高橋ヒロムとEVIL。ヤングライオン時代の約束と「どうして?」の意味

高橋ヒロムとEVIL。ヤングライオン時代の約束について書きたい。

NJPWFUN初となる前後編記事。今回は高橋ヒロム選手とEVIL選手にフォーカスを当てて考えていく。

EVIL選手の胸中にはずっとあの日のエピソードが刻まれていたのではないか、という解釈である。

「自分にプロレスを教えてくれなかった」

「期待している言葉も全部ウソだった」

「今の『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』のどこが制御不能なんだ」

そして、何よりも同じユニットにいるのにも関わらず、大きな結果を残せない自分。そんな自分自身への悔しさがEVIL選手を突き動かした。

何がなんでも勝つ。そう、レフリーが反則負けにしなければ勝ちなのだ。

そして、迎えた裏切りの瞬間。

EVIL選手は新日本プロレスという団体やファンを批判しなかった。自分の中に秘めていたシンプルなメッセージを現メンバーへと贈った。

内藤、内藤、内藤……。お前とロス・インゴのお前ら全員、腐りきってんだよ、バカ野郎。そしてな、虫唾が走りに走りまくってるんだ、この野郎。明日、リングで大の字に倒れてんのは、内藤、お前だ。よく、覚えとけ……」

出典:新日本プロレス公式

「お前ら全員、内心で俺のことを馬鹿にしてたんじゃないのか」

僕はEVIL選手の乾いた叫びに悲痛な想いを感じ胸が苦しくなっていた。

自分を解き放つ場所は“バレットクラブ”しかない。そうして、EVIL選手は人の道を外れたのだ。

 

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熱い試合しようぜ! オマエとなら出来るよ!!

内藤哲也選手を“EVIL”でノックダウンしたEVIL選手。

更には新しいパレハとしてディック東郷選手を公表すると、再び内藤哲也選手を強襲した。

内藤哲也選手を救出し、彼の本心を知るべく立ち上がったのが高橋ヒロム選手だった。

ここで2013年6月9日へと時計の針を戻してみよう。高橋ヒロム選手が海外遠征に旅立つ壮行試合。二人はバックステージで約束を交わしていた。

高橋「渡辺高章! 絶対、帰ってきたら、もっともっと熱い試合しようぜ! オマエとなら出来るよ!!

出典:新日本プロレス公式

そして、EVIL選手(渡辺貴章)はこう語っている。

渡辺「ありがとうございました! (涙を浮かべて)……広夢さんには、俺が入門のときから、凄くお世話になっていて! 俺の中でかけがいのない先輩で、あの人がいなかったら、いまここでレスラーをやっていないと思う! (涙をかみ締めて)。それぐらい、感謝してるし、尊敬してる! ずっと練習も食事も、一緒にがんばってきた! だから、今日は絶対に、アイツから3カウント獲って、送り出してあげたかった! 最後、獲られてしまって、借りができた分は、必ず、アイツが帰ってきたときに、俺が獲り返す。……今日は、このカード組んでもらって、ありがとうございました。俺がもし海外から帰ってきたときにはアイツとやらしてほしい。それぐらいアイツには、いろいろな思いがある。以上です! ありがとうございました!」

出典:新日本プロレス公式

 

