なぜ、新日本プロレスのヘビーVSジュニアは盛り上がりまくったのか?

なぜ、新日本プロレスのヘビーVSジュニアは盛り上がりまくったのか?

名古屋でのビッグマッチを翌日に控える2020年7月24日。明日には現「IWGPヘビー級&インターコンチネンタル」Wチャンピオン“キング・オブ・ダークネス”EVIL選手VS「IWGPジュニアヘビー級」王者高橋ヒロム選手によるタイトルマッチが行われる。

愛憎渦巻く“同期”対決。本来であれば、旗揚げ記念日で実現していたはずのヘビーVSジュニアの一戦は内藤哲也選手からEVIL選手への王者が変更になった。

いよいよ高橋ヒロム選手が無差別級への挑戦をスタートする。その正式な記念日が2020年7月25日なのかもしれない。

同日にエル・デスペラード選手も鷹木信悟選手が持つ「NEVER無差別級」に挑戦することからも、ヘビーVSジュニアヘビーという構図が今の新日本プロレスの目玉の一つになってきている。僕はそう解釈している。

これは誤解を恐れずに言いたい。勿論、反論はあると思う。正直、「ニュージャパンカップ2020」は過去の大会に見劣りしないどころか、例年以上の熱気が詰まった大会になったように思うのだ。

勿論、試合事態を自粛していた背景はある。ただ、それ以上に見応えのある試合が連発だったのは間違いない。

石井智宏選手VSエル・デスペラード選手。石井智宏VS高橋ヒロム選手。矢野通選手VS高橋ヒロム選手(髮を懸けた因縁)。SHO選手VS鷹木信悟選手。オカダ・カズチカ選手VS石森太二選手(闘龍門対決)。

そして、ジュニアはヘビーに屈しないことを証明したオカダ・カズチカ選手VS高橋ヒロム選手の激戦。

これまでの新日本プロレスではほぼ見ることができなった。そんな、階級を超えた因縁が次々と回収された2020年の“春”。

なぜ、ヘビーVSジュニアヘビーは盛り上がりまくるのか。その理由を考察してみたい。

 

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棚橋弘至とKUSHIDAの一戦

現WWEのKUSHIDA選手が新日本プロレスを退団する日。その対角線には新日本プロレスのエース“100年に一人の逸材”棚橋弘至選手が立っていた。

あの試合を改めて見てみると、KUSHIDA選手は試合に勝つことは勿論だが、棚橋弘至選手(ヘビー級)の土俵で自分がどこまでやれるのかを腕試ししていたようにも思う。

自分を新日本プロレスへ導いてくれた恩人に今の自分自身をぶつける。それこそが最大の恩返しである。そんなメッセージがヒシヒシと伝わってくるような時間だった。

「ニュージャパンカップ2020」はこうした棚橋弘至選手とKUSHIDA選手の一戦や旗揚げ記念日に行われていたヘビーとジュニアヘビーのスペシャルシングルマッチとは異なる緊張感があった。

高校野球を見ていれば分かりやすいが、一発勝負のトーナメントは通常の試合とは異なる緊張感や空気感を生む。

今回の「ニュージャパンカップ2020」についても、流石にジュニアがヘビーを倒すと考えていた人は少ないのではないだろうか。

僕もそうだ。いくら『IWGPジュニアヘビー級王者』といっても高橋ヒロム選手が本間朋晃選手、矢野通選手、石井智宏選手から勝利するとは考えていなかった。

SHO選手にしてもそう。まさか『NEVER無差別級王者』となった鷹木信悟選手から初勝利をこのタイミングで奪うとは予想はしていても、現実になるとまでは想像できていなかった。

ここで改めてヘビーとジュニアヘビーの価値観について考えてみたい。

上下ではなく、左右の価値観

まずは大前提から。タイトルマッチの試合順などは当然結果として出ているものはあるが、個人的にはジュニアヘビーとヘビーは同格だと思っている。

この前提でここから先は読み進めて欲しい。そうじゃないと、本意が伝わらない。

まず、肉体のサイズという意味ではハンデがある。これは当たり前だろう。190センチという街でも中々見かけないサイズの“超人”がぶつかり合うのと、自分(僕の身長は176センチ)と同じサイズの人間がぶつかりあうのとでは迫力が絶対的に違う。

ジャイアント馬場さんが「プロレスはデカい者同士がぶつかり合うから面白い」と言っていたのも納得だろう。これが王道なのだ。

※オーラや威圧感、殺気で自分を大きく魅せることができる石井智宏選手のようなタイプもいるが、それは例外と言ってもいいだろう。

そもそも新日本プロレスには身長制限がある(撤廃された時期もある)。つまり、身体は横に大きくできても縦に大きくすることはできない。これがいわゆる才能というものなのだ。

