なぜ、オカダ・カズチカは飯伏幸太に敗れたのか?
なぜ、オカダ・カズチカは飯伏幸太に敗れたのか?
2020年9月19日。「G1クライマックス30」最初のヒーローとなったのは、2020年の東京ドームで辛酸を舐めた“ゴールデン☆スター”飯伏幸太選手だった。
棚橋弘至選手との“ゴールデン☆エース”を通じて「神になる」という新しいテーマが生まれたことで更に一皮剥けることに成功した男が、レインメーカーに受けたイッテンヨンのリベンジに成功したのだ。
決定的な勝敗の分かれ目は、バックステージで飯伏幸太選手が語った通り“レインメーカーを封印している”ことにあった。
試合終盤。これまでであれば、間違いなくレインメーカーを狙ったシーンがあった。
ただ、レインメーカーには行かずに別の技を繰り出そうとしたところでカウンターを受け、白星を献上することになってしまったのだ。
9試合の内の1試合。どの試合でも勝ち点は同じ2点である。
ただし、オカダ・カズチカ選手から取った2点はあまりにも大きい。
今日はそんな飯伏幸太選手が魅せた試合を振り返っていきたいと思う。
変えなかった2人
例年、オカダ・カズチカ選手は「G1クライマックス」にかけて新しいコスチュームを披露してくる傾向があった。
2018年の赤髪、赤パンタロンが特に分かりやすく印象的だった。あれから2年。オカダ・カズチカ選手は敢えて注目の集まるこの試合を2020年版オカダ・カズチカで臨むことを選んだ。
しかも、腰に巻いているコスチュームを脱ぐ時には会場を煽りまくり、下に履いているパンツが違うぞ!というアピールまでを行なっていた。
※2019年の東京ドームでパンタロンからボクサーパンツにコスチュームを戻した瞬間のどよめきはとんでもなかった。
ここで少し考えてみると、「まだこのオカダ・カズチカをちゃんと見せられていない」という見方もある。
数ヶ月にわたる興行中止を受け、まだ今のオカダ・カズチカ選手を見ていないファンも多いことだろう。
注目が集まる初戦をそのままで迎えた意味。ここは次の試合を見てから再考してみたいと思う。
本当に始まったねG1CLIMAX30。
— 飯伏 幸太 (@ibushi_kota) 2020年9月19日
今年はどうなるか分からなかったけど、初の秋のG1。
連覇します!!
何が起こるか分からない時代。本当に始まったという言葉の意味の重さに心が揺れてしまった。
パワーとテクニック
この日、第二試合にエントリーしたウィル・オスプレイ選手がとにかくデカくなっていたことに驚いた。
ただし、飯伏幸太選手はさらに一つ上のレベルにいるのかもしれないと思ったのはメインイベントから数分が経過してからのこと。
オカダ・カズチカ選手よりも腕周りや肩周りに関しては飯伏幸太選手の方がデカい。
ただし、ぱっと見で明らかに大きく感じないのは無駄な肉を削ぎ落としている状態であるためだ。
ドラゴンボールで例えるならば、スパークが走るスーパーサイヤ人2。これが今の飯伏幸太選手の姿である。
今のウィル・オスプレイ選手はパワー特化の筋肉モリモリスーパーサイヤ人状態にある。
飛んではいたが明らかにキレは落ちていた。ただし、1発の威力は段違いである。
以前までの体型を見るにウィル・オスプレイ選手はデカくなるために相当な鍛錬を積んだに違いない。
そうして手に入れた肉体をここから絞る。目指す先は飯伏幸太選手のゴールデンボディにあるのではないか。
パワーとキレが完全に融合した肉体の持ち主。
肉体だけ、入場だけで金を取ることができる。それができるレスラーがメインイベンターに相応しい存在なのだ。
詰将棋と意外性
この日、オカダ・カズチカ選手は敗れはしたものの大きなミスがあったわけでない。決定機こそ逃した箇所はあったがそれ以外は全て詰将棋のようにジワジワと飯伏幸太選手を追い詰めていた。
特出すべきは変形コブラクラッチのバリエーションだろう。河津落としから入るパターンや左右どちらからでも繰り出すことが可能。対戦相手からすれば、いつ何時もこの技を警戒しなければならないのは大きな驚異であるはずだ。
ただし、飯伏幸太選手はここに合理的な解決方法を持ってきた。変形コブラクラッチをテクニックではなくパワーで返すという発想だ。
前述した肉体はVSオカダ・カズチカ選手用に作り上げてきたと言っても過言ではない。実際、何度も繰り出された変形コブラクラッチを何度もパワーで跳ね返した。
一方でアサイムーンサルトやボマイェなどオカダ・カズチカ選手に違った意味でのダメージを与えることも忘れない。
天才は努力と閃きで宿敵・レインメーカーへのリベンジを達成したのだ。
飯伏幸太の見解
最後に。なぜ、オカダ・カズチカは飯伏幸太に敗れたのか?このタイトルが凝縮された言葉を飯伏幸太選手がバックステージで語っている。
--今日の一戦は、リーグ戦9戦ある中で、「ただの一戦じゃないんだ」と試合前におっしゃってました。その一戦(で勝利)を取った意味、どうとらえますか?
飯伏「去年の『G1』で、僕は優勝決定戦に(進出して)勝つためには、オカダ・カズチカに勝たないといけない。そして、僕が東京ドーム、1.4で、メインイベントで、オカダ選手に負けてるんです。そのリベンジも含めて、今日の一戦、全力で闘いました。僕は、『G1はリーグ戦なんで、配分を考えて闘う』、こう言ってきたんですけど、結果、初戦がオカダ戦。これは全力でいくしかないんですよ。だから全力でいきました」
--その結果、見事に勝利を収めたわけですが、1.4東京ドームでは敗れました。今日の試合は、「今のオカダと、今の飯伏を見てほしい」といった話もされてました。どんなところが変化しましたか?
飯伏「いや、そのまんまですね。そのまま。今の飯伏幸太、今のオカダ・カズチカ。ただ、僕はただ、オカダ選手はレインメーカーも出してないし、本当の全力じゃないんで。僕はそう思ってます。また1対1で闘う日が来たら、もう1度、きれいに決着をつけましょう」
オカダ・カズチカ選手はレインメーカーを出していない。本当の全力ではない。そうなのだ。試合終盤。間違いなくレインメーカーの体制に入るであろうチャンスはあった。カミゴェ式のジョン・ウーをシットダウン式のパワーボムで切り返されたが直接的な敗因だろう。
あそこでレインメーカーを繰り出していれば(まだ飯伏幸太選手は動ける状態だったので、おそらくはローリング式でタイミングを外す一撃を見舞っていたはずだ)試合結果は変わっていたかも知れない。
ただし、昨日の飯伏幸太選手であればローリング式にVトリガーでカウンターを合わせた可能性もある。それだけ飯伏幸太選手は強かった。
『G1クライマックス30』開幕戦を制し、本当の神になると宣言した飯伏幸太選手。神様、仏様、飯伏様。
選ばれし神の子と呼ばれた中邑真輔選手。神と崇めた棚橋弘至選手の更に上のレベル。本当の神になるための戦いがはじまった。
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