と細かなテクニック。怪奇派レスラーにして大歓声を集めるカリスマ性。内藤哲也選手が新しいユニットをスタートさせる上で大切なものを全て持っていた。
内藤哲也選手が手数とスピード、テクニックで相手を追い詰めていくタイプであるならば、EVIL選手はパワーと機動力で押していくタイプ。タッグチームとしてのバランスも素晴らしかった。
「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」がダークヒーローとして定着する前、EVIL選手はラフファイトとパワーで新日本プロレスの頂点へを目指した。
ただ、EVIL選手がリングの上で“男泣き”をするほどに尊敬していた先輩が凱旋帰国を果たすと流れが変わった。
ラフファイトすらいとわず“制御不能”に新日本プロレスのリングを暴れ回るイメージは鳴りを潜め、彼らをヒールだと思うファンすらいなくなった。
そう、実は数年前からEVIL選手は「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」での居場所を失っていたのだ。
そして、2020年。闇の王は新しいファミリーを選んだ。その理由を振り返っていきたい。
全てを変えた男
新しい入場曲、新しいコスチューム。そして、結んでいた髪の毛をほどいた姿。
“バレットクラブ”のEVIL選手は圧倒的すぎるほどのオーラを放っていた。
試合開始早々。リングの外へエスケープ。まるで、昔の内藤哲也選手を彷彿とさせる動きである。
その後の試合に関してもそう。トランキーロ戦法に始まり、相手の弱点をとことん突くファイトスタイルや勝負所でのラフファイト。
相手の頭を撃ち抜く椅子攻撃。全てが内藤哲也選手に関連した技だった。あの頃、こうやって内藤哲也は頂点へと上り詰めたよな?何度も浮かべていた不敵な笑みは自分がその立場となったことへの優越感と本来の自分を解き放っている喜びだったのかもしれない。
それほどまでにEVIL選手は内藤哲也選手のことを知っていた。学んでいた。熟知していたのだ。
これは内藤哲也という男に認められたかった1人の男が、全てを変えるために己を貫いた物語だ。
いつから裏切りを意識したのだろうか
EVIL選手が「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」を裏切るいや、内藤哲也選手から離れることを決意したのは間違いなく活動自粛後だと考えて間違いない。
こちらは2020年2月26日のバックステージコメントである。
EVIL「小島! (『NEW JAPAN CUP』)1回戦(での対戦)決まったな。後楽園での借りを、キッチリ100万倍にしてお前に返してやるよ。そしてお前を地獄に葬り去ってやる。よく覚えとけ。それともう一つ。今日、対戦相手にいたタッグチャンピオン、棚橋、飯伏が、何やらオレたちにベルトを見せてアピールしてきたな。棚橋、飯伏vsEVIL、SANADA……最高に面白いんじゃないの? 楽しみにしてるからな」
この時点では一回戦の相手と「IWGPタッグ」の話を出している。確実に離反までは考えていない。
続く6月15日の「Together Project Special」のコメントはこれまでも言いそうな類のコメントだった。
問題はここ。6月17日である。この時点で「何がなんでも優勝する」と言い切っている。
おそらくこの時点では既に“バレットクラブ”入り、ひょっとするとディッグ東郷選手との結託は決まっていた可能性が高い。
EVIL「1回戦の小島にはぁ、中止になる前、一つ借りがあったよなぁ。その借りをこの1回戦でぇ、きっちり倍にして地獄の底に沈めてやるよ。そして、今年の『NEW JAPAN CUP』、何がなんでも優勝してぇ、そんでもって、次の日の内藤戦でIWGPプラスインターコンチを奪い取ってな、この俺が三冠王になってやる。よく、覚えとけー!」
EVIL選手は自粛期間中に「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」との決別を決めた。
これまでも「G1クライマックス」などでグータッチをしない素振りなどはあったが今回ばっかりは不退転の覚悟が決まっていたのだ。
次はEVIL選手の心を変えたものについて。これは当事者でなければ正解は分からないが状況証拠だけチェックしていきたい。
ロス・インゴ の4番手
新日本プロレスの公式スマホサイトで内藤哲也選手のインタビューが掲載されたのが2020年6月14日のこと。
会員向けのインタビューなので、引用も避けるがそこでは「EVILは『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』ヘビー級の序列で4番手」と内藤哲也選手が赤裸々に語っていた。
文中の中では突き抜けられない部分があるとも指摘されていた。
続いて新日本プロレス公式スマホサイトで連載されている日記。
2020 年6月19日更新分である。「Darkness will prevail in this tournament」この内容にもこのシリーズで何度も使われた言葉があった。
ちなみに自粛中の日記を読み返したが、そこまで気になると点はなかった。
つまり...。
内藤哲也選手が発した4番手発言がEVIL選手をここまで変貌させた引き金なのではないか。
その考えを軸に妄想を膨らませていく。
居場所のない闇の王
“最初のパレハ”。この言葉を久しぶりに聞いた気がする。
最近の内藤哲也選手は基本的に口を開けば、高橋ヒロム選手のことばっかりだった。
師弟関係にある高橋ヒロム選手は「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」に加入して以降、スターダムへと上り詰め、今ではカリスマと呼ばれる存在となった。
旗揚げ記念日での対決や雑誌での対談。実質、「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」のNo.2は高橋ヒロム選手になっている。いや、下手すれば内藤哲也選手すらも凌駕するレベルにまで到達しているのかもしれない。
“最初のパレハ”の存在感は制御不能な師弟関係性の前に薄くなっていた。
「G1クライマックス2017」でEVIL選手がオカダ・カズチカ選手を破った時は全てが変わると思った。だが、オカダ・カズチカ選手のライバルにはSANADA選手が選ばれた。
タッグパートナーとしてずっと隣にいた男。全日本プロレス出身の男に負けた。
いつしか熱く荒々しいファイトが信条となっていた。
だが、技術もパワーも機動力もマイクも完璧な6人目が現れてからその立ち位置すらも奪われてしまった。
4年9ヶ月が経ち、気付けば「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の4番手。
自分が一番分かっていた。このままユニットにいても何も変わらない。何も変えられないことを。
そして、内藤哲也選手がインタビューでハッキリと言った。
「(EVIL選手は)4番手であり、突き抜けられていない」と。
その事実を知った時、これまでずっと抱いていた尊敬が憎しみに変わったのではないだろうか。
そして、NJPWFUN初となる後編へ続く。
本日18:00公開。タイトルは「高橋ヒロムとEVIL。ヤングライオン時代の約束」だ。
★後編が公開になりました★
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