そのハンデをジュニアヘビー級のレスラーたちは乗り越えている。繊細な動きやヘビーではできない飛び技。スピードや技のキレでカバーしている。いや、カバーという表現は正しくない。

“ジュニアヘビー”としての魅力を最大化しているのだ。だから、ジュニアヘビーの試合は面白い。

 

厳格化されたルールでのウエイト差

アントニオ猪木さんやFMW(大仁田厚選手)はプロレスに異種格闘技戦を持ち込むことで、興行に特別感を生み出していた。

プロレスだけに許されたスペシャリテ。それが異種格闘技戦なのだ。

ただし、総合格闘技が台頭し進化しMMAとなった今、異種格闘技戦は文字通り成立しなくなってしまった。

ルール、ウエイトの公平性と重要性。何よりも透明性が一般化したとも言える。

10キロのウエイト差を跳ね除けるのがカッコいいのではなく、そんな危険なことはさせらない時代へ。それほどまでに技術が進化したのだ。

2018年の年末に行われたメイ・ウェザー選手と那須川天心選手のボクシングルール3分3Rのエキシビションマッチを見れば理解できただろう。

ルールが厳格化された世界の中でウエイトは圧倒的な差なのだ。アドバンテージという類のものではない。

明らかに有利・不利が決まってしまうほどの差がウエイトにはあるのだと日本中に突き付けたのがあの試合だったように思う。

しかし、プロレスはウエイトがある意味そこまで厳格な競技ではない。

ただし、新日本プロレスでは、明らかにヘビーとジュニアには大きな川が流れていた。ここを今、飛び越えようとしているのが高橋ヒロム選手、エル・デスペラード選手、SHO選手なのだ。

 

異種格闘技戦に近い価値観

ここでジュニアヘビー級のレスラーについて改めて考えてみたい。

ヘビー級のレスラーとジュニアヘビー級のレスラーで明確な違いを提示するのであれば、ジュニアには一体感があると言える。

「新日本プロレス“ジュニア”を盛り上げる、価値を上げる」

この気概と伝統が文化のように受け継がれているのだ。

“リビングレジェント”獣神サンダー・ライガーさんが「スーパーJカップ」をぶちあげたり、橋本真也さんと戦ったた日々は全てジュニアの価値を上げるためのものだった。

だが、ヘビー級のレスラーの中で「ヘビー級を盛り上げる」という趣旨の発言はほぼ聞かない。これは、メインストリームがヘビー級であることを指しているのだと思う。

ヘビー級とジュニアヘビー級の間に上下はない。ただし、主戦にあるのはヘビー級である。そういった価値観が蔓延しているのは事実としてあると思う。

こうした価値観に対して、イデオロギー闘争を仕掛けるキッカケになったのが「ニュアンス2020」ではないか。

そう、ジュニアのままヘビー級とも闘う無差別級路線が本格化したのがあのトーナメントだったのだ。

ジュニアのブランドを懸けてヘビー級と闘う。この感情がヘビーVSジュニアの試合には詰まっている。

このうねりが大きなムーブメントを生み、明日のタイトルマッチにつながっている気がしてならない。

だって、考えてみて欲しい。

「IWGPヘビー」、「IWGPインターコンチネンタル」、「NEVER無差別級」にジュニア戦士が挑戦するのだ。ジョン・モクスリー選手の持つ「IWGP USヘビー」にもジュニア戦士が挑戦していたらとんでもないことになっていたに違いない。

ウィル・オスプレイと鷹木信悟

ジュニアヘビー級を卒業したレスラーはこれまでに何人もいた。飯伏幸太選手やケニー・オメガ選手、タイチ選手、ウィル・オスプレイ選手、鷹木信悟選手...。遡るとキリがないのでこれくらいで。

※いい感じに行き来していたミラノ・コレクションA.T.さんという例外は確かにある。

ウィル・オスプレイ選手はともかく、鷹木信悟選手に関しては、「新日本プロレスジュニアに対するこだわり」はなかったように思う。※高橋ヒロム選手がいないジュニアヘビー級戦線を盛り上げたのは間違いなく彼だが。

ウィル・オスプレイ選手に限って言えば、身体に限界が来ていたのではないかとも思う。「ワールドタッグリーグ2019」を除く新日本プロレスの主要大会に全てエントリーしていたのでは身体が持たないもの当然だ。

ジュニアへのこだわりと目指したい自分。その答えがヘビー級転向だったように思うのだ。

この2人が2019年に作り上げてきた道のりがあったからこそ、無差別級路線が本格化したのだと僕は思っている。

いよいよ明日、高橋ヒロム選手とエル・デスペラード選手がヘビー級へ殴り込みをかける。その瞬間を見逃してはならない。

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