高橋裕二郎はCHAOSに復帰するか?
高橋裕二郎はCHAOSに復帰するか?
現実はそんなに甘くはない。ただ、何かを変えることに遅いということはない。
これが高橋裕二郎選手とオカダ・カズチカ選手の試合を見終わった今の感想だ。
正直、ファン失格かもしれないが、まともにぶつかれば勝つことはないと思っていた。
今の高橋裕二郎選手が「IWGPヘビー級ベルト」を12度防衛した絶対王者にどれだけ肉薄できるか。
試合を通じて何を魅せるのか。この試合の後、高橋裕二郎選手がどう変わっていくのか。
そんなターニングポイントになればいいとどこかで思ってしまっていたのだ。
ただ、試合を見ているうちにそんな気持ちはどこかへ消えていった。
“俺たちの”高橋裕二郎は、俺のところまで引きずり下ろそうとしていた。ただ、途中から風向きが変わってきたように思う。
理不尽なほど差がある才能の前に、手が届かない自分。もしも生まれた時代が違えば自分がトップに立っていてもおかしく無い。自分にもチャンスがあるのだ。
そんな想いを怪我が奪い去ったのだ。
怪我がタイミングは公にはされていない。だが、明らかにパワーが落ちていた。
試合終盤で「東京ピンプス」の体制に入った時、オカダ・カズチカ選手を完璧に持ち上げることができなかった。
以前と同じようなファイトはもうできない。それでも、リングに上がり続ける。
そんな彼の背中は多くのファンを勇気付けたに違いない。
高橋裕二郎VSオカダ・カズチカ。2020年夏の大勝負について振り返っていきたい。
100%の東京ピンプス
高橋裕二郎選手はオカダ・カズチカ選手に勝つための準備は相当積んできた。
大きくは2つ。
現在、セルリアンブルーのリングで猛威を振るっている変形のコブラクラッチ対策。噛みつきで何度も逃げきった。
EVIL選手がサミングで技を強制解除したように、何がなんでもの精神があれば意外とチャンスは転がっているのだ。
続いてレインメーカー対策。2018年に赤髪バルーンお兄さんとなったオカダ・カズチカ選手が使い始めた“ローリング式レインメーカー”。
相手の目の前で一回転することでタイミングをずらす。
野球のチェンジアップのようにタイミングをずらされた相手は、その場で動けないまま技をもらうことが多かった。
高橋裕二郎選手は“ローリング式レインメーカー”に完璧なカウンターを合わせてきた。
“バレットクラブ”のリーダーがオカダ・カズチカ選手と戦う度にデータを揃え、提供する動きを担っていたのではないか。
そんなことが頭をよぎるほどに完璧な切り返しだった。
だが、“今の”高橋裕二郎選手はオカダ・カズチカ選手に届かなかった。
絶対的な差は確かにあった。
「東京ピンプス」を決められなかった。
これはオカダ・カズチカ選手というよりも高橋裕二郎選手に原因があったように思う。
単純に持ち上げるパワーが不足していたのだ。
身長178センチ。体重は90キロ。
基本スペックはジュニアヘビーで間違いない。
2015年頃までの肉体も今はない。明らかに解説席で語った怪我の影響で肉体はスリムになっている。
公にはなっていないが、色んなことがあったに違いない。
そんな彼が自分の本心をバックステージで吐露した。
裕二郎「(※コメントスペースにたどり着くなり、崩れ落ちるようにフロアに座り込む)こんなの、不公平だよ。不公平……。2004年、やっとデビューしたと思ったら、すぐよ、オカダと内藤(が)新日本に入って来てよ。不公平だよ。すぐ下に、内藤とオカダだ。そしてその上に俺がいたんだ。(※ゆっくり立ち上がりながら)あきらめないからな。これ、マジ……」
おそらく、これから先オカダ・カズチカ、内藤哲也世代という言葉が使われるのだろう。
その少し上の先輩として高橋裕二郎選手はいる。
圧倒的な才能に主役の座を奪われた。
オカダ・カズチカ選手だけでなく、内藤哲也選手の名前も出した。
「ノーリミット」で暴れまわっていた時代。内藤哲也選手がシングルプレイヤーとして急成長する様子。
高橋裕二郎選手はずっと胸にしまっていたのだ。後輩や同期が気付けば随分前を走っていることを。その現実にずっと腹が立っていたことを。
出世レースに負けた課長。後輩に抜かれたマネージャー。そんな経験が一度でもあるのであれば、高橋裕二郎選手の悔しさが身にしみて分かるはずだ。
レインメーカー、ブルー。