そう。EVIL選手がずっと戦いたかった相手の正体は高橋ヒロム選手だったのだ。

内藤哲也選手を裏切り、ジュニアのカリスマとなった高橋ヒロム選手と戦う。そして、何がなんでも勝つ。

これがEVIL選手が描いたシナリオの正体だったのかもしれない。

高橋ヒロム選手がドラゴン・リー(リュウ・リー)選手との試合で負傷した時、EVIL選手は何も語らずに髪の一部を赤く染めた(ハイライトを入れた)。

彼が帰ってくるまでの1年7ヶ月。その間、EVIL選手はずっと赤い髪をなびかせ、彼の帰りをずっと待ちわびていたのだ。

ヤングライオン 、「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」。

ずっと2人で過ごしてきた場所を捨ててでも戦いたかったのは、三冠王という称号や記録ではなく、過去の自分にとって一番美しい記憶だったのかもしれない。

今のままだと高橋ヒロムに置いていかれる。

自分を変えなくてはならない。そして、これまで以上に深く闇の奥へと潜った結果、EVIL選手はとうとう覚醒を遂げたのだ。

裏切りなんてどうでもいいの真意

一方で高橋ヒロム選手。変貌したEVIL選手を前に彼の胸に浮かんでいるのは、悲壮感とも違う感情だったように思う。

内藤哲也選手の名前を出さずにEVIL選手だけを真っ直ぐに見る瞳。そして、敵とみなした相手への刺激的な言葉。

高橋ヒロムとEVILが完全に対立した瞬間であり、ダークヒーローの高橋ヒロム選手がベビーフェイスに回ったエピソードとなった。

「おい、EVIL、今どんな気持ちだ? 人を裏切るって、どういう気持ち? どういう感覚なの? 教えてよ。教えてよ。教えろ。教えろって言ってんだよ! お前の裏切りなんてどうだっていいんだよ! なあ、今どんな気持ちなのか、それだけ教えろよ。

出典:新日本プロレス公式

裏切りなんてどうでもいい。改めて考えると違和感のあるメッセージだ。

「内藤さんや俺たちを裏切るってどんな気持ちなんだ。いや、そうまでして戦いたかったのは俺なんじゃないのか?」

その真意を確かめようとしたが、EVIL選手は何も答えない。

そして、高橋ヒロム選手の叫び声だけが大阪城ホールにこだました(会場では入場曲にかき消された)。

僕はプロレスを見ているのか?何か違うものを見ているのではないのか?

そんな気持ちにすらなってしまうほどのシーンだった。それほどに壮絶な光景だった。

高橋ヒロム選手はこの日「どうして?」とバンテージにいくつも書き殴っていた。

ひょっとすると、彼の描いていた広い夢には続きがあったのではないか。

僕は「どうして?」と今の気持ちを言ってみろ!」にの裏側にもう一つの野望があったのではないかと解釈している。

それは「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」対決。

自分が内藤哲也選手を破った後に指名するのは、EVIL選手だと決めていたのではないだろうか。

海外遠征前の約束を、最高の舞台で実現させる。一番ドラマチックで一番素敵な時間にする。

裏切りなんてどうでもいい。

だが、「俺と戦う約束を忘れてないだろうな?」

深い闇に堕ちた仲間へ高橋ヒロム選手が問い詰めたかったのは、そんな健気なメッセージなのかもしれない。

 

突き抜けるために必要なこと

内藤哲也選手は以前からゼロか100について説いていた。歓声でもブーイングでも中途半端はよくないと。

オカダ・カズチカ選手は賛否両論の「否」が欲しいとインタビューで語っていた。

EVIL選手は“バレットクラブ”に加入したことで、突き抜けた存在となった。

「IWGPヘビーとインターコンチネンタル」のWチャンピオンである。彼こそが今の新日本プロレスを象徴する存在なのだ。

獣神サンダー・ライガー選手はEVIL選手に対して、本隊と「CHAOS」、「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」が手を組まなければならないと可能性を提示した。

オカダ・カズチカ選手&高橋ヒロム選手。内藤哲也選手&棚橋弘至選手。飯伏幸太&SANADA選手。

これから新しい化学反応が生まれる可能性は高い。

EVIL選手の一歩踏み出す勇気は新日本プロレスに新しいストーリーを生み出した。

「IWGPヘビー級ベルト」は誰しもが巻けるベルトじゃない。EVIL選手は時代に必要とされ、結果を出したのだ。

何がなんでも勝つ。その言葉に嘘はなかった。

次はあの日のバックルームで泣きながら決意した約束を守る番なのだ。

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