大一番の決戦から一夜が明けた。
これから高橋裕二郎選手はどう変化するのか。そんなことを考えながら、当日の昼に発表となった後楽園ホール大会の対戦カードを見てみる。
オカダ・カズチカ選手&SHO選手VS高橋裕二郎選手&外道選手。
...。まぁ、よくあることだ。
ビッグマッチの翌日に、似たような対戦カードが続くことは決して珍しいことではない。
“レインメーカー”と“東京ピンプス”による一夏の物語は終わった。終わったはずなのに。
試合終了後なぜ、目の前に立ったの。
オカダ・カズチカの幻、消すように。
高橋裕二郎のにそっと降り注いでいた雨。
が、止もうとしている。
オカダ・カズチカの真意
オカダ・カズチカ選手は外道選手を変形のコブラクラッチで沈めた直後、リング下にいた高橋裕二郎選手へリングの上から詰め寄った。
「俺の位置まで引きずり下ろす」はずの高橋裕二郎選手はエプロンを跳ね上がり、オカダ・カズチカ選手と同じ高さに登った。
言葉通りの意味に捉えれば、オカダ・カズチカ選手の足を取ってでも自分の高さにしなければならないワンシーン。
そんな重要な瞬間で高橋裕二郎選手はオカダ・カズチカ選手と同じ目線になることを選んだ。
その横顔は悲哀に満ちていつつも、まだ終わっていない。次こそは必ずお前を仕留める。そんなケツイに満ちあふれていた。さ
そして、これまでの高橋裕二郎選手であれば、こんな試合の後であっても必ずノーコメントだったはず。
この日のバックステージでもコメントを残した。その内容は昨日までと大きく変化があったようにも思える。
裕二郎「まだまだ諦められねぇよ!アイツはよ、昔からよ、何でもできて、俺はアイツの上に立ったことが一度もない。くやしいんだよ! なあ、くやしい本当に。アイツはよ、アイツはトップにいるんだろ? トップに。アイツを引きずり落としてよ、なぁ? そしたらよ、俺がよ、自動的に上に行けるんだよ。なあ? プロレスの世界はよ、そういうシステムだよ。アイツはよ。もう1回だ。昨日、やったよな、シングルマッチ。まだまだだよ。なあ。オカダ、おまえもよ、なあ、もう1回、1対1でやりたいんだろ? この俺とよ! わかるぞおまえの気持ちもよ。もう1回だ。次はよ、必ずおまえをよ、引きずり下ろす。これマジ!!」
俺はアイツの上に立ったことはない。あまりにも衝撃的な一言ではないだろうか。「ノーリミット」時代を考えれば明らかに高橋裕二郎選手の方が上な時期はあった。
と、ここで思い出した。内藤哲也選手は海外遠征前にこんな言葉を残している。
「新日本プロレスは岡田(オカダ)なんですよ」と。闘龍門から新日本プロレスへ移籍してきた岡田青年は入門テストを受けていなかった。
そもそもヤングライオンとして一から新日本プロレスを伝授する時点でその期待感は半端じゃない。キャリアがあるのであれば、本来即戦力で使ってしまえばいいのに、敢えて育成コストを払ったのだから。
内藤哲也選手が思っていた以上に高橋裕二郎選手はオカダ・カズチカ選手に抱えている感情があったに違いないのだ。
CHAOS復帰の可能性
オカダ・カズチカ選手の目の前に立った高橋裕二郎選手の横顔を見ていると、「バレットクラブ」を離れることも一つの選択ではないかと思うようになった。
あの顔にはそれだけのものがあった。
ヘラヘラしている高橋裕二郎選手ではなく、汚いファイトでもない本気で熱いファイトを魅せる東京ピンプス。
昔みたいな技が使えないのがどうした。オカダ・カズチカ選手は新技のコブラクラッチで勝ち星を積み上げまくっている。
シングルマッチで高橋裕二郎選手は東京ピンプスにこだわっていた3度持ち上げようとして、全て失敗だった。
もうあの頃の技は試合では使えない。封印ではなくトップレスラー相手には使えないのだ。
であれば新技に挑戦してみるのはどうか。内藤哲也選手にはもう気なんか使わなくていい。「ノーリミット」で色分けをするために使わなかった関節技を使ったっていいのだ。
僕は敢えて、「CHAOS」復帰を意識していきたい。もともと矢野通選手のDVDに出演するほどに馴染みのあったユニットである。
“乱入屋”として最後の仕事はユニットへの復帰という前代未聞のアクションなのかもしれない。